期待の新作・パブロシャッド徹底解説 パート1  山木一人×高滝ダム(千葉県) 

仮称:山木シャッド いよいよ完成。千葉・高滝ダムでシェイクダウン!!

やまき・かずと 国内バス釣り発祥の地・芦ノ湖(神奈川県)の畔で生まれ育った、いわばバス釣りエリート。シャッドプラグを得意技の1つに、まるでバスと会話しているかのような技を披露する術はお見事。チームバンタムの精神的支柱だ。「なぜ止めるのか、なぜ寒い春先の時期だけなのか。使えば使うほどに意味がわからなかった」。
シャッドプラグというカテゴリーが注目され始めたのが1990年代後半のこと。バスフィッシングの本国・アメリカには存在しないジャパンオリジナルの釣りとして、今や定番となったダウンショットリグとほぼ時を同じくして『シャッド=トゥイッチ&ポーズ』が世に認知度を高めていったことをご存知だろうか。今でこそ当たり前のように語られる『シャッド=タダ巻き』だが、実は国内で浸透したのはこの10年にも満たない。そう、ここで登場する山木一人さんがその隆盛に大きく関与している。
「使い込んでみると、結局、釣れる時は巻いている時ばかりだったんだ。ならば、止める必要はないんじゃないか、と」。
この手法にいち早く気づき、戦略の1つとして組み込んだのが言うまでもなく山木さん、その人だった。公式戦で勝ち獲った栄冠の数は実に”26”(!!)。数々の華々しい成績から、いつしかその有効性は世に知られるところとなったのは必然だった。口コミが口コミを呼び、瞬く間に現代に続く『シャッド=ただ巻き』定番化への道を辿っていく。
「確かに巻くだけで釣れる。けど、釣り人なら常にもっともっと釣りたくなるよね」。
シャッド界の偉人・山木さんが昨年、新たなモデルを鋭意開発中との報は、巷で大きなトピックとなったことはご存知だろう。各メディアで『仮称:山木シャッド』と呼ばれていたモデルがいよいよ世にリリースされる時が来た。
その名も『パブロシャッド』
度重なるテストの結果、条件反射の如く、バスが口にしてしまう様子を評して付けられたそのネーミング。
仕上がったばかりの実弾を手に、山木さんが向かったのは関東リザーバーの雄・高滝ダム。はたしてどんな結果を魅せてくれるのだろうか。乞うご期待!『パブロシャッド59SP』。潜行深度約1.7メートル。国内フィールドでシャッドプラグの有効レンジとされる水深2メートルをターゲットに作り込まれた日本人による日本人のための”THEジャパンシャッド”。その驚くべき実力は後に明らかになる。『パブロシャッド59SP MR』。オリジナルの59SPより先行して世に登場することになったのがこのMR。潜行深度は約2.7メートル。まだ深場にバスが控える春先、早くもこのモデルが各地で火を噴いたのは知られるところだろう。

バンタム・パブロシャッド

晴れ舞台に、思わぬ「濁り」という強敵が現る…

「うわ…。こうなると勝負は昼過ぎだね」。
取材当日の早朝、湖面を見渡した山木さんの第一声がこれだった。

千葉・高滝ダムの上空は青く澄み切り、4月中旬ながら防寒ウェアを必要としないほどに春めいた気候。ウグイスも活気づき、その声も耳に心地よいが、懸念となるのはご覧の通りの水質だった。
前日までの数日間、激しさはないものの雨が降り続いたせいか、レンタルボート桟橋の周辺はもちろん本湖一帯がまさにカフェオレ状態。こう濁った水中では、ラトリンサバイブを始めとする激しいサウンドと振動のバイブレーション、マクベスなど水押しの強いクランクベイトが威力を発揮することをむろん山木さんは知っている。一般的にけっして強いルアーとは言えないシャッドプラグというカテゴリーだが、この厳しい環境下でどう戦略を組んでいくのか、そこに注目したい。
早朝から流入河川の1つである養老川へとボートを進め、まずは下見がてら全流域を確認。普段はそれ以上進めない最上流域を超えてもなお水位は高く、水質に回復の兆しは見えない。山木さんは川を下りながら要所要所で投げては巻きを繰り返すが、答えは皆無。想像以上に厳しい状況だ。
「10〜11時くらいになればクリアアップし始めるかと思いきや、全然変化がないね。これは厳しいな…。本湖のバンクを流し続けるしか方法はないのか…」。
時折、岩盤から流れ出した水がほんのり濁りを緩和しているスポットもあるが「ワームやジグならまだしも、シャッドでは難しい」と呟く。タテ方向に使えるルアーなら即座に答えは出るだろうが、山木さんは単純に魚の顔を見たいわけではない。パブロシャッドで獲れる魚、山木さん自身の釣りで獲れる魚を探しているのだ。

