超エキサイティングなトップウォーター戦略 パート2    伊豫部健×五三(ごさん)川(岐阜県)

本邦初公開! 「仮称・バンタムフロッグ」

ご覧の通り、伊豫部健さんは現在バンタムルアーの最新作としてフロッグを鋭意開発中だ。はたしてどんな特徴を持つのか、何を求めて開発へと至ったのか。まずは開発者である伊豫部さん自身の言葉で語っていただくことにしよう。
「フロッグって1種類だけで釣りが成立するわけじゃない。最低でも2種類は必要。このフロッグに求めたのは、何より強いこと」。
水を押す力や水中からバスを浮かせる力はもちろんのこと、ボディ自体の耐久性までにも「強さ」を要求。なぜなら伊豫部さんが主戦場とする米国には、国内では想像し得ない難攻不落のヘビーカバーも多く存在するためだ。十分な予備を蓄えていたとしても、際どいキャストを繰り返すうちに簡単に破け浸水するようでは戦力外。また多くのフロッグのように浸水することが前提で、投げ込むごとにアクションが変化するようではこれもまた戦力にはならない。
「撃って操作して、回収したら即座に次のキャスト。このリズムを崩さず、無駄なくできるフロッグ。まずはそこから開発がスタートした」。
では、伊豫部さんはこのフロッグをどんな場面で使うのだろうか。

細部の特徴はまだお伝えできないが、透明樹脂で形作られたボディのベリー側をマジックで黒く塗りつぶしているのがわかる。濁った水域でシルエットをより強く出すための工夫だろう。

カテゴリーNo.1を目指すバンタムコンセプト

「最低でも2種類と言ったのは、フロッグには大きく分けてオープンウォーター用カバー用が存在するという意味。まずはこう考えて欲しい」。
バンタムの名を冠するフロッグとなれば、やはり1つのカテゴリーで最大限のチカラを発揮するモデル。そう考えてもいいのだろうか。
「ですね。このフロッグが1つあれば何でもできる。そんなフロッグを目指して開発している」。
オープンでは左右へとクイックに首を振るドッグウォーク、カバー上でも存分なアピール力を放ち水面下から魚を呼び出す。何かに特化せず、全てを幅広くこなせる物作りのコンセプトは、チャグウォーカーを始め、数々のバンタムルアーに反映されている。穿った見方をすれば、中途半端なモデルになる可能性も高いが、これまでのモデルを振り返ってみてもわかるように不可能を可能にしてきた歴史がある。
「テストはまだ始まったばかり。仕上がりを期待して欲しい」。
来年に予定されている発表が今から楽しみでならない。

ひと足先に完成したフロッグ専用タックル

遠方でのバイトを確実に乗せるべく伸びのないPEラインを収納するのは、ハンドル1回転91センチをマークする超ハイギアのメタニウムDC XG。カバーの奥へ必要以上に潜り込ませず、瞬時の巻き上げでどんなビッグワンにも主導権を与えない。
ロッドは今季発表されたばかりのバンタム172H-FR。ベイト・7フィート2インチ・ヘビーアクション、そしてフロッグ専用を意味するFRの文字が並ぶのがそのモデル名だ。
「レングスはロングディスタンスを狙うことが前提。ただ必要以上に長過ぎると、トゥイッチの際に水面を叩いてしまうのがストレスになる」。
遠投性能はもちろん、テクニカルな操作性を兼ね備え割り出されたのは実に絶妙なレングス。また鋭いフッキング動作で、遠くのバイトを確実に捕らえるパワー伝達率も高次元で実現している。
「パワー表記はH(ヘビー)だけど、ガチガチではない。そこだけは勘違いして欲しくないところだね」。
軽く曲げてみればすぐにわかる、ティップの素直な食い込み。そのベンドカーブは強靭なベリーとバット部で確実に受け止め、鋭いフッキングを可能にすることは容易に想像できる。
「投げやすさ、操作のしやすさ、掛けやすさ。全てのパフォーマンスにおいて扱いやすさを重視。どちらかというとHパワーながらもレギュラー寄りのテーパーに仕上がった」。
伊豫部さんが長年使い込んできたフロッグの経験値を存分に注ぎ込んだ珠玉の1本。陸っぱり、ボートを問わず、万能な専用ロッドがこれだ。今後のバンタムフロッグの仕上がりはこの1本が担っていることも覚えておきたい。

