イヨケンとマクベスのコンフィデンスな関係 前編 伊豫部健×小野湖(山口県)他 パート3

2日目、フィールド変更の英断

取材初日、小野湖ではあらゆる手を尽くすもまさかの1尾で終了。明らかに何らかの作用が働いて、上流域やシャローで魚を見かけることすら叶わなかった。夕方までに雨は止んだが、水位は高くなり続けている。遠征のアウェーでは初日がプラクティスの意味を兼ねることも多いが、状況が変化してしまえばまた再度翌日はゼロから魚探しを始めることにもなりかねない。ここで伊豫部さんは英断を下したのだった。

「フィールドを変えましょう。どうせゼロから始めるなら、全く状況がわからない場所でも同じこと。ただ気になるのは雨」。

翌日の天気は夜半から午前中一杯は雨が降り続ける予報。降雨量にもよるがバックウォーターが濁流によって壊滅する恐れもある。一か八か、伸るか反るか。濁り始めであれば、打つ手はある。それも伊豫部さんならではのエキサイティングな展開で。不安半分、期待半分。フィールドはやや遠方となるため、投宿先をまだ夜が明けぬうちから出発。そして約束の地へと到着したのだった。

今回伊豫部さんがボートに乗せたのはこのボックスと、ビッグベイトのBtフォースのみ。1日の釣りに存分な武器にして、正解へと導く武器がここに詰まっていた。

雨がバックウォーターをどう変えていたのか

「最上流、濁流がダーッと流れていたら面白いよね。パワーのあるルアーで炸裂するかもね!」。

出船するなり雨が強くなり始める。期待はさらに高まっていく。このフィールドは前日の小野湖と同様に、2つの流入河川からなるリザーバー。まずは一方のバックウォーターを目指すべく、要所要所を撃ちながら上っていく。水通しの良い岬周り、水面に見えるストラクチャー周り、そして橋脚と探っていく。小野湖に比べ規模が小さいこのフィールドでは、ボートのエレキはフロントのみ。前日の前後仕様に比べ、移動スピードはややスロー。それでも20分ほどでボートが進める最上限まで到達してしまった。

下流側から見て、最上流域の水色は3段階で変化していた。最上流は水深が浅いためか、ボトムが色濃く見える。続いてやや水深を蓄えた流域は若干濃く、そして取材艇がいる位置は薄い。中間は濁った水が徐々に下流へと押し流されており、いわゆる「マッドライン」を形成していた。伊豫部さんはその境目から丁寧に探り始めた。まずは今季登場のビッグベイト・Btフォースで広範囲の水面を攪拌しているのが、遠目からでも見えた。すると、次にロッドを持ち替えた瞬間、何か異変が起きた(ような気がした)。投げているルアーははっきりと見えないが、水面にその存在が見えないということは水面下のルアーを使っていることは明らかだった。

もう一度、伊豫部さんをよく観察する。鋭い低弾道キャストからルアーは音もなく着水、そしてブレのないリトリーブ。船べりまでルアーが到達するや間髪入れずに再び鋭いキャスト。その流れるようなフォームを見ていると、スポーツ選手でよく例えられる極限の集中状態「ゾーン」に入ったとも感じ取れた。

そう思うが早いか、伊豫部さんは次の瞬間、大きく竿を曲げたのだった。

極限の集中状態「ゾーン」に突入した伊豫部さんは、もはや無敵だ。全てに無駄がない、全てが美しい。なぜなのか。

この日、1発目は見事な魚体、実測47センチ! 獲るべくして獲った1尾!! ここから伊豫部さんの快進撃は始まった。

マクベスと伊豫部健、ゴールデンコンビの躍動感

「え? 釣れる気がしてた? ワハハハハ、わかっちゃうんだ、ワハハハハ」。

実釣終了後のこと、伊豫部さんがマクベスを使い始めた時、「釣れる匂いがしました」と記者が伝えると、伊豫部さんはこう答えたのだった。

「バンタム170M-Gに、ギア比6.2ノーマルギアのメタニウムDC、それにフロロカーボン16ポンド。マクベスを操るのがこのセッティング。波動を手元へしっかり伝えてくれること、巻きのリズムがバチッと合うこと、それに掛けたら確実に乗せてくれること。もはやこのセットは手放せない」。

ロッドはよく腕の延長と例えられることもあるが、まさにそれを体現しているのがこの時の伊豫部さんだ。どんな魚も有無を言わせず口を使わせ確実にランディングへと持ち込むという迫力すら感じさせた。