「所詮ニセモノ」を喰わせるための”高速巻き”

本湖の中ほどに位置する境橋。その橋脚周りで投げては巻きを繰り返す山木さん。周りより一段深いチャンネル周辺はMR、砂が堆積して浅くなったサンドバー周りはオリジナルが軸。この時、使っていたのはスピニングタックルだった。

養老川を下りながらの攻めで、本湖まで辿り着いたのは正午を回った頃だった。高滝ダムはけっして広大な水域ではないが、エレキのみに移動手段が限定されるため、想像以上に時間が経つのは早い。残すはレンタルボート帰着時間となる夕方17時半までの半日。通常なら尻に火がつく頃だが、山木さんの表情に焦りの色は見えない。
ふと手元に注目。キャスト後、着水したパブロシャッドはご想像の通り、ステディリトリーブ。いわゆる、ただ巻きだ。
その巻きスピードは時にミディアム、時に『えぇっ!?』と声が漏れそうになるほどに速い場面も見かける。バスはそのスピードに追い付けるのかと、若干不安になるほどの速さだった。
「例えば、バスの頭の中が小魚に支配されているような状況でサ、ゆっくり巻いたらプラスティックの塊だってことはすぐに見破られる。所詮ニセモノなんだからサ。『何者だかわからせないうちに喰わせる』。これが俺の中でルアーに対する基本的な考え方なんだ」。
今回のフィールド・高滝ダムが発祥とされる高速巻き、通称:高滝巻きが生まれた背景はそこにあった。ただ全てのシャッドが高速に耐え切るわけではない。パブロシャッドにもそのスピードに順応する性能が求められていったのは言うまでもない。

攻めるのは”潜行深度+α”なら「全域どこでも(笑)」

「本当の高速巻き」を動画でご覧になっていただけだろうか。これほどの超ハイスピードでもパブロシャッドは直線軌道を描き続ける。また水面に飛び出すこともなく、しっかりと水を掴んでアピールし続けるのは驚くべき事実だ。
では、どんな場所でただ巻きをするのか。どんな時に高速巻きとなるのか。そこが知りたい。
「ひと通り、全域(笑)。パブロシャッドが潜る水深+αの場所、リップがボトムにタッチするかどうかくらいの場所は全て投げて巻いてみても損はないよ」。
潜行深度が足りないなら竿先を水中へ刺し、ボトムに当たりすぎるなら竿を立て気味にする。このちょっとした工夫で、この日の山木さんはオリジナルとMRの2つを駆使。上の動画で使用しているのはヴァンキッシュの4000HGだ。

「小魚が確実にいる、見えるような状況では投げて巻くだけでOK。見えないなら、また別の方法もある」。また別の方法に関しては、次回パート2で詳細をお届けすることにしょう。

「投げて巻くだけ」でつ・い・にその時が来た!!