フロッグ用タックル
●ロッド:バンタム172H-FR
●リール:メタニウムDC XG
●ライン:PEライン80ポンド(=5号)

気になる『I-DC5』のブレーキセッティング

「あ、ちょっとラインが少なくなってきたかな。フルキャストしたらスプールの軸が見えてきちゃったよ」。
カバーの奥の奥を攻め続ける伊豫部さんは折を見て結び目から数メートルを指でなぞってチェック。少しでも違和感があればためらわずにそこから数10センチ上をカットして結び直していた。植物など柔らかい物には圧倒的に強いPEだが、岩や消波ブロックなど硬い物にはちょっとした衝撃でも意外に破断してしまうのが悩みだ。
「ちょっとダイヤルでモードを変えてみるね」。
そう言って、パーミングカップ側下部に位置する5段階外部調整ダイヤルをクリック。セッティング値は「3」。
「ラインがスプールのフチより若干少なめの適正量であれば、最初から最後までAでいい」。
「A」とはAUTO(オート)を意味するイニシャルで、極端に重いもしくは極端に軽いルアーでなければキャストから着水後までその自重に応じて適正なブレーキ力を与えて抜群の遠投性能を発揮すると共にトラブルを回避。
「ラインが少なくなると、スプールの回転数が若干落ちる。つまり飛びにくくなるから、ブレーキを少し解除してあげる」。
5段階外部調整ダイヤルとは「A」モード以外に、最もブレーキ力が弱い「1」から最も強い「4」までの計5モードが存在する。
「僕の場合、もっと飛ばしたい時に「3」、もっともっと飛ばしたい時に「2」。「1」はよほど重いルアーを使う時でもない限り出番はないし、Aモードでほぼ事足りてしまう」。
「A」と「4」はビッグベイト用、もしくはフロッグや向かい風用という特殊用途として伊豫部さんは捉えているようだった。

伊豫部さんがフロッグに使用するベイトリールがメタニウムDC XG。最新のDCブレーキシステム「I-DC5」を搭載。3モード内部ダイヤルはN(=ナイロン)・F(=フロロカーボン)・PEとラインの種類で選択するようになっている。そして写真の5段階外部ダイヤルは…。

イヨケンはなぜDCリールを使うのか?

キャストする毎にDCブレーキが奏でる電子音が耳に心地よい。DCサウンドといおうか、これを一度味わうと、これがなければキャストした実感が湧かず、手放すことはできないとさえ言うアングラーもいるほどの中毒性がある。彼らを虜にするのはもちろん音だけではない。どんなルアー、どんなキャストスタイルでも、ベイトリール最大の泣き所となるバックラッシュを最大限に防いでくれるという強力なアドバンテージがあるからだ。
「釣りって、リズムだと思うんですよ。たった1投でトラブルがあるようでは釣りにならない。ストレスは最大の敵」。
1投、2投、3投と続けていくうちに、タックルが身体と一体化していくのが取材スタッフにも伝わって来る。これがゾーンという現象だろうか。いつしか頭で思い描いていた場所にルアーがピタリと着水した瞬間、水面が炸裂する。そんなことも多々ある。
「今回はミラクルが決まっても出ないことが多いけどね、ワハハハハ」。
ミラクルキャストが続く合間、時にキャスト距離を見誤ってミスキャストがあったとしよう。それでも伊豫部さんはその1投を無駄にしない。ミスしたら即回収は、必ずしも正解ではないのだ。

