いまさら聞けない!飛距離実験
4・8・12本編みPE

シーバスプラグでどれほど違う?

海にも山にも生命感があふれるこの季節。我々アングラーも様々なターゲットを求めて活動的になっている。私たちが楽しんでいる釣りは、多種多様なジャンルがある。

フィールドも違えば魚の習性もまちまちで、それに応じて道具も同じ数だけ存在する。ルアーフィッシングを例に挙げれば、ロッドにリール、ライン、リーダー、ルアー、更にはフックやスプリットリング、スナップ・・・と本当にたくさんのアイテムがある。そのなかで、今回取り上げようと思っているのがメインライン。釣りという遊びにおいて、「ライン」はなくてはならないもの。人間と魚とをつなぐ、ある意味最も重要な道具ではないだろうか。

辺見哲也:写真

辺見哲也

東京湾ボートシーバスの“伝説のカリスマガイド”として名を馳せ、現在は岸からのキャスティングゲームでも活躍するシーバスエキスパート。多彩なキャスト技術を持ち、どんな状況でも狙ったスポットを正確に撃ち抜く、キャスティングの名手としても知られている。

逆に言えば、メインラインはターゲットや釣りのスタイルを問わず道具のなかで絶対に必要となるアイテム。この選択をミスすると、道具のバランスが崩れたりゲームそのものが成立しなくなる。ロッドやリールのような華やかさのない地味な存在ながら、釣りの根幹にかかわっているメインライン。クルマに例えるなら「タイヤ」のような存在だ。

どんな高性能スポーツカーやオフロード車でも、タイヤが用途に合っていなくてはその能力が発揮できない。パワーのあるフォーミュラカーに市販車のタイヤを履かせてみても、機能しないどころか走ることすらままならないことは察しがつくだろう。クルマにとってタイヤは最も重要なパーツであるのと同じように、釣りにおいてはメインラインがそうなのだ。今回はそのラインについて、改めて考えていこう。

シーバスゲームを想定し、1.2号をチョイス。改めて三つ並べると、パッケージの雰囲気も微妙に違っていた

おさらい。PEってどんなところに優れたラインなの?

ルアーフィッシングにおいて使用されているラインは、大きく分けて4タイプの素材がある。
ナイロン、フロロカーボン、エステル、そしてPE(ポリエチレン)だ。それぞれに長所と短所が存在するが、現在使用率が最も高いのはPEだ。

このラインの多くはポリエチレンの細い編み糸を束ね、それを更に編み込んで作られたもの。製法が複雑なので発売された当初は非常に高価であったが、直線強力の高さと伸びの少なさによる感度の良さは絶大なる支持を獲得。あらゆるゲームのメインラインとして普及し、より遠くへ、より深くへと進化を続け、様々なゲームシーンに対応する唯一の存在となっている。当初はオフショア用に開発されたが、現代ではもっぱらルアーのキャスティングがメイン。特に飛距離や水の抵抗の少なさ、高い感度を求められるゲームで欠くことのできない存在となった。

PEは直線強力が圧倒的に勝るため、単純な引っ張りっこはどのラインよりも強い。より細いラインが使えることが強味で、ナイロンラインを使用していた時代に比べるとおよそ1/3の太さでゲームが可能になった。細くなったことでまず、飛距離が伸びる。そして水の抵抗が少なくなるというメリットも生まれる。またライン自体の伸びの少なさがもたらす感度と高い操作性は、あらゆる釣り人から称賛される。

そして吸水しないため、他の素材より経年劣化が少ないこともうれしい。ロングライフであることは、すなわち最終的なコストパフォーマンスにつながる。

  • 同じ4000番のヴァンキッシュにそれぞれ200メートルずつ巻いて飛距離を比べる。なるべく干渉しないよう、リーダーを結ばず直結した

  • ロッドは9フィート6インチのエクスセンス ∞(インフィニティ)

そんな優れたPEだけど、やっぱりネックは・・・値段!

