AR-C重心移動システムをどう搭載するか!?
開発陣の腕の見せどころ

– 大型ミノーは空気抵抗が大きいから飛ばない、というのが一般的な認識だ。さらにヒラメミノーSRは、フックとスプリットリングの大型化による重量と空気抵抗の増加。貫通ワイヤーによって重心位置が上がるといった飛距離やアクションに悪影響を及ぼしかねない足かせをかけながら、飛距離を伸ばし、しっかり泳ぐ・・・この矛盾をクリアするミノー作りに開発陣は取り組んだ。
「フック、リングのサイズを変えずに、重量や空気抵抗を減らすことは物理的に不可能です。飛距離を出すには、いかに飛行姿勢を安定させるかにかかってきます。飛行姿勢が乱れるから空気抵抗が増して失速します。それを解消するのが、AR-Cです」

– AR-C重心移動システムは、飛行時は重心がボディ後方に移動。飛行姿勢を安定させて飛距離を伸ばし、着水と同時に重心をバネで強制的に戻して素早い立ち上がりを実現するシマノ独自の重心移動システムだ。
「コンスタントに70m近く飛ぶサイレントアサシン140S AR-Cにも当然、内蔵されています。ただ、アサシンは貫通ワイヤーではない。ヒラメミノーSRは貫通ワイヤーの分、通常のAR-Cだと重心位置が高くなります。同時に重心移動のストロークも稼ぎにくくなる。ボディはテール側ほど細くなりますからね。AR-Cをどう入れるか? が開発陣の腕の見せどころでした。」

重心位置が高いほどアクションが不安定になり、重心が前寄りになるほど飛行姿勢が乱れやすくなる。良く飛んでキビキビ泳ぐ大型ミノーの飛距離とアクションの融合点は、AR-C重心移動システムをどのよう搭載するかにかかっていた。

シマノのテクノロジーと開発陣の独創性がヒラメハンターをうならせる

「重心移動は、ヒラメミノーIIIも搭載しているAR-C VRでくるんだろうなとは思っていました」

– AR-C VRシステムは、ワイヤーにウェイトを吊り下げることで低重心化し、優れた飛距離と泳ぎを両立するシステム。ヒラメミノーSRにも打って付けの重心移動システムだ。
「ただ、AR-C VRでも重心移動のストロークが稼げなければ、飛距離は出せません」

– 開発陣は、ウェイトの重さやバランス、テール側のエアルームの長さの違うプロトをいくつも試作。飛距離測定では10個ほどのサンプルを持ち、一つにつき最低10投はしてデータをとり、飛ぶものを選別。それをさらにブラッシュアップするという地道な作業を続けた。
「さすが、シマノルアー開発陣だなぁと思ったのは、貫通ワイヤーの位置を下げて、なおかつテールを横アイにすることで、テール側のエアルームのスペースを広げ、重心移動のストロークを長く稼げるようにしたことです。テールのキールのような出っ張りの一部に、実は貫通ワイヤーが通っています。これでAR-C VRのストロークが稼げる。飛距離測定では、平均飛距離70mオーバーを達成しました。僕がテストで投げた感覚だとサイレントアサシン140Sより飛ぶ。150mmでストレスなく飛ぶミノーができた。これは、実はすごいことなんです」

フローティングのほうが飛ぶ!?
ミノー開発の難しさと奥深さを改めて知る

「ミノーのリップは、幅や長さが1mm違えば、アクションと飛行姿勢が大きく変わります。いくらAR-C VRのストロークが稼げる内部構造にしても、アクションを良くしようとリップをむやみに大きくすると飛ばなくなります」

– ヒラメミノーSR150F/150S AR-Cのリップは、ボディに対して小さめだ。
「シャローランナータイプなので、ただ巻きで1m潜れば十分。大きなシルエットでアピールできるので、ヒラメミノーIIIのようにバタバタと強い泳ぎをしなくても良い。ということで、アクションはナチュラルなウォブンロールにセッティングしました。飛距離とアクションの融合点は、昨年(2018年)末にほぼ決まりましたね」