バンタム172H-FRを鞭のようにしならせ対岸のブッシュ奥へとプレゼンテーション。突如、音もなく頭上に現れるフロッグにバスの視線は釘付けになる。

魚を釣るには、ムダと常識は不要

例えばキャストしたルアーが対岸の護岸に乗ってしまったなら、軽くシェイクして水面へと落とせばいい。枝にラインが乗ってしまったのなら、ラインを送り込んで水面でルアーを叩けばいいのだ。
当たり前な場所は誰もが攻める。無理矢理にでも滑り込ませるような場所を攻めていかないと答えは出ない。ミスキャストしたっていい。フロッグなんだから引っかかることなんてないんだし」。
そう言って水面を時に強く、時に軽く叩き続ける伊豫部さん。ここぞと睨んだ場所は30秒、いや1分を経過していたかもしれない。
驚くべきはスナッグレス性の高いフロッグのみならず、トレブルフックがむき出しのチャグウォーカーでも同様だったこと。
「バスが水面に落ちた虫を意識しているのなら、こういう使い方だってありだと思う」。
伊豫部さんに限界は存在しない。むしろリミッターを振り切ることこそがノーマルなイヨケンスタイルなのだ。

岸際からせり出したブッシュや細い木の枝を支点にラインを乗せ、ロッドを上下することでフロッグも上下に。水面に波紋をたて続けるうちに周囲のバスが気づき、空中にジャンプして魚体を見せてバイトすることもある。

鋭いフッキングの後もロッドを寝かせることなく、立てたままでファイトを続けた伊豫部さん。何か理由があるに違いない。

「バレんなよ!」が飛び出した気迫の1尾!!

取材時、伊豫部さんは「太陽が完全に上るまでは」とチャグウォーカーに出番を与えた。風はなく穏やかな水面を右へ、左へと小気味よく滑っていく。時に大きな泡を伴い、時に激しくスプラッシュ。伊豫部さんの意図通りにチャグウォーカーが水面下のバスへと存在感を伝える。朝イチに小魚がライズしているかのような派手過ぎないアピールを続けると…ついにその時が訪れた。
「バレんなよ!」。
ロッドを鋭くタテ方向にアワせたかと思いきや、立てたままの状態でファイトを続ける伊豫部さん。名セリフを口にしながら、ロッドを高い位置に保持してギア比7.4のメタニウムDC HGをゴリ巻き。そして魚へと自身が駆け寄っていき、鮮やかに抜き上げた。
「かなり遠くでのバイトだったことに加えて、水面下にはタマネギ。よくやられなかったよ、ワハハハハ」。
「タマネギ」とは袋状の網に石が詰め込まれたものの通称。魚をストックする一方で、気を抜けばどんなルアーもその餌食となる厄介なストラクチャーだ。伊豫部さんはその場に立つなり、投げる方向にある水中の様子を把握。キャストする前にヒットした際のことを想定していたからこそ、素早くバスを手にすることができたのだ。
「あ、いきなり太陽が顔を出したね。さっきのがラストチャンスだったのかも」。
バスは気圧の変化を敏感に察知してチャグウォーカーを襲ったのか、それとも太陽が出たことによってより濃いシェードへと移る前だから食わせることができたのか。おそらくいずれも間違いではない。2尾目と同様、キャストし続けることでベストなタイミングを導いた。そう考えていいだろう。

これまで全9色だったチャグウォーカーに写真のカラーを始め、新たに数色が追加予定。トップウォーターの本格シーズンに、攻撃的戦力がますます増強されそうだ。

リズミカル、そして足を使ってテンポよく

ヒットした場面を中心に解説してきたため、伊豫部さんは数カ所しか釣りをしていないのではないかと思うなかれ。同じエリアは最低でも2回、多くて4回。短い時は数分で見切り、次のエリアへ移動していたことも付け加えておこう。
「確かに厳しい時期だった。けど、僕の釣りの基本は何も変わらない。米国だから、日本だからという区別は僕の中にはない」。
考え方も然り、タックルも然り、常にストロングスタイルを標榜する伊豫部さん。取材を終えた数日後、サムライは再び太平洋を渡った。

チャグウォーカー使用タックル
●ロッド:バンタム164ML-G
●リール:メタニウムDC HG
●ライン:ナイロンライン15ポンド