「コンフィデンスかなぁ? 自信があるからこそ使うし、使い続けるからこそ身体に馴染む」。

事もなげにそう言うが、伊豫部さんがマクベスとタッグを組んだ時の期待感、いやむしろ安定感というべきものは尋常ではない。できることなら、マクベスで終日戦う姿を見てみたい。図らずも今回、この後にその展開は実現したのだった。

実釣2日目のMVPとも言えるのが、このシャロークランクベイト・マクベス。伊豫部さん自身が開発に深く携わり、最も溺愛するバンタムルアーの1つ。写真は2017新色の1つ、パロットスプラッターだ。

深く澄んだリザーバーで、マクベスを使う理由

それでは、改めて今回なぜマクベスの出番となったのか、伊豫部さんに聞いてみよう。

マクベスの潜行深度は約1.5メートル。カテゴリーで分けるなら、シャロークランクベイトだ。ご存知の通り、一般的なクランクベイトは派手かつ強い動きが最大の特徴となる。リザーバーと言えば例外も存在するが、どうしても水の透明度が高く、水深は全体的に深いイメージがつきまとう。そうなるとシャロー専用に開発され、なおかつ派手な動きのクランクベイトの出番は少ないとも考えがちだ。

「確かにそんなイメージはあると思う。けど、今回のように水深の浅いバックウォーターで、しかも流れが速く濁流ともなれば、マクベスの出番は確実にある」。

激流かつ濁流の中でバスからその姿はボンヤリとしか見えずとも、派手な動きによる波動はしっかりと伝達可能。また流れに負けることなく引き続けることができる動きのパワーも持ち合わせている。なおかつ見えない水中に何が存在していたとしても根掛かりを最小限に抑えるスクエアビルの搭載は実に強い味方となるはずだ。

「水中でカバーにコンタクトするかなって時は、敢えてアクションを変えることもある」。

伊豫部さんはそう言いながらリールのハンドルをグルグルッと数回速巻き。またある時は鋭くロッドをあおってカバーへと強くコンタクト。これがリアクションバイトを誘う。

「一方で水面でゆっくり巻くこともある。カバー周りで待ち伏せしている魚をナチュラルに食性で喰わせたい時に」。

ロッドを立てながらスロー巻き。こうすればリップが水を強く掴んで潜ることはなく、表層を巻くことができるのだ。

「1粒で2度美味しい。そんなシャロークランクベイトとも言えるね」。

 

「カバー周りを時にはガンガンぶつけながら巻くのもアリ」と伊豫部さん。使い込んだ伊豫部さんのマクベスは、スクエアビルの角が丸みを帯びていた。「このくらいになるまでぶつけまくって巻くことが大事です」。

1尾目がヒットしたのはこの杭の向こう側(=下流側)。ちょうどマッドラインの境目にそれは存在した。なぜそこにバスがいたのか。これに関しても次週、詳細をお伝えしたい。

豪雨でも高まるコンセントレーション。再び「ゾーン」へ突入!

見事な1尾目をキャッチした後、伊豫部さんはその場を後にした。もう1つの流入河川を狙うべく、移動を開始。雨は降り続け、さらに強さを増していく。

おそらくは同様の展開が見込めるだろう。しかし、意に反して、無反応。即座に撤退して、再度展開を練り始める。ダムサイト付近の下流域はどうか。しかし、初日の小野湖同様、ディープを念入りに探るには時間が足りない。伊豫部さんは、もう一度あのバックウォーターを目指したのだった。

バックウォーターへたどり着く前に、もちろん要所要所は撃っていく。マクベスで攻略できる水深、つまり岸沿いのバンクを狙う。

何かが起きそうな後ろ姿。そして…!

「ここも小魚が全然見えない…。昨日の二の舞か…」。

一抹の不安がよぎる。前日同様に真夏のもう1つのセオリー、魚はディープへと移動してしまったのか。それとも真夏と考えていた季節はここ数日で秋へと進んでしまったのか。正解はまだわからない。

9時近くになると、雨は若干強さを潜めたが、山あいからは霧が立ち込め日中とは思えないローライトに。かと思いきや再び雨足は強まり、レインウェア上下を着込んでいても肌寒さを感じるまでになってしまった。しかし、伊豫部さんのフォームが崩れることはなかった。後ろ姿を見ているだけでも何かが起きそうな気がしていた。

ついにはバックウォーターまで到達。

や・は・り伊豫部さんは結果を魅せたのだった!

弓なりにしなるバンタム170M-G!! 今度の魚もまたでかそうだ!! 結果は次週、乞うご期待。