高水温期限定のターゲット・シイラを求めて

大瀬崎で釣った大型シイラ。駐車場から徒歩10分程度のゴロタ浜からこのサイズが釣れるのだからたまらない。

ショアからのキャスティングゲームに、「ショアジギング」というジャンルが確立されてどのくらい経つだろうか。その起こりはブリやヒラマサ、カンパチといった回遊魚狙いの一端だったが、近年はメバルやカマスといったライトゲームや、マダイなどかつてはルアーのターゲットとはされていなかった魚まで派生した。表層から底層まで攻められるメタルジグは、万能ともいわれるほど守備範囲の広いルアーであるが、30年ほど前のソルトルアー黎明期に、ここまでメタルジグの釣りが発展するとは誰が予想しただろうか。

道具立てがシンプルなショアキャスティングには、気軽で入門しやすいイメージがある。もちろん、これは正しい。しかしなんとなく始めてみたはいいが、「なかなか釣れないんですよ」との声も耳にする。

相手は自然界に棲む魚である。いつも同じ場所で、同じ時間に、同じ釣り方で喰ってくれるわけではない。
まして回遊魚は潮に敏感だ。活性の高い魚が群れで寄ったときは誰でも簡単に釣れるが、ひとたび群れが抜けると、いくらメタルジグを巧みに動かそうがカスリもしない。

日頃、メディアで華々しく活躍する名手も、その笑顔の裏では数々の苦汁を舐めているものだ。
釣れないときに名手は何をしているのか。攻め方の手順、タックルやルアーの選択、釣り場での立ち回り方をレポートするというのが、当コーナーの趣旨である。

初回に登場していただくのは、ソルトから淡水までこなすマルチアングラー・辺見哲也さんである。
取材日はまだ梅雨明け前の7月中旬。ターゲットは「海のダンプカー」との異名を持つシイラである。釣り場は伊豆半島の西岸に位置する大瀬崎を選んだ。

大瀬崎の夜明け。沼津エリアでも指折りの大場所である。この日も夜明け前から釣り人の姿が見られた。

釣行プランは「短時間集中型」

「ワカシやイナダといったブリ系の魚から、ヒラマサ、カンパチなど多くの魚が釣れる人気場所です。夏の狙い目はシイラですね。ここは朝一番で遊漁船が叩いていくほどシイラの回遊が多い所です。今日は暗いうちに釣り場に入って、朝マヅメの喰い気がある個体を狙うプランで攻めてみたいと思います」

– まず荷物を置いたのは、岬先端にある灯台を少し回り込んだ外海向き。時刻は午前4時前。周囲は真っ暗である。
「僕のショアキャスティングジギングは短時間集中型で、丸一日やることはまずないんですよ。回遊魚は潮や時合で口を使う魚なので、喰わないときに根拠なく粘ってもあまりいいことがないんですよ。“よい時間”に集中して竿を出し、早朝からの釣りなら8時か9時には上がってしまうことが多いですね(笑)」

辺見さんのショアジギスタイルは「短時間集中型」。釣れると見込んだ時間をきっちり攻めるため、集中力も持続する。

– 辺見さんが言う“よい時間”とは、朝夕のマヅメなどの時間帯と、満潮からの下げ始め、干潮からの上げ始めといった止まった潮が動き始めるタイミングのこと。当日は午前5時28分が満潮なので、朝は好条件が2つ重なることになる。
「40g、60gといった重いメタルジグをキャストし続けるのは結構な重労働です。1日釣り場にいるとしても、日中はショアジギングタックルにテンビンを付けてシロギス釣りに切り換え、夕方近くになったらショアジギングに戻すこともありますね(笑)」

そんなことを言いながら、辺見さんは手早くタックルの準備に取りかかった。

東の空が朝焼けに染まり始めた頃にはすでに臨戦態勢に。朝マヅメの好時合。モタモタしている時間はない。

ボトムコンタクトの大切さ

– この日、辺見さんが用意したロッドは2本。「ボーダレス並継キャスティング仕様」の305H4とH2。メインで使うH4はショアジギングロッド換算でMHクラスに相当する。ラインは「ピットブル8」の2号。
「ボーダレス並継キャスティング仕様は投げ釣りにも使える竿なので、かなりしっかりした作りになっています。ショアジギングでシーバスロッドを流用する人もいますが、専用ロッドはメタルジグの重さを乗せても、しっかり振り切れる安心感があります。ときとしてメータークラスのシイラが喰ってくるのでラインも太め。僕が40〜60gのメタルジグをフルキャストするとPE1号が張り切れますからね。逆に1号が切れないようだと、きちんとロッドを振り切れていないということ。ショアジギングでは、専用のタックルと、それなりの太さのラインを使うのがベストです」

