浪漫志向 まだ見ぬ、伝説の巨大魚へ挑戦する魂が震える、あの魚を求めて 巨べら伝説4

巨べら釣り師にとって、特別な場所に挙げられる千葉県「亀山湖」。特別というからには相応の理由があるわけで、それが50上(ごじゅっかみ)の存在です。
3月29日(水)、亀山湖へシマノへらインストラクター・萩野孝之氏が釣行し、ついに念願の51cmを上げることができました。萩野氏が10年以上も毎春、通い続けて釣ることができなかった50センチオーバーですが、一体、去年までとは何が違うのか・・・奇遇にも、今春の萩野氏は『飛天弓 頼刃またたき』を手にしています。バラシが極端に減ったなかで、記録が更新されたという現実に鑑みると、釣り竿が釣果にもたらすものは大きいと言わざる得ません。
そこで今回は巨べら伝説の実釣編として、当日、萩野氏が”51cm”を釣り上げた内容をお伝えします。

萩野 孝之

気温よりも水位の変動を重視。
すべては運だが、タイミングを逃さないよう釣り具は準備万端に

「これは上がりそうだ」
萩野氏はフロントガラスを往復するワイパーを見つめて、そうつぶやいた。冷たい雨が降り続き、週末から2日間も続いて湖面には雨の波紋が広がっていました。春が早いといわれる房総であっても、気温は低く水温は上がらない、でも水位は上がる、だから魚も上がる(魚がポイントへ入る)・・・その思いが冒頭のつぶやきとなりました。今から振り返っても「釣り場がいい状態になっているという確信はなかった」と萩野氏は語ります。それでも遠路はるばる高速道路を使い、数時間かけて萩野氏は釣友とともに亀山湖へやって来ました。人に話したら、希望的観測にしか過ぎないのに亀山湖へ向かってしまう行動を「よくやるよ・・・」と笑うことでしょう。完全に無駄足となり竿が出せないかも知れないのに、希望があれば釣り場を見に行く。こうした時間と経費を費やす無駄足の繰り返しが、チャンスに遭遇する確率を高めるのです。
そして、その日がやってきます。3月28日(火)、萩野氏が日の出前の早朝に現地に着くと、大雨によって亀山湖は増水していました。この時点では魚が入っているか定かではありません。氷雨を思わせる雨とその寒さに反して、ぶるっと枯れヨシが揺れます。思わず「よし、いるね」と、笑みがこぼれた萩野氏。今季は、まだ誰もポイントへ入っていない様子で釣り座は完全に水生植物に閉ざされ、自然な状態へ回帰していました。そこで萩野氏は、釣友と2時間以上かけてポイントの整理をしました。覆い尽くしている真っ赤な浮き草を網ですくって水面を開き、藻刈り鎌と潮干狩り用の熊手で水底をさらい、クタクタになるほど作業するとヨシ際に70~80cmのタチが確保できました。静かな浅場を、金属の工具でかき回したわけですから、魚を釣るためには少し水底を休めなければなりません。
萩野氏は釣友と軽食をとって体力を回復させ、釣りの準備を始めました。このとき、できるだけ釣り座を静かに放置しました。へらぶなは他の魚に比べて鰓耙(さいは)が多く、この器官が詰まるので濁りを嫌うといいますが、乗っ込みの釣りでは濁りが目安です。普段はヨシ林に囲まれて汚れがフィルタリングされているような水況が維持され、澄んで底まで見える浅場なのに、濁っているのは、何かがいて土煙を上げているからに他なりません。このときばかりは”濁り”こそがチャンスであり”泥が舞っているのは喰わなくなる”などと気にする必要がないのです。
午前8時頃からエサを打ち始めた萩野氏ですが、2時間はお世辞にも好況といえない状況だったそうです。それが午前10時を過ぎた辺りで、釣友が魚をバラします。ここからの30分間はサワリが本格化してきて、萩野氏のウキも激しい糸ズレを伝えてきたといいます。
そして午後2~3時、この日の山場を迎えます。萩野氏は「魚が入ってきて、すぐなんでそう簡単には喰わない。それまで水のなかったところに入ってきたんだから、警戒ってわけじゃないけれど恐る恐るといった感じじゃないですか」と解説するように、昼下がりになって尺半(45cm級)を数枚釣ります。スレも気になり、今日はスタンバイの日だと、ここで納竿しました。この日の夜、激しい雷雨が亀山湖の湖面を打ち付けました。この光景に、萩野氏は「明日はきっと釣れるだろうと言う気持ちが、ますます強くなった」そうです。
翌29日(水)、雨上がりで寒々とした午前7時に再び釣り座につきました。寒くて朝はアタらないと思っていたそうで、そのとおり午前9時にウキが動き出すまでは気配が弱かったといいます。
午前9時半くらいまで、何枚かの尺半を釣った後に、午前10時過ぎ47~48cmが飛天弓 頼刃またたきを曲げました。
萩野氏は言います。
「『飛天弓 頼刃またたき』は強い竿ですが、その性能は曲がることで発揮されるものです。ですから、曲がらないガチガチの竿だったら仕掛けが飛ぶ(切れる)ところですが『飛天弓 頼刃またたき』の場合は竿の働きが”仕掛け本来の性能を引き出す”ことにより魚をリフトアップする感覚があります」
そのためでしょうか、萩野氏の仕掛けは、いわゆる3年2組(道糸3号、ハリス2号)ではありません。
以下に、当日使用していた萩野氏の仕掛けを紹介します。

