土壇場で1尾目が! そして続けざまにもう1尾キャッチ!!
初日ノーフィッシュ、続く2日目もあわや無念のゼロかという矢先の15時07分、つ・い・に山木さんは当釣行に初フィッシュをもたらした!
微かなバイトを感じるや無言のフッキング。しなやかに弧を描いたグラスコンポジットモデル、バンタム168ML-Gがプロトスピナーベイトのフックを魚の口へねじ込んだのがわかる。右へ左へと走る相手にもう逃げ場はない。表層へと浮き上がらせた瞬間、確実にフッキングしていることを確認するや、バットに右手を添えてフロントデッキへ一気に抜き上げ。
「ヨシ、いい魚! ホッとしたよ!(笑)」。
死闘20時間弱、日没まで2時間を切った時のこと。ドローのまま拮抗してきた後半戦、終了のホイッスル寸前に値千金の決勝ゴール!! その1本が前回の冒頭を飾った魚。そう、実はその直後に、今回の冒頭の魚を続けざまにキャッチしたのだ。
今回の状況はあまりにも厳し過ぎたのは言うまでもない。初日生命感が無の状況から、翌日は微かに回復したものの、晩秋いや初冬の厳しさは免れない。なおかつ、リリース間もないパブロシャッド59SPを敢えて封じ手にして臨んだ2日間のデスレース。
1尾目をキャッチした瞬間、えも言われぬ喜びが込み上げる。取材班と握手を交わし、しばし達成感に酔いしれた。
「もう放心状態だよ(笑)」。
実釣取材のたびに好釣果を魅せ続ける山木さん。それがプロフェッショナルとして当然のことだとしても、今回の魚は格別だったのだ。
とあるストレッチ、往路で1尾、そして復路でもう1尾。初日から明らかにそのエリアだけは何らかの「気配があった」と山木さん。
前回に続き、もう一度プロトスピナーベイトの外観を公開しておこう。
プロトスピナーベイトにはどんな威力が秘められたのか
今回、2尾の釣果を得たルアーはプロトスピナーベイト3/8オンス。取材班は山木さんがホッとした瞬間を狙って、その特徴を聞き込んでみた。が、しかし。
「前回解説したこと以上はまだ何も言えないよ(笑)」。
うっ…そこを何とか…もう少しだけ…。
「ブレードに秘密がある。あとワイヤー、それにヘッドにもあるね」。
って、全てのパーツに秘密があるということでは…。
「スピナーベイトって、全てのパーツを組み合わせた時のトータルバランスが大切になるんだ。どれか1つだけ性能が突出していても、それを活かすためのチームワークみたいなものがないと」。
一説によれば、ルアー作りにおいて一見シンプルに見える構造のものほど、開発が難航するものなのだという。金属パーツの集合体であるスピナーベイトは無機的に見えるせいか、樹脂を成型するプラグに比べて難易度は低いようにも見えるが実はそうではないのだ。
トータルバランスが生み出す高性能に関しては、外観だけでは判断できない。それでも何らかの秘密を見つけたい。
プロトスピナーベイトの画像をもう一度ご覧いただきたい。
ブレードとワイヤーについては特徴が分かる。ヘッドは…?。
「目玉かな」。
山木さんが開発に強く携わったモデルに共通するアイ。瞳に輝きを持たせたキュートなタイプだ。
「伊豫部(健)や奥田(学)が作ったワルそうな目じゃないよ(笑)」。
トリプルインパクト・チャグウォーカー・ラウドノッカー・ラトリンサバイブシリーズ、そしてBtフォース。これはすべて下方向から襲ってくるバスを威嚇するかのような鋭い目つきだ。バンタムルアーたちをそんな視点から見てみるのも面白いかもしれない。
遠目から見てもロッドは所々が白く汚れている。前回お伝えした通り、ラインを伝って水中の汚れが付着しているのだ。
夕方のヒット、実は予告ホームランだった!?