このタックルはマックス60gまでのメタルジグ用。H2は40gまでのメタルジグをキャストするときに使うとのことだ。

「ボーダレス並継キャスティング仕様305H4」で60gのメタルジグをフルキャスト。最終的には飛距離がモノを言うのがショアジギングだ。

– 午前4時過ぎ、実釣開始。フルキャストしたメタルジグが着水するとティップを海面近くまで下げ、スプールエッジに軽く指を当ててラインの出をセーブしながらボトムまで落とす。
「どのレンジから攻め始めるかはベイトの状態で決めます。ベイトが見えたりナブラが立っていたら表層近くから攻め始めます。これらが見えないときはメタルジグをボトムまで落とし、底から探り始めますね。ボトムを取るという作業は非常に重要で、これをすることによってメタルジグのウエイトが潮の速さにマッチしているか確認できるし、大体の水深もわかります。カウントダウンで攻めるにしても、一度ボトムを取ることによって、どのレンジを攻めているかが把握できるんです」

ボトムを取ったらワンピッチジャークで巻き上げてくる。これで魚の反応を見つつ、徐々に上層へトレースコースを上げていく。しかし、30分ほどキャストを繰り返したところで辺見さんの表情が曇った。

  • スプールエッジを軽く指で押さえながらボトムを取る。どのレンジを攻めているか把握するためにもボトムコンタクトは大切な作業だ。

  • ロッドを横方向へ起こすワンピッチジャークで魚の出方をうかがう。しかしシイラの気配は感じられない。

シイラの反応は皆無、どうする?

下げの潮が差してくることを予想して潮スジをダイレクトに狙える釣り座へ移動する。ひとつの釣り場へ通っていると、潮変わり前に先手を打つことができる。

「朝の好時合なのにシイラの気配がないんですよ。これだけメタルジグを投げていれば、シイラ以外の魚がアタックしてきてもいいはずなんですけどね」

– 周囲には数人の釣り人がいるが、魚が釣れている雰囲気はない。数日前に降った雨によって塩分濃度が薄くなっている可能性もあるが、ならば水潮に強いブリ系の魚が喰ってきてもよいはずだ。何かがおかしい。
「満潮から下げに入る5時30分前後がチャンスだと思うんです。それまでは集中してやってみましょう」

ここで最初の釣り座を見切り、やや岬の先端寄りへ移動した。下げの潮が差してくることを予想し、潮スジをダイレクトに狙える場所からキャストする。

ルアーはオールラウンドに使えて使用頻度の高い「コルトスナイパー アオモノキャッチャー」60gのまま。
魚がいるのに喰わないときはルアーチェンジという手もあるが、魚の気配がないときにルアーを変えてもさほど効果は見込めない。とにかくルアーが海中にある状態を長く作り、魚が回遊してきて食性のスイッチが入ったときに、いち早く見つけてもらうことを第一に考えると辺見さんは言う。

– しかし、期待の潮変わりを迎えても海は沈黙したまま。満潮から小一時間経ったところで、辺見さんはいったん竿を置いた。
「本来なら湾奥から下げの本流が当たってくるはずなのですが、まだ差してきていないんです。ちょっと潮を待ちましょう」 冷たいお茶で喉を潤わせながらひと息ついていると、沖の海面がヨレはじめ、やがて1本の明確な流れになった。潮スジが徐々に近づいてきたところで、辺見さんは再びロッドを手にした。

投入ごとに少しずつレンジを変え、ワンピッチジャークに細かくティップを揺すりながらのジャカジャカ巻きを織り交ぜて魚の出方をうかがう。メタルジグを数秒カウントダウンして巻き始めたところで、ガツンとロッドに衝撃が走った。

