2018年新登場の「コザック」は投げて巻く「ジャパンクランク」 山木一人×霞ヶ浦水系(千葉県&茨城県)

「投げて巻く」を追求した新作クランク

前回チラ見せしたリップが太短く、ややファットなボディのルアーは、そう、ご察しの通り、新作のクランクベイトだ。

その名も「コザック」。ウィンタースポーツに造詣の深い方ならわかるであろう、そのネーミングの由来こそが、開発コンセプトに直結しているのだと山木一人さんは言う。

「スキーのフリースタイル競技、モーグルってあるよね。コースを滑り降りる間にいろんな技を組み合わせて、審査で得た合計点数で競うんだ」。

ターン・エア・ハイスピードの3要素が審査対象で、中でも華やかさが際立つエアに注目が集まる。

「その1つにコザックというテクニックがあるんだ。空中で両足を左右に開いて、両腕を下方向に伸ばして前屈。今でこそ基本中の基本とされる技術だけど、かつては見た目に新しかったよね」。

山木さんはその基本中の基本をクランクベイトに求めたのは言うまでもない。

「投げて巻いて釣るクランクにおいて、こうだったらいいなという理想を追求したのがコザックなんだ」。

その理想とは、はたしてどんなものなのだろうか。

初日、実釣の合間に山木さんは2018年の新作クランクについて、笑顔と共に語り始めた。

クランクで狙うのはカバーだけじゃない

「派手に水を押し過ぎないこと。巻き心地が大変じゃないこと。シャッドじゃ弱いけど、ラウンドのクランクじゃ強いという時に、どこでも使えるクランク」。

クランクとミノーの中間的存在がシャッドとされるが、さらにシャッドとクランクの中間を埋める存在がこのコザックなのだという。新たなカテゴリーとも言えそうだ。

「クランクはボトムにタッチしなきゃいけないイメージがあると思うけど、タッチしてもいいし、しなくてもいい。小魚がいるレンジに合わせて使えばいいだけ」。

表層から中層、時にボトム。使うレンジはお好みで。

山木さんは取材に先駆け2日前から現地入り。取材初日で通算3日目の釣行となるせいか、身体のキレが増していた。

「アクションはローリングがベースでひたすら同じ泳ぎを続けてくれる。バタバタとウォブリングするクランクは世に幾らでもある。ウォブリングに多少の差こそあれ、大きな意味では一緒。それで釣れない魚を引っ張ってくるのがコザックの狙いなんだ」。

パブロシャッドが「THEジャパンシャッド」だとすれば、コザックは「THEジャパンクランク」。強過ぎず、弱過ぎないアクション。それでいて直進性能を徹底追求してアクションに破綻はない。

マクベスカバー攻略に特化したカバークランクでその威力は誰もが知ってる。けど、一方ではオープンウォーターでのクランキングってのもあるんですよ、と」。

投げては巻きを繰り返す山木さん。時にスロー、時に速巻き。いずれのリトリーブスピードにも対応することは明らかだった。

「それとね、伊豫部(健)がアメリカで困った時に投げられるクランクを作りたかったってのもある。カバーだけじゃなく、ウィードやリップラップのアウトサイドを流すとかね。今まで伊豫部が触ってなかった魚が触れるようになるかもしれないじゃん?」。

チームバンタムの精神的支柱は、チームメイトの活躍を期待して、このコザックを作り上げた。

「その割に、足掛け3年って時間がかかりすぎたね(笑)。バンタムがスタートした2016年の春にはプロトを2人(伊豫部健、奥田学)に渡してたんだけどねぇ…」。

紆余曲折あって、いよいよリリースの運びへ。…と山木さんはストレージから既に発売を待つばかりとなったパッケージ化されたコザックを幾つか取り出した。よく見れば、何と!

左からSR、MR、DR。リップはタイプごとに異なり、いずれも全長54ミリ、自重8グラム。注目したいのはその眼。山木さんが積極的に開発に携わったモデルに共通するのが瞳に輝きのある眼だ。

何と3タイプが同時にリリースへ!

リップサイズが異なり、潜行深度を異にする3タイプがそこに。何と3タイプが一挙同時にリリースされるというのだ。

タイプは無論、いずれもフローティング。リップが最も短いSR(=シャローランナー)は潜行深度1.0メートル、長いDR(=ディープランナー)は2.5メートル。そして中間に当たるMR(=ミディアムランナー)は1.5メートル。より細かなレンジ設定で、様々な場面での対応力が増しそうだ。

「シャッドでもよく言うことだけど、MRでボトムを叩き過ぎるなら潜行深度の浅いSRへ。SRで遠投してようやく届くレンジなら、MRではショートキャストで可能、とかね」。

山木さんはタイプ別の基本的な使い方を教えてくれる。SRとMRの関係のみならず、MRとDRもほぼ同様の考え方だ。

パブロシャッドはMR(2.7メートル潜行)が先行発売されて、早くオリジナル(1.7メートル潜行)が欲しいって声もあったけど、MRだけでも浅めのレンジはカバーできるものなんだよ。竿を少し立てて巻けば潜らせずに巻くこともできるからね。クランクだって考え方は一緒だよ」。