萩野 孝之

竿=『飛天弓 頼刃またたき』10.5
萩野「ヨシ際ギリギリというエサ打ち点の精度を維持する長さを選択」
ミチイト=ナイロン2号
萩野「視認性のいい白色の製品を使用。ハリスが1.5号だから3号にするところを細い2号にしたわけですが、それでも、ハリスとミチイトの号数差を少なくすることで強度が維持されると思います。障害物へ向かって打っているわけですから、根掛かりのリスクも高く、太仕掛けを引っ掛けて外そうとしたときに竿を傷めてしまうのは珍しくありません。それからギリギリの号数選択は、ギリギリ保(も)つというより、ギリギリで切れる方向になります。だから私はギリギリではなく、細いながらも余裕のある太さ(号数)を選びます。それが1.5号ハリスならミチイト2号という選択です。ただし5尺の場合だけ、ハリスは同じでもミチイトは2.5~3号にすると思います。基本的に、仕掛けの太さは”竿の長さと魚のサイズ”で、長い竿ほど大きな働きを示します。そこそこ長めの竿が振れるなら仕掛けは細くすることが可能で、逆に短いなら太くせざる得ません」
ハリス=1.5号上23cm下35cm(12cm段差)
萩野「太さは喰わせる意味での1.5号。底釣りだが段差は12cm。この段差の意味は3つあります。

  1. ①ヨシの根が残っていたり浅場の底釣りは変化の激しいので、ちょっとしたことで上バリが切れるようなことが起こりがちだが、下バリだけは離れないようにしている。
  2. ②カケアガリや馬の背など傾斜した場所でも、両バリを底から離れにくい。
  3. ③どうイメージしても、あんなに顔のでかい巨べらが頬を寄せ合いながらエサを喰うイメージが湧かない。大きな魚を相手するときほど、そのパーソナル・スペース(他人に近付かれると不快に感じる空間)を確保すべく大段差が正解だと思っている。持論ですが”エサを離した方が釣れる。エサを寝かせた方(ベタ方向のタナ)が釣れる”と思っています。こうした釣り場にきたらエサ落ちがどうとか、戻り返しが少ないとか気にしません。そういう曖昧になりそうなところを補う”勘”は必要ですね」
飛天弓 頼刃またたき

