サーフ用ルアーの金字塔を打ち立てたヒラメミノーIIIの存在

– ヒラメミノーは、まだサーフゲームがブームになる以前に、堀田さんとシマノがタッグを組んで作ったヒラメ専用ミノーだ。熱砂のルアーは、ここからはじまる。
「発売は2004年ですね。当時はシマノのソルトルアーのブランドがオシアだけで、オシアミノーヒラメスペシャルというネーミングでした。ヒラメ専用ミノーというものが全く一般的ではなかった時代。ヒラメミノーはまさに、ヒラメ用ルアーのパイオニア的存在だった。それまではシーバス用ミノーを流用していましたけど、ヒラメをターゲットとして狙うには物足りない。オシアミノーヒラメスペシャルは飛距離が出て、大きくウォブリングするようにしました。あとヒラメは、頭やお腹など獲物の急所を狙った噛みつき型のバイトをする。3フックで前と真ん中のハリを前寄りにセットして、フッキング率も高めました」

ヒラメミノーの原点は、オシアミノー ヒラメスペシャル。2004シマノ総合カタログには“ヒラメ専用ミノー誕生!!”のキャッチコピーが記されている。当時は90、115、135mmの3サイズで、2006年に125mmが追加される。

– 現在は、AR-C重心移動システムを搭載するヒラメミノーIIIに進化している。
「AR-Cは2011年リリースのヒラメミノーIIから搭載されています。サーフ用ミノーは、飛距離が重要。届く範囲にヒラメが居れば、やっぱりミノーが強い。だからヒラメミノーIIIは根強い人気がある。その秘密は、安定した飛距離と泳ぎにあります。ヒラメミノーSR 150F/150S AR-Cが目指すところも、今までの大型ミノーにはない飛距離と泳ぎです」

サイレントアサシン140S AR-C並みの飛距離とサイズ感のサーフ専用ミノーの必要性

「ヒラメミノーIIIは、125Sで60mオーバーの飛距離が安定して出せます。ただ、ミノーで、それ以上飛ばしたいケースもあります。そういうときは、今まではサイレントアサシン140S AR-Cを使っていました。70m台の飛距離をコンスタントに出せる非常に優秀なミノーです」

– だが、それはヒラメゲームの黎明期と同じようにシーバス用ミノーの流用。飛距離以外、サーフでは物足りない部分が出てきてしまう。
「アサシンはシーバス用なので、アクションがおとなしい。貫通ワイヤーではないので、ザブトンクラスのヒラメや青物がくるサーフでは、強度の面で不安が残ります。あと最近のサーフは、コノシロ、シロギス、イシモチなど大型のベイトフィッシュに大型魚が付く傾向が高くなっています。サイレントアサシン140S AR-C並みに飛んで、ブリブリ泳いで、強度も高い大型ミノーが熱砂のラインナップにほしい。いや、今のサーフの事情を考えるとないのはおかしいだろう、と開発が急務になったんです」

模索が続く大型ミノーの飛距離とアクションの融合点

– サイレントアサシン140S AR-Cというひな形があるため、サーフ用大型ミノーの開発は順調に進むと思われていた。
「全長に関しては、熱砂にはスピンブリーズとシースパローロングに130mmがあります。140mmのミノーでは大差がないので、全長は150mmに。遠投が必要なシチュエーションはおもに遠浅サーフで、ヒラメミノーIIIは浅いサーフで引けないというアングラーの方々の声を聞いていたので、レンジはSR(シャローランナー)に決めました。プロトモデルが出来て、僕が初めて試投したのが、2017年の年末です。爆風でしたけど、それにしても飛ばない、という出来でした」

– 開発陣が良しとして持ち込んだテストサンプルは、過酷な自然環境下で歯が立たなかったのだ。
「サーフは風が吹くことが多いです。ミノーは空気抵抗が大きいから風の影響を受けやすいし、飛行姿勢も乱れやすい。開発陣によると、飛行姿勢を安定させて飛ばすためにウェイトを重くすると泳がなくなる。逆に泳がせるためにリップを大きくすると飛ばなくなる。AR-C重心移動システムを搭載すれば飛ぶ、というほどミノー作りは甘くなかったんです」

強度へのこだわりが開発の足かせに!?
解決策はあるのか?

– 堀田さんがこだわるサーフ用大型ミノーの強度も開発陣を悩ますことになる。
「強度を上げるのは、ザブトンヒラメや大型青物と安心してやりとりするためにです。フックは#4が3本で、スプリットリングも大型です。フックとリングを大型化すれば、当然、重量と空気抵抗が増す。飛距離を落とす原因になります。さらに貫通ワイヤーを入れることで、ウェイトの位置が上がります。ミノーは重心が上がると泳ぎが不安定になりやすい。低重心のほうがアクションが良くなります。強度を上げることで、開発に自ら足かせをかけることになっても、妥協はできないですからね」

– サイレントアサシン140S AR-Cより10mm長くても同等以上の飛距離を出し、アピール力のあるアクションで泳がせるという課題もある。
「結果から言うと、ストレスなく飛んでしっかり泳ぐ、飛距離とアクションの融合点にたどり着いたのは、昨年(2018年)末頃でしたね。そこから内部のパーツを微調整して、さらにブラッシュアップして完成するわけですけど・・・」

ただでさえ空気抵抗の大きい大型ミノーに、飛距離低下につながりかねない強度アップという足かせ。シマノの開発陣は、この難題をどのようにクリアし、堀田さんの理想とするビッグミノーを作り上げたのか?

後編へつづく。