ここまでPEラインの利点ばかりを書いてきたが、もちろん弱点もある。
細い繊維のものを編んでいるためコシがなく、糸さばきが悪い。またポリエチレンは熱に弱いため、根ズレや結束で生じる摩擦熱に弱い。そして最大のネックは初期のコストパフォーマンスが悪いこと。ただし経年劣化に強いと述べたように、長持ちしてくれれば補ってくれる。かつてのPEラインは本当に値段が高く、アメリカから個人輸入するアングラーも多くいた。しかし今では高性能のラインでもリーズナブルな価格で手に入る時代になった。消耗品である釣り糸が安く手に入るというのは、現実問題としてありがたいことだ。そもそもシマノのPEラインは性能に対してコストパフォーマンスに優れると評判だ。特にキャスティング用では多くのアングラーが愛用している。

そんななか、今年発売されたPEの『ピットブル』。これは高分子量ポリエチレン『IZANAS』を素材とし、より高強度と低伸度を実現。製造方法にも工夫がなされていて、対角にある原糸を逆方向にひねることで密に均一に編み込む『VT工法』。強力と低伸度を高めた『タフクロス2』も採用(12本編みのみ)。それでいて驚異的なコストパフォーマンスも遂げているのが特徴で、今シーズンはメインとして私も使っているラインだ。PEは編み糸であることは先に述べたが、ピットブルは4本、8本、そして12本の3タイプがリリースされている。この編み数はラインの性能に少なからず影響を及ぼすのはご存じの通り。でも、それが実際にどれほどなのか、皆さんも違いを気にしているのではないだろうか?
そこで、各タイプの飛距離と使用感を比べてみたいと思う。キャスティングテストの結果を踏まえ、私の独断と偏見でインプレッションしてみよう。

サイレントアサシン99SPをキャストし、着地点からレーザー測定器で距離を計測する

ピットブル・キャスティング飛距離実験

【アイテム】投げるルアーは『エクスセンス サイレントアサシン 99SP AR-C』
【ルール】同じタックルでそれぞれ8投し、最長と最短の二つをカットした6回の平均飛距離を出してみた。

※小数点第2位は四捨五入

4本編み

1投目:47.5→2投目:47.0→3投目:53.0→4投目:46.0→5投目:48.5→6投目:49.0
平均:48.5メートル

8本編み

1投目:54.5→2投目:49.0→3投目:55.5→4投目:52.0→5投目:55.5→6投目:55.0
平均:53.6メートル

12本編み

1投目:57.0→2投目:51.0→3投目:58.0→4投目:56.0→5投目:60.0→6投目:54.5
平均:56.1メートル

4本編み→8本編み(110.5%UP!)→12本編み(104.7%UP!)

※小数点第2位は四捨五入

ピットブル4

[号数] 0.4、0.5、0.6、0.8、1.0、1.2、1.5、2.0号 [長さ] 150、200メートル
[カラー] ライムグリーン、スーパーブルー [本体価格] 1,230〜1,570円

PEラインのベーシックな製法で作れるし、4本編みは価格が安い。PEラインの性能を、身構えることなく手軽に感じられるのはいいところ。ラインが消耗品であることを考えると、ある程度は新しい製品を使用することが道具としては望ましいわけだ。「低価格」というのは高い性能といえよう。
また8本編みや12本編みに比べて適度な張りもあるため糸さばきが良くトラブルも少ない。だからこそPEのエントリーとして最適と言われる。しかしながら、使用感として気になるのは編みの目が粗いこと。4本編みはガイドを通る際の感触が強く音も大きい。そして8本や12本と同じ号数で比べると、触った感触も太い。同じ号数(線径)ながら編み糸なので、つぶれ方や表面の凹凸の差が太さの違いを感じさせるのだ。
実際にテストした結果、3タイプのなかで一番飛距離が出なかった。空気やガイドへの抵抗が大きいことが証明された。

4本編みのベストチョイスを考えたときはこうだ!

ライントラブルが起きやすい近距離戦、そしてベイトタックルを使用する際にいいだろう。
またドリフト時、ラインをあえて流れに乗せたり絡ませるときも効果的。なお表面積が大きい分だけ結束強度が高いので、ノットに不慣れな方でも安心だ。

ピットブル8

[号数] 0.6、0.8、1.0、1.2、1.5、2.0号 [長さ] 150、200メートル
[カラー] ライムグリーン、スーパーブルー [本体価格] 2,180〜2,900円

4本に比べると製法が複雑になる8本編み。
力が分散されるため直線強力は更に高くなる。表面の凹凸も少なく、ザラッとした感触の4本編みと比べて明らかにスベスベだ。
実際、触った感触が細い。しかもこれは飛距離にも表れていて、4本編みに比べて1割以上も伸びた。これまでメインに使っていた『ミッションコンプリート EX8』と同じ編み数なので、個人的にもなじみやすかった。編み数が4、8、12とあるなか、値段が“2倍"“3倍"でないのと同じく性能が倍増するわけでもない。使ってみた感じでは、恐らく最もバランスよく何事もこなせるのがこの8本編みではないだろうか。
高性能ながら最大のネックは価格であったが、ピットブルは従来品の4本編み『パワープロZ』よりも安い。これはかなりの驚きだ。8本編みの高性能を手軽に体感できることを考えると、皆さんに最もおすすめしたいラインと言えよう。

8本編みのベストチョイスを考えたときはこうだ!