ハリ=改良ヤラズ系8号
萩野「こうした野の底釣りにおけるグルテンエサの使い方として、重めで太軸のハリはセオリーだと思います。軽いエサを安定させ、グルテン繊維をフトコロに維持させることを目的にしています。魚の大きさに号数は合わせますが、私は8号でいいと思います。2桁号数になる大きなハリは、ジャミが多くてマッシュのエサを使う時季や場所で効果的だと思います」
ウキ=パイプトップ、4枚合わせボディー
萩野「すごくいいツンアタリがサワリなんです。それから2~3目盛の上下動もサワリ。魚のスケールが違って、浅場だから水域面積は狭い。ウキが動きすぎたら釣りにくくなりますよ。先ほどの動きをアワせても、まず乗らないし、それでスレたりしたなら喰わせるチャンスを失います。誤解を恐れずに言うなら、いつものへらぶな釣りは一旦、忘れてしまった方がいいでしょうね」
エサ=ニンニク系のグルテンに、それほど粗くないマッシュポテトのフレークがほどよく利いたグルテンをブレンドして、ちょっと硬めに仕上げたもの
萩野「エサ付けは1円玉より少し小さめ」
タナ=水深70~80cmの底釣り
萩野「ハリスの長さ+ウキを折り返したようなウキ下と、ウキが沈んでいる長さ+なじみ幅10~20cmから70~80cmある。基本は上バリトントンで、上バリが底から切れる(離れる)ようにしたり、オモリベタかと思うほどズラしたりする。ウキの動きが出る状態をズラシ幅や切り幅で探る」

このように仕掛けは極端に太くしない、過度な大バリを使用しないなどが萩野氏のポリシーです。

2日目、午後4時、そのときがきた・・・。

3月29日(水)、昼頃までに10枚以上の釣果を得た萩野氏でしたが、昼下がりからまったりとした時合いになってしまいます。1投して10分以上はウキを見つめている釣りスタイルですが、これは単純に2~3投は20~30分待つという計算になります。萩野氏はハート型に凹んだ、草際の凹みを左右に打ち分けて釣っていましたが、まったりしたときは右も左も変わらず、この30分間はモヤモヤするだけでアタリが出ませんでした。西の林へ日が隠れると、辺りは次第に暗くなり寒く感じてきました。ほんの少しだけ「もうダメかな」という気持ちが心をよぎった、午後4時13分、波立つような大きなサワリからの、それを上回る大きなアタリが出てアワせました。

巨べら

飛天弓 頼刃またたきが手元から緩やかに、やんわりと弧を描いた後、そんなに抗うこともなく、すんなりと玉網に巨体が収まりました。あまりに呆気ないこともあって萩野氏本人が「ちょっと長くないか」と言うまで、今まで釣れていた尺半級だと思っていました。しっかりと口内にハリ掛かりしている様子は、隣席の釣友が確認していました。その釣友も冷静で、静かにゆっくり玉網へ導かれる魚体を見て「それ測った方がいいですよ、なんだかデカい」そして、徐々に「あれ、それは50あるんじゃないですか」と興奮ぎみに言いました。
あらかじめ用意していた専用スケールへ魚を乗せて尾ビレを揃えたとき・・・その目盛の位置で、一気に興奮は絶頂を迎えました。間違ってはいけないと、何度も測り直し、顔を見合わせて「あるね」「ありますよ」「51cmだ」と声が大きくなり、それまで薄暗く寒気に包まれていた2人が、達成感溢れる歓喜に包まれました。
萩野氏は「飛天弓 頼刃またたきの性能に助けられましたね。50上が本気で暴れる前に取り込めた。喰わせられたから素直だったということも言えます。この竿は強さばかりが注目されるけれど、穂先が利いて手にこない、ショック・アブソーバ的な働きをする竿です。そして魚にも優しかった。それが取り込み時にこんなミラクルも起こしてくれるんです」
萩野氏が言うように、これは奇跡なのかも知れませんが現実です。
飛天弓 頼刃またたきが奇跡を呼び込んで、萩野氏の釣果記録を更新できたことに間違いはないのです。

萩野 孝之
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