サーフゲームを劇的に変えたスピンビームが原点

「ウィングビームは、名前からわかるとおりスピンビームから派生したルアーです」。

– 堀田さんのこの一言から今回の開発ストーリーは始まった。ウィングビーム80HS誕生のきっかけとなるスピンビームは、2015年発売当初、画期的な2フックのメタルジグとしてサーフアングラーの間で大きな話題を呼んだ。
「当時のヒラメゲームで使うルアーは、ミノーやジグヘッドリグが中心。サーフには右肩上がりでアングラーが増え、釣果を出すには、より遠くにルアーを飛ばす必要性が出てきました。そこで注目されるのがメタルジグなんですが、青物用のメタルジグの流用だと限界もある。そもそも熱砂ルアーには、誰が投げても良く飛んで、巻くだけで釣れるというコンセプトがあります。シャクらなくて良い。巻くだけで泳ぐメタルジグ。それがスピンビームです。フロントフックは、頭を狙ってアタックするヒラメの捕食行動に合わせたセッティングで、フッキング率も一般的なメタルジグより高いです」。

– スピンビームを使ったことがある方ならご存知のように、飛距離が出て、巻くだけでテールを振って泳ぎ、釣れる。当時は入手困難なほどのメガヒットルアーになる。
「スピンビームの登場で、飛距離100mオーバーが当たり前の時代に入ったわけですよね。さらにスピンビームより飛ばすために、あるいは風や波、流れが強い状況でしっかり引き切るためにタングステン製のスピンビームTGが生まれたわけです」

熱砂 スピンビーム

007 キョウリンピンク

「スピンビームは、人気も実力もあるルアーのひとつ。特に魚が居るとわかってるとき、ベイトフィッシュが小さいときに有効なルアーだ。ただ、逆に言うと、魚をサーチしたいときはもっとアピール力がほしい。ベイトフィッシュが大きいときは、ボリュームがほしい。あと遠浅のサーフで底をこすらずにもっとスローに引きたい、というケースもありえる。しかもスピンビームの飛距離で」。

– これがシマノ開発陣のウィングビームの開発目標となった。もちろん誰が投げても良く飛んで、巻くだけで釣れるという熱砂のルアーのコンセプトは大前提だ。
「アピール力やボリュームを上げるなら単純にスピンビームを大きくすればいいけれど、それだと重くなりすぎます。サーフゲームで使うルアーは40gに一つの壁があります。重いとボトムをこすりやすくなるし、サーフ用タックルとのバランスや一日投げ続けることを考えると、扱いやすいのは40g前後まで。サーフゲームでは、40gを大きく超えるルアーの需要は極端に減りますからね」。

40g以下でボリュームを上げるには樹脂製ボディ。
開発陣に迷いはなかった。

上からウィングビーム80HS、スピンビームTG、スピンビーム32g

大型青物も視野に入れて開発 ヒラメハンターの要望は細部にわたる

スピンビーム並みの飛距離で重過ぎず、アピール力がある。スローに引ける。そして、もう一つのこだわりが強さだ。

サーフでは、ザブトンヒラメはもちろんブリクラスの青物やオオニベなど、パワーファイトが必要な魚が釣れるケースが増えている。スピンビームが採用するフックは、フロント#8、リア#6。ヒラメには十分だけど、パワーファイトが必要な魚に対しては、サイズ的にも強度的にもやや不安が残る。そこで、フックは#4。スプリットリングも大きくして、樹脂ボディなら貫通ワイヤーは必須だという話になった。

サーフゲームに親しむアングラーでなくても、ルアーに求められる要素としては、かなりの無理難題に聞こえる。
果たして、この高度な要求はすべて満たされるのだろうか・・・!?

  • ラインアイ、フックアイは貫通ワイヤーで一体化し、大型魚とのファイトに備える。

  • ウィングビーム80HSは、フックもスプリットリングも#4。スピンビームより大型化。

開発は難航・・・!?
しかし、その予想をシマノの技術力が覆した!

– スピンビームの飛距離でアピール力があり、スローに引ける。さらに大型魚に対抗できる強度も持たせる。シマノの開発陣は、この難題に立ち向かわなければならない。堀田さんは、樹脂製ビームの開発は難航すると予想していた。
「最初、開発陣は樹脂でスピンビームの形のまま大きくして、ウェイトを入れて作ってみたそうです。しかし、実際にスイムテストをすると横に倒れたままで泳がない。僕が実釣テストで使用できるようなレベルの代物ではなかったそうなんです。なので、僕はこの段階の試作ルアーの存在は知らなかった」。

「これが初めて投げたプロト。飛距離もアクションのバタバタ感も合格ラインに達していました。強度を改善すれば、これでイケるくらいの出来でしたね」。

– ウィングビームは、2017年の秋に初期のプロトを制作されている。
「昨年(2018年)秋にリリースしたメタルドライブと同時期に開発がスタートしたんですが、このメタルドライブは完成までにかなりの時間がかかりました。なので、ウィングビームも同じくらい難航しそうだなと思っていましたけど、開発陣によるとウィングを搭載したあの形にもっていくのは、あまり難しいことではなかったようです。以前、シマノアメリカで、ワックスウィングという頭の上下にフィンが付くジグミノーを作っていて、そこからヒントを得たようです。何より驚いたのは、僕が初めてウィングビームのプロトを投げたとき。確か2018年の初頭でしたが、飛ぶし、アピール力のある泳ぎをするし「ほぼこれでイケるね」とテストで言ったのを、ハッキリと覚えています」。

  • 左下がウィングなしのファーストプロト。ウィングを搭載した最初のプロト(右上)が出来てからはウィングやウェイト、ボディ形状などの微調整で完成に至る。

  • 熱砂 ウィングビーム 80HS

    010 キョウリンキス
    ※狂鱗:001、008、010のみ

– 長年にわたって培われてきたシマノの技術が、開発のスピードを加速させた。
「開発陣も熱砂のルアーをいくつも作って、飛距離やサイズ感、アクションなどサーフ用ルアーの落としどころを熟知している。僕とイメージを共有してそれが形となっていくので、開発スピードは年々上がっているという実感があります」。

予想に反して(!?)開発が順調に進むウィングビーム80HS。
後編ではテストと改良を重ねてたどり着いたメタルジグ並みの飛距離と、アピール力のあるアクションの秘密に迫る。

後編へつづく。