リップを備えたプラグに関しては、大は小を兼ねるのだという。各タイプに明記された潜行深度が即ち、その水深だけを攻略するという意味ではない。

「コザックに関して言えば、手にクランクの振動がしっかり伝わりながらも引き重りはない、誰でも使いやすいセッティング。だから、まずは投げて巻いて、身体で感覚を覚えてほしいね」。

巻きはリズム。巻きながら手に伝わる感触によって水中のイメージが頭に思い描けるようになれば、コザックを使いこなしたも同然だ。

コザックに関するわかりやすい解説を山木さんにお願いした。こちらの動画をご覧いただきたい。

小魚がいるレンジを見据え「シャッドじゃ弱いかなという時にコザック」と山木さんは強調した。

進行方向の右側に消波ブロック帯を控えている場所では、右手でキャストを繰り出す山木さん。左側なら…。

スイッチヒッターに攻めあぐねる場所は皆無

山木さんのキャストを見ていると、いつにも増して実に軽快なスイングでコザックを狙いのスポットへ着水させているような気がした。通算3日目となる実釣で、身体にキレが増しているという事実もある。それにも増して何かがキーとなっている気もする。まずはこちらの動画をご覧いただきたい。

進行方向の右側にアシ。こんな時、山木さんは右腕でキャストを繰り出す。障害物に対してよりタイトなトレースコースを演出できるためだ。逆に左側にあれば、左腕でキャスト。そう山木さんは両腕を自在に使いこなせるスイッチヒッターなのだ。

「どんな場所に遭遇しても、攻めあぐねることがないよね」。

例えば、陸っぱりで護岸沿いを歩き攻めていく際、右利きの貴方は左側に護岸を臨んで攻め始めるだろう。しかし、右側に護岸がある場合、どうするだろうか。無理のあるキャストで対応するか、もしくは精度の低いキャストに懲りてその場を諦めているのかもしれない。

「それと一日中投げ続ける際に、キャスト数が左右に分散されるから、負担を減らすこともできるんだ」。

左右投げをマスターするには練習を要するが、身体が覚えてしまえばこれほど大きなアドバンテージはない。

「それとね、やっぱロッドの扱いやすさってのも大切だと思うんだ」。

近年バスロッドは長尺化の傾向にあるのは否めない。かつてスピニング6フィート2インチ、ベイト6フィート6インチという時代が長らく続いてきたが、ここ数年はそれぞれ、「66」と「610」という数字が標準化しつつある。

「それは長過ぎやしないかと。俺らが子供の頃は6フィートってのが標準だった。それで慣れてバス釣りを1つ1つ覚えてきたという経緯がある。短いから極端に飛距離が出ないなんてことはないし、むしろ短いからこそキャストの精度は高まるものだと思う」。

山木さんが今、手にしているロッドのバット部分にはプロトであることを示す「160L+-G」の手書き文字。どうやら1ピース、6フィート、L+アクションのグラスコンポジットモデルであるようだ。

通常なら左腕でキャストする場面だが、なぜか右腕へとスイッチ。「護岸沿いじゃなくて、ボトムにある何かを探っているからね」と山木さん。臨機応変に左右を切り替え。

「6フィート」。原点回帰の意味

「コザックに限らず、ベイトロッドでマックスウェイトじゃないルアーを手返しよく、少ない力で飛ばして、操作性が良くて…となると、やっぱり短い方がいい。かといって、5フィート台までいくと、デメリットが多くなっていく」。

山木さんの少年時代、世に存在したバス用ベイトロッドの多くが56、60、66の3つのレングスというラインナップだった。今から35年近く前のことだ。

「66でも長いよっていう時代だったね。でも、56だと取り回しは良くなるかもしれないけど、存分に軽いルアーのウェイトを乗せることができないし飛ばないよね」。

2つの数字に挟まれた60という中間にして最適なレングスに山木さんは可能性を見出している。

「プロトの160L+-Gはバンタムグラスコンポジットの最短レングス。コンポジットならではの粘り腰を持ちながら、軽めのルアーが扱いやすいんだ。実はね、コンポジットじゃない6フィートモデルも開発中だよ」。

2018年のバンタムベイトロッドコンセプトは「ショート」がキーとなりそうだ。以前、奥田学さん登場回で公開した「170UH-SB」も、8フィートが主流のマグナムベイトロッド界としては破格の7フィート台だったことは記憶に新しいところ。時代に逆行とも取れるバスロッドのショート化は、シマノの最先端テクノロジーによってバスフィッシングの次なる時代を築くことになるのかもしれない。

次週は、いよいよ実釣2日目へと。さらに驚くべき新作、そして結果が待ち受けている。

今回は横利根川からボートを降ろすことに。赤い船体に白いシマノロゴが映える。

<使用タックル>