下げの本流が近づいてきた。辺見さんの集中力が高まる。ワンチャンスをモノにできるか・・・。

– 瞬時にアワセを入れる辺見さん。はるか沖でブルーイエローの魚体が跳ねた。しかし、まともにファイトする間もなくラインがフワリと宙に舞った。無情のフックアウトである。
「ペンペンサイズですがシイラでしたね。シイラは流芯脇のヨレや反転流に着いているんですよ。これは獲りたかったなぁ・・・」

– 気を取り直してキャストを繰り返すも、海は再び沈黙。図太い線を描いていた下げの本流も次第にボヤけ、やがて海面から消えてしまった。時計を見ると9時30分。下げ5分に差し掛かろうとしていた。
「残念ですが、ここが見切りのタイミングでしょう。もしこの後にやるとするなら、昼過ぎのソコリからの上げ始めか、夕マヅメでしょうね」

潮の変わり目にワンバイト。悔しさを滲ませる辺見さんだったが、時合を潮汐レベルで読み、無駄なく立ち回るあたりはさすがである。

レンジを変え、アクションを変え、粘り強く攻めるもワンバイトのみで潮が止まってしまった。無念のタイムアウトである。

タックルデータ

ショアジギタックルの第一条件はしっかりと振り切れること

「シーバスロッドでもショアジギングは可能ですが、プラグを投げることに重きを置いたロッドと、メタルジグを投げるロッドは根本的に設計が違うんです。重いメタルジグの重さを乗せ、ブレなくしっかり振り切るのなら、やはり専用のロッドが一番。ギュッと曲げ込んだときの安心感が違います」

今回、辺見さんがセレクトしたロッドは「ボーダレス並継キャスティング仕様」。
キャスティング系の釣りに幅広く対応するロッドで、ショアジギングも快適にこなすパワーを備えている。40gまでのメタルジグなら305H2、60gを中心にローテーションするときは305H4を使うとのことだ。

  • ロッドは「ボーダレス並継キャスティング仕様」。投げ釣りのテンビンを振り切れる強靱なバットパワーは、ショアジギングでも安定したキャストを約束する。

  • リールは「ストラディック C5000XG」。ラインは「ピットブル8」の2号を200m巻いておく。メータークラスのシイラを想定したラインチョイスだ。

メタルジグは「コルトスナイパー アオモノキャッチャー」で通した。
センターバランス設計により、リトリーブでもフォールでもよい仕事をしてくれる。よりフォールを重視して攻めるときは「コルトスナイパー ワンダーフォール」、ダートをはじめとするアクションで誘うときは「コルトスナイパー イワシロケット」にスイッチする。

  • 写真上から「コルトスナイパー ワンダーフォール」「同アオモノキャッチャー」「同イワシロケット」。メインはアオモノキャッチャーで、大概の状況はこれ1本で乗り切るとのこと。

  • ショアジギングではラインにヨレが入りやすいため、辺見さんはショックリーダーの先にスイベルを介してメタルジグと接続している。

 

ロッド:ボーダレス 並継キャスティング仕様 305H2 / 305H4
リール:ストラディック C5000XG
ライン:ピットブル8 / 2号×200m
リーダー:OCEA Leader EX Fluoro 50ポンド
ルアー:コルトスナイパー ワンダーフォール 40〜60g / アオモノキャッチャー 42〜60g / イワシロケット 40g

【フィールドデータ】静岡県沼津市・大瀬崎

駿河湾へ突き出た大瀬崎。天気のよい日は正面に富士山を望みながら釣りを楽しめる。

駿河湾奥の静浦湾口に突き出た岬が大瀬崎。
ほぼ全周がゴロタ浜で構成される。外洋に面しており、湾を出入りする潮がダイレクトに差し込んでくるため、シイラをはじめ、ブリ系の魚やカンパチ、ヒラマサ、サバ、ソウダガツオなど多くの魚を狙えるほか、年によってはメジマグロが回遊することもある。オオモンハタなどのロックフィッシュも濃いフィールドだ。

釣行日=令和元年7月18日
釣行時間=4時〜9時30分
天候=曇り
風向き=ほぼ無風
潮回り=大潮 満潮5:28/ 19:09 干潮0:08/ 12:17(内浦)