– そこからフローティングとシンキングのタイプごとに、飛行姿勢や泳ぎのバランスなど細部を整える詰めの調整に入る。
「フローティングは浮かせるために、シンキングより重心移動のウェイトが軽い。その分、飛行姿勢を崩しやすくなるので、テール側に固定ウェイトを一つ搭載したら、思わぬ現象が起きたんです」

– それは下の表のとおり。シンキングの自重は30g。フローティングは27g。フローティングのほうが3gも軽いのに飛ぶのだ。
「テールの固定ウェイトでより飛行姿勢が安定して、飛距離が出るようになったんです。ミノーは重ければ飛ぶというものではない。僕も開発陣も改めてミノー作りの難しさと奥深さを知りました」

熱砂 ヒラメミノー SR 150F/150S AR-C

005 ヒラメゴールド
※狂鱗:001、008、010のみ

表は左右にスクロールできます

  1投目 2投目 3投目 4投目 5投目 平均
ヒラメミノーSR150F AR-C 75m 70.9m 73m 78m 61.9m 71.8m
ヒラメミノーSR150S AR-C 71m 74.7m 62.9m 75.7m 68.5m 70.6m

– 全長150mmで70m以上飛んでしっかり泳ぐ、堀田さんが理想とするサーフ専用大型ミノーは約2年かけて完成したわけだが、使い方は熱砂のコンセプトを踏襲している。
「遠投してルアーの動きが感じられる速さでただ巻きやストップ&ゴー。これが使い方の基本です。誰が投げても良く飛んで、巻くだけで釣れる。ヒラメミノーSRも熱砂のコンセプトが大前提にあります。シンキングは沈めてボトムをなめるように引いても良いし、フローティングはターゲットによってはトゥイッチを入れても良い。沈み根が点在するサーフなら根の上で止めて浮かせてアピールすることもでき、根がかりも防げます」

– ヒラメミノーIIIとの使い分けも確認しておきたい。
「ヒラメミノーIIIは、潜行レンジが2m弱。急深サーフや流れで掘れたミゾなど、水深1~1.5mのところが得意です。ヒラメミノーSRの出しどころは、まず遠投性能を活かして、IIIでは届かない飛距離がほしいとき。あるいは潜行レンジが最大1.5mなので、遠浅サーフやIIIでは底を擦りすぎる潮位が低い状況。水深50cmでもロッドを立てれば、底をこすらず引けます。あとは水深に関係なく、ベイトフィッシュが大きいときも活躍します」

平均飛距離70m超の大型ミノーがサーフゲームの新たな世界を切り拓く

「ヒラメミノーSRは、サーフ専用大型ミノーですが、シマノの社内にはヒラスズキで使っている人もいます。向かい風でもストレスなく飛んで、大型魚に対する強さがあるから、磯ヒラゲームにも対応できます。ヒラメアングラーだけじゃなく、シーバスでも青物狙いでも、大きいミノーを使いたいけど、飛ばないから使えない。飛距離が出る大型ミノーがないかな、と探しているアングラーの方にも試してほしいですね」

– ヒラメミノーSR150F/150S AR-Cは、ターゲットもフィールドもサーフの枠を超える大型ミノーに仕上がっているということだ。
「サーフでは、ヒラメやマゴチだけじゃなく、大型青物が釣れる。2016年頃から僕の地元の静岡でオオニベが釣れるようになって、1mクラスも出ています。北海道に行けば、海アメ、海サクラのサーフゲームが盛ん。サーフの釣りはまだまだ広がりがあって、ヒラメミノーSRは、今後のサーフゲームの布石にもなります」

– 今後のサーフゲームへの布石。その意味とは?
「今まで大型ミノーが届かなかった範囲が探れる。どんな魚が喰うのか? どんな釣りが展開できるか? という期待感。サーフゲームの可能性が広がります。例えば秋なら、大型青物が回ってきたときにぜひ試してほしいですね。ロッドは基本的には熱砂のどのモデルでも使えますが、ヒラメミノーSRは鋭く振り抜くほうが飛距離が出しやすいです。大物が喰うことも想定してMHやMH+クラス。強めのロッドをおすすめします」。