1尾目を釣った瞬間、これまでにない喜びを見せた山木さんだが、実はこの時を狙っていたと取れる発言もあった。その日の朝のこと、前回お伝えした通り、クランクベイトの新作・コザックでバイトを得た直後のことだった。
「この感じだと、釣れるのは夕方だね。もしかしたら日没寸前かもしれないよ」。
なぜか。それはこれまでにお伝えしてきた通り、悪化した水質が大きな要因だった。
かつて真冬の釣行で、山木さんは同様の言葉を語ったことがある。2日間の日程で今回と同じく霞ヶ浦水系で行われた陸っぱり取材でのことだ。初日は曇天、強風が吹く寸前にパブロシャッド59SPで見事な1尾をキャッチ。2日目は、前日昼から吹き続ける強風が早朝に止み晴天へ。
「チャンスがあるとしたら、水が落ち着く夕方の日没寸前とかかな」。
先のコメントと比べてみれば一目瞭然。ほぼ同じ内容であることがわかる。ヒットのトリガーとなったのは、はたして何か。
「変化した瞬間って大切なんだよ」。
冬といえば、冷たい北風が当たらず水面が落ち着いている北岸が、当然のように好場所と考えられてきた。水が激しく動く場所より、温かく安定した水をバスが好むだろうと。
「寒い冬だから、風が当たる場所にバスはいないだろうって思うかもしれない。でも、強い個体ってそういう場所に流されてくる小魚を待ち受けているんだろうね、多分」。
水が温かい場所にバスはいないのだろうか。そうとも言い切れないのだと山木さんは言う。
「激しく風が当たり続けたら、底荒れしてしまう。魚はそこにいるのかもしれないけど、そう簡単には口を使わない」。
泥底を巻き上げるほどの風は全層の水質を悪化させる。それが「水が落ち着く」、つまり回復するまでの時間が必要なのだ。今回の場合は減水が影響したが、強風も同様の要因。加えて、水が最も温まる時間帯が夕方。2つのファクターが揃った時、魚が反応する可能性は自ずと高まるというわけなのだ。
かつての釣行ではその日は釣果を得ることはなかったが、ある意味、今回がリベンジの機会。山木さんの理論を確かに証明することになったとも言えるだろう。
時には、ボート釣行ながら陸っぱり同等のトレースコースを選ぶことも。左腕キャストでよりタイトに着水点を選ぶ。スイッチヒッターならではのアドバンテージだ。
冬本番を直前に控え、どう釣るべきか
これから冬は本番を迎える。
水温は10度を切り、12月から1月、そして2月の声を聞く頃には5度以下の最低水温となっているだろう。
バスは消波ブロックの中、護岸際など安定した水温の場所で越冬するとも言われる。その一方で、先の山木さんの言葉通り、強い個体はエサを摂るという考え方もある。はたしてどれが正解なのか。それともどちらも正解なのか。
「正解なんてないよ。1つ言えるのは、どれだけ長くルアーを水中に浸けておくことができるか。当たり前のことだけど、バスは必ず水中にいる。陸上にはいない」。
山木さんが決まり文句のように言うのがこのフレーズ。確かに、言い得て妙。要は、諦めずに手を尽くすことが大切、ということだ。
そして、こちらもよく聞くフレーズだ。
「例えば、バスの頭の中が小魚に支配されているような状況で、ゆっくり巻いたらプラスティック(金属含む)の塊だってことはすぐに見破られる。所詮ニセモノなんだから。何者だかわからせないうちに喰わせる。これが俺の中でルアーに対する基本的な考え方なんだ」。
かつてパブロシャッド59SPの取材時も、同じようなことを山木さんは言っていた。
今回の実釣で紹介したクランクベイト・コザック、プロトスピナーベイトに関しては、発売までしばし時間を要する。その一方で、パブロシャッド59SPはMRに続きオリジナルタイプも市場に出揃った。この冬は、山木さんのアドバイスを元に、価値ある1尾に挑戦してみるのも興味深い。
や、や、山木さん、そのリールは!?「ノーコメント!」。
バンタムルアー及びロッドの新作が数多く登場した今回の釣行。2018年1月からスタートする各地のフィッシングショーを始め、各メディアでの発表を心待ちにしていただきたいところだ。
もちろん新作はそれだけに留まらない。
この日、実釣の合間に山木さんは秘密のBOXから何やら取り出し、取材班の目の前でその泳ぎを見せてくれたのだった。
「どう? 素敵でしょ? バスだけじゃなく、シーバスとかいろんな魚が釣れそうだよね」。
残念ながら、その画像を公開することはできないが、実に画期的なプロトルアーを見る機会にも恵まれた。
そして!!
…もう多くは語るまい。
山木さんが使っているリールの詳細は、12月下旬発売のバス雑誌で明かされることだろう。そして1月19日(金曜)から横浜みなとみらいでスタートする「ジャパンフィッシングショー2018」、シマノブースで何かが待ち受けている。それだけはお伝えしておこう。
<使用タックル>