カメラマンが同船するハイパワーエレキの山木艇に、別艇の取材班が追い風でようやく近づいた瞬間、ロッドは弓なりに! その慎重なファイトから明らかに相手がでかいことは想像できた。

「さっきトンビが飛んでいたんだ。てことは、ヘロヘロ状態のワカサギがいないことはない。きっといると思うんだ」。
季節は折しもワカサギが産卵期を迎える春。産卵を終えたワカサギが水面で瀕死の状態になると、上空から水面を伺っていた鳥たちは急降下してその鋭い爪で捕らえる。我々取材班は山木さんと同日同場所にいながらにして、そのシーンをついぞ目撃していない。おそらくは遥か遠くで起きた事実を山木さんだけが見ていたということなのだ。いつもながら現場でのその鋭い観察力には感服しきりだ。
別艇の取材班がそんなメモをとっていると、いつの間にか山木艇が視界から消えていた。どうやら岬の向こう側へと移動したらしい。即座に追いつこうにも進行方向とは逆の向かい風が行く手を阻む。岬を越えて追い風となり、ようやく山木艇を遠くに見つけるや何やら船上が慌ただしい。つ・い・に、その時が訪れたようだ!

パブロシャッド、山木一人のフォースと共に!

写真は実測49センチ、1850グラムの堂々たる個体! ヒットルアーはオリジナルのパブロシャッド59SP、カラーはクリアレッドタイガーだった。

「昼に風が吹く予報があったのもあるけど、昨日までが雨でこういう晴れた日には風が吹くのは決まりきったこと。実は、その時を待っていたんだよ」。
早朝に山木さんが語った「勝負は昼過ぎ」という言葉の根拠がここにあった。まずは40アップをイブシギンで獲った後、写真の見事な1本をクリアレッドタイガーで2本連続キャッチ! いずれもパブロシャッド59SPのオリジナルタイプだ。
この当日のハイライトが訪れる直前、山木艇が我々の視界から突然消えた理由もようやく判明した。山木さんは風が吹き始めたのを即座に察知して風が当たるウィンディサイドへと向かったのだった。この風でトンビが狙う瀕死状態のワカサギを含め、水中の小魚は風下へと押し寄せられる。それらを狙ってバスが集結したのか、そこにいながらにして沈黙していたバスが俄かに活性化したのかは定かではないが、パプロシャッドのただ巻きに確実に反応したのは明らかなる事実。『時を捉える』とは、まさにこのことだ。山木さんにはフォースとでも言うべき特殊能力が備わっているのかもしれない。
「続けていればもう何本か出ると思うよ。けど、風がやんできちゃったね。次にチャンスがあるとすれば夕方かな」。
傷んだラインの先をカットして、パブロシャッドのラインアイに付属するスナップへと結び直し、次へと備える山木さん。そのタックルを改めて見つめると、今さらながらベイトタックルであることに気づいた。なぜスピニングからスイッチしていたのだろうか。

バンタム165L-BFSにカルカッタコンクエストBFS HG、ラインはフロロカーボン7ポンドが山木さんのパブロシャッド用ベイトタックル。その選択理由は下の動画で明らかに。

ベイトタックルだからこそ獲れた理由とは?

「狙っていたのが、水中で岬状になった岩の張り出し。沖から岸へ向かって斜めに投げて刻んでいったから、ラインの消耗は激しかったんだ。だから、太めのラインが使えるベイトで」。
使用ラインは7ポンド。4ポンドを主軸とするスピニングのほぼ2倍の強さを確保できるベイトタックルを山木さんはセレクト。また風が吹いている短い間にターゲットを捕捉すべく、ベイトならではの手返しのよさも貢献したに違いない。またスピニングロッドに比べれば若干の張りを持つベイトロッドはパプロシャッドがボトムにタッチした際でも跳ねることなく、障害物を舐めるようなトレースも可能なのだという。濁りのきつかった当日は、このタイトな攻めも奏功したのだ。
「何より巻きの釣りには、カルカッタコンクエストBFS HGのカチッとした剛性感が大切。水中の様子をしっかり手元に伝えてくれるのがうれしいね」。
全長59ミリ、重量はわずかに6グラムという軽いルアーでもよく飛ぶスプール回転性能はもちろん、丸型かつ金属製ならではの安定感と高い巻き感度が山木さんの釣りをサポート。実に心強い味方だ。

パート1は実釣の模様を軸にお届けしたが、次回パート2はパブロシャッドのさらなる特殊能力について深堀り解説していくことにしよう。