飛躍的に完成度が高まった、第四段階

堀田さんの要望、アドバイスを取り入れ、プロトモデルは第四段階になって飛躍的に完成度が高まった。ここで大きかったのは、アーチドライブシステムのさらなる改良がなされたことだ。第三段階のプロトモデルまでは、ヘッドの内部にシステムが収まっていた。

しかし、飛行中にワームが暴れ、その振動がボディに伝わって飛距離が落ちてしまう現象を解決することはできなかった。対応策として浮上したのは、ワームとボディをフリーにすること。具体的にはヘッドの外にシステム自体が出てくるようになった。ワイヤーでの接続はもちろんあるものの、これでボディとワームがほぼフリーになった。

また、プチロックシステムの原型がこの段階になって初めて登場した。
それまでのスプリットリングを2つ使った完全ロック方式は、絡みにくさやフックの抱き込みを防止する機能は合格点、ワームとボディの一体感も確保されていた。しかし、見た目が悪く、フックチェンジ、フッキングにも支障はあった。アイデアはよい。しかし、しっかりした機能とスタイリッシュな見た目を手に入れるためには、さらなるアイデアが必要だったのだ。

完全ロック方式を諦め、プチロックシステムへ

この段階で完成度がグッと上がりましたね。
完成度としては7.5点くらい。アーチドライブシステムは当初から段階的に進化しましたが、プチロックシステムはその登場までが長かった。僕のなかではプチロックシステムが出来たと同時に完成、というイメージです。

ダブルのスプリットリングを使ったやり方は開発サイドとしてはシンプルなアイデアで、そのまま進めたいようでしたが、ユーザーサイドに立ってみたらやはりダメ。ここはぶつかりました。時間が掛かったのは、やはり急にはアイデアが出なかったんでしょうね。

プロトモデルをブラッシュアップするためには、現場でやり取りをしてあらためて修正箇所のオーダーを出します。でも、それが形になって出てきて、またテストする、ということに期限を設けているわけではない。新しいアイデアが出て、形になるまではテストをしても意味がない。一週間でできるのか、一カ月かかるのか、それは僕にも分かりません。だから、メタルドライブのプロトモデルが出てくる間隔もバラバラでしたが、第三段階と第四段階の間が一番長かった。

この間は開発陣と半年くらい会ってない。僕としては止まっていたような感じ。社内ではいろいろやっていたとは思いますけど。僕は見ていないので。プチロックシステムのパターン分けのプロトモデルが4個、5個はあったみたいですよ。

製品化の必須条件だったプチロックシステム

プチロックシステムの習作的なプロトモデルは、堀田さんの言葉通り、いくつも存在したようだ。たとえば、タチウオ用ルアーにあるようなゴムチューブを使ったシステムもあった。しかし、このシステムではロングキャスト後の着水のショックに耐えられなかった。どうしても着水と同時にフックが外れてしまうのだ。

マグネットでも試した。一番磁力の強いネオジウムを使用しても着水のショックで外れてしまった。フックが外れてしまっては、泳ぎがバラつき、ワームに掛かって泳がなくなる。フックの固定は必須だった。反対に魚が掛かってからはバラシを防ぐためにもフリーになってほしかった。ロックはするものの、魚が掛かってもフリーにならず、離れない失敗作もあった。このシステムの完成は、メタルドライブ完成のための必須条件だった。

完成度が高まり、ゴールが見えてきた第四段階

この段階でのフィールドテストでは、時間に余裕がない、ということで、ヨーロッパ旅行から戻ったその足で関空に行き、時差ボケのままフィールドに連行されました(笑)。甲斐あってあと一歩というところまで来ていました。

あとは、リアフックがあまり暴れないように、フロント部分はもう少しスマートに、アーチドライブシステムも、もう少し完成度を高めて、という要望を出しました。ここまで来てやっとゴールが見えてきた感じでした。名前を何にしようか、ということも、具体的な問題となってきましたね。

最終プロトモデルに到達した第五段階

第五段階になり、ほぼ最終プロトモデルといってよい完成度に到達した。課題となっていたアーチドライブシステムでのワームの装着はカートリッジ式に決まった。

ワームを交換するたびに刺して固定する手間が省け、ワンタッチでワームの交換が可能になった。リアフックのセッティングにも改良が加えられていた。フックが遊びにくい設計が施され、フック自体の動き、暴れを少なくするため、ボディ後端の角を微調整、少し小さくした形状が採用された。これでワームにリアフックが掛かってしまうトラブルが激減した。

釣るための要素を具現化したルアーだから、釣れて当然

シマノの開発陣はいろいろなルアーを作っているので経験値が高い。だから答えが早いんです。ロッドも同じですけどね。一発目のプロトからかなり完成度の高いものが出てくる。ノウハウの蓄積が凄いんですよ。開発に何年かかりました、という話を聞くことがあるけれど、単純にノウハウがない、ということが理由の場合もありますから。遠回りしてしまうわけです。その点、シマノの開発陣はブレが少ない。

苦労するのは開発担当です。僕は言うだけですから(笑)。でも、メタルドライブに関しては現場で直接やり取りして、何回も話を詰めていったことが良かったと思います。結局、これが一番早い。話をしながらテストしていると新たなアイデアも出てくる。いい作用になったと思います。

フィールドテスト、というけれど、実際のところは魚釣りを一生懸命するわけではなく、確認作業が中心なんです。形になるまでの工程のひとつであって、最終的にそれを使って釣れるかどうかの確認作業なんです。釣りまくるわけではない。だいたい、僕らが何百匹釣るよりも、市場に出てからユーザーが何万匹と釣るほうが、サンプルとしてはデカいし、参考になりますよね? 世に出てそこで結果が出るわけです。

僕が100匹釣って、釣れるよ、凄いでしょ、って言っても、それが市場に出て、誰も釣れなかったら意味がない。誰でも飛ばせて、ぶっ飛んで、巻いてくれば釣れる、それが大切。誰もが使えて、誰もが簡単に釣れる。それがヒラメ釣りを広めるということにつながると思っています。

 

開発陣の話では、第四段階から凄く釣れ出したらしいですね。
安定して飛び、安定して泳ぎ出しましたから。飛びや動きの安定感は釣果への近道です。僕がメタルドライブで釣ったのは第五段階に入ってから。ほぼ完成してからです。感想ですか? まあ、釣れたな、という感じ(笑)。ヒラメを釣るための要素を具現化していったルアーだから、当然釣れると思っていましたからね。釣れて当たり前という思いでした。

※アーチドライブシステム
キャスティング時にワームがボディから離れて空気抵抗を低減、これまでワームが到達できなかったポイントまで到達させる目的で開発された新構造。リトリーブ時にはワームが泳ぎ位置へ簡単に戻り安定。メタルボディのタイトなフラッシングとワームのワイドなアクションでヒラメに強くアピールする。

※プチロックシステム
キャスト前に、ベリーフックをワイヤーに挟んで固定することでキャスティング時、フォールアクション、そしてリトリーブ時において、フックトラブルを軽減するシステム。大型フックを搭載することが可能となり、フッキング性能も向上。飛行姿勢も安定するシステム。

【次回予告】[Phase4] 新発想の飛ぶワームが、サーフルアーゲームシーンを切り拓く!

幾多の壁を乗り越えて完成した「熱砂 メタルドライブ」。これまでにない発想によって生まれた新ジャンルのルアーだけに、賛否両論が巻きおこる可能性もある。しかし、堀田さんが「釣れる!」と自信を持ってリリース、世に問うルアーでもある。ぜひ、その実釣性能を確かめていただきたい。

次回へつづく。