なんといっても、この安定感によるマルチぶりは頼りになる。どんなシチュエーションにおいてもスムーズで安定した使いやすさをもたらしてくれるし、飛距離面ではPEラインの優位性を十分に感じられる。ステップアップを臨む方にもぜひ!

ピットブル12

[号数] 0.6、0.8、1.0、1.2、1.5、2.0号 [長さ] 150、200メートル
[カラー] ライムグリーン [本体価格] 3,450〜4,040円

更に複雑に編み込まれたラインがこちら。3タイプあるなか、さすがに最も滑らかだ。まるでモノフィラのような触り心地で、感触も明らかに細い! 4本編みと比べると「半分しかないのでは?」と感じてしまう。
飛距離テストにおいても、表面が滑らかであることがその性能を浮き彫りにした。これは数字でハッキリと表れ、4本編みに比べて115.7%、8本編みに比べて104.7%も伸びている。

このラインは昨年末から使用し始めたので、実戦での見極めは正直、まだまだ必要ではある。ただ今回3タイプを同じ条件で投げ比べたが、ポテンシャルの高さは明白だった。著しく性能の高いことは体感できたが、懸念すべきは値段。一般的にはとても高価な12本編みだが、ピットブルはその問題を大幅に改善している。

何度も言うが、ラインは消耗品。この性能のいいラインのポテンシャルをどれくらい維持できるかが、コストパフォーマンスを決める。昨年末から数えてまだ数ヶ月だが、この先も実戦投入して見守っていきたい。この調子でいつまでも使い込めるなら、12本編みというPEラインがグッと身近なものになるはず。本当の意味での12本編み元年となるかもしれない。

12本編みのベストチョイスを考えたときはこうだ!

とにかくより遠くへ、より繊細にといった、道具とキャスティングの真価が問われるシチュエーションで使いたい。
表面の凹凸が少ないことから生まれる優位性は絶大といっていい。恐らく、今まで選んでいたラインの8割で達成できるのではないだろうか。つまり1号で0.8号ほどの使用感であり、アジやメバルといったライトゲームを始めバチ抜け時などラインに水の抵抗を与えたくない場面にうってつけではないかと考える。また、飛距離が絶対的なショアジギングなどでは大いに威力を発揮するだろう。

PEラインのファーストステップ。それはスプールに巻くこと

以上、ピットブル3タイプの違いをご紹介した。このラインはどれも低伸度で感度が非常に高く、これまでより進化したPEであることは間違いない。
高性能ラインがいかほどか、一度試しても損はないと思う。最後に、これからPEラインを使いたいと考えているアングラーの皆さんへ使用に際しての私の考える注意点を紹介しよう。まずラインをスピニングリールに巻く際、伸度の少ないPEはスプールに結んだ部分が緩みやすいためテープで止めてほしい。

結びが緩むとスプールに巻いたラインがフカフカになり、クルクル回って釣りにならないこともある。私の場合は水や油にも強い絆創膏を適当なサイズにカットして結び目に張っている。また、ラインは温度によって膨張と収縮をする。寒冷地での使用が想定される場合は、ラインを巻く前に冷蔵庫で冷やしてから行っている。そしてスプールに巻く際は、号数にもよるが強すぎず弱すぎずのテンションを掛けること。

ラインを長持ちさせ滑りをよくして劣化を防ぐ

釣行前後に吹き付けておけばガイドの滑りもよくなり、長持ちするし飛距離も出ます。

PEラインアクティブスプレー

[品番] SP-004J [容量] 60ml [本体価格] 1,150円

現代の釣りに欠くことのできないPEライン。私は常に、ラインはロッドやリール以上に釣りを劇的に変化させる重要アイテムと思っている。
実際PEの出現と一般化により、ナイロンラインを基準に進化してきたロッドやリールは、その進化の方向を転換させたほど影響を与えた。
そのPEラインは、今もまた進化している。適材適所にチョイスすることで、更なる釣りのレベルアップを考えてはいかがだろうか。