真鯛は古来より日本人に愛され続けてきた魚。
職漁、遊漁を問わず、さまざまな釣り方で親しまれてきた。
ビシマ仕掛けやカブラなど、古くからあり続ける伝統釣法、地域ごとに進化したご当地釣法。
鯛ラバやインチク、一つテンヤなどの、近年、ブームとなった釣法、
まだ一部でしか知られていない新釣法などなど‥。
真鯛釣りが成熟の時を迎えたいま、千葉県大原沖や鹿児島県の錦江湾などの
メッカと呼ばれるフィールドでも、幾つかの釣法を同時に楽しむ機運が盛り上がりつつある。
真鯛だからこそ可能なクロスオーバーな楽しみ方を「田辺哲男」が紹介します!
田辺 哲男が考える!ザ・真鯛ゲーム。
「真鯛は引きがいいし、ゲーム性豊かな魚。身近な海にこれだけのゲームをできる魚がいることを、まず知ってもらいたい。まさにザ・ジャパニーズ。日本だからこそ楽しめる。日本のタックルだからこそ出来る繊細なゲーム感。世界に誇ることができる釣りだと思います。エサ、ルアーを問わず、ハイブリッドの釣りが展開できるゲームフィッシュであり、未来形の釣りでもある。まるでフレッシュウォーターのバスフィッシングのよう。いまや真鯛の食性に対応するように、釣法やタックルが進化し、オールレンジで釣りを展開できるようになった。だからこれを総称して『真鯛ゲーム』と呼びたい。状況に応じて釣り方を分け、そのときのベストマッチな魚と向い合うのはどうだろう、と提案したい」。
田辺氏が真鯛攻略の三本柱と考えているのは、一つテンヤ、鯛ラバ、マイクロジギング。同じ船上、環境で成立する釣法、というのが大きな特徴だ。それぞれに醍醐味が凝縮されており、さらなる進化も期待されている釣法だ。
真鯛ゲーム、
その基軸となるバーサタイル釣法
田辺氏が真鯛ゲームのメイン釣法と考えているのは、自身でも積極的に取り込んできた一つテンヤだ。
「真鯛ゲームのベースとなるのは一つテンヤと考えています。エサが流れてくるように演出することもできれば、ボトムについたエサのように演出することもできる。こういった演出は他の釣法では難しい。潮の流れ、魚の活性に応じてウェイトを調整していけば、レンジ調整もできるし、喰わせていける。潮が流れずに魚の活性が低い、という状態でも釣りきれるのはテンヤ。緩い潮をいかすようにして使えるのがテンヤでもある。すべての水深、すべての状態にある魚を釣りきっていくことができるのが強みだし、巻きテンヤという攻め方もありますしね」。
最大の魅力は誰もが
簡単に楽しめること。
「誰でも手軽に楽しめる、これが鯛ラバの最大の魅力。気軽に挑戦できるし、いいサイズの真鯛を狙える。そういう意味では鯛ラバはもっとも確率が高い釣りかも知れない。初めての人でも落として巻くだけで喰ってくる。基本は巻きの釣り。縦でも斜めでもそれは同じ。巻いて追わせて口を使わせる釣りです。反面で魚が追ってくる活性がない限りヒットさせることは難しくなる。潮が通っているとき、ベイトを追っているときなどに非常に有効な釣法といえるでしょう。ラバー、ワーム、ネクタイなどのパーツやカラー、ウェイトの選択肢が広いので、ボリュームアップしたりダウンしたりのチューンも容易。真鯛に合わせる能力が高いのも武器ですね」。
使い方は変幻自在。
注目のニュースタイルジギング。
近年、にわかに注目を集めているマイクロジギング。極細PEラインとタングステン製の小型ジグを使ったニューメソッドだ。このマイクロジギングも真鯛ゲームの一端を担う重要な柱となる。「タングステン製ジグが一般化してきたことが人気の理由ですが、細いPEラインとの組み合わせで自在に操ることができるようになったのもブレイクの一因。さほど強くない泳ぎ。そんな動きを真鯛は好む。シルエットの小ささと相まって、マイクロジギングの激しすぎない動きは真鯛に効果的です。ただし、これも注意したいのはある程度の真鯛の活性を必要とする釣法だということですね」。
シンプルに楽しむもあり。使い分ける楽しみもあり。
「一つテンヤ、鯛ラバ、マイクロジギング、すべてを同じタックルで使うことが出来る。ここが真鯛ゲームの魅力でもあります。まずはロッド一本でスタートできる。基本はスピニングタックルです。PE0.6号、0.8号といった非常に細いメインラインとリーダー、シンプルなリグを使い、ドラグを駆使して大鯛と渡りあっていく。大きい魚を強いタックルで取っていくという基本概念を覆し、ライトなタックルだからこそのフィネスな釣りを展開できるところが武器です」。
ワンセット、というならスピニングタックルがおすすめだが、より釣り込んでいくためには、ベイトタックルも含め最終的には複数タックルが必要、と田辺氏。
「投げたいから、軽いリグを使いたいから、という理由でスピニングタックルを握る。ディープゾーンをヘビーウェイトリグで攻めたいからベイトタックルを選択する、というように魚に合わせてタックルを持ち替えて攻めていくのが理想。真鯛には状態があり、その状態に合わせられるタックルがある。一つテンヤ、鯛ラバ、マイクロジギングそれぞれに面白さがある。これらをひとつと捉え、真鯛ゲームとして楽しんでいくわけです」。
戦術的なタックルセレクトが真鯛への近道。
「真鯛の状態に合わせて釣りを展開していくのが基本です。細かく考えればいろいろありますが、まずはシンプルに真鯛の活性を判断基準にするとよいでしょう。鯛ラバ、マイクロジギングなどの巻きの釣りは、基本的に真鯛の活性があるときに特に有効。展開が早いし、目立たせやすい。活性が高いときに使えばより効果を発揮するわけです。これに対して一つテンヤはバーサタイル。万能です。活性が高いときはもちろん、活性が低いときでも軽いリグを使ってフワフワさせて喰わせることもできる。ボトムで待っていても喰わせることができる。この状況対応力の高さが武器です」
ただし、と田辺氏。
「海は常に変化していく。いまは巻き系がいい、いまはスローダウンということが起きる。両者はクロスするところもある。一日のなかで真鯛の活性を判断してアジャストしていくことが大切だし、ここが真鯛ゲームの面白さです」。
目指す世界そして船長へのお願い。
真鯛船の船長にも「真鯛ゲーム」を理解してほしい。ドテラ流しか船を立てるか、だけでは難しい場面がある。潮の流れが緩くて浅場という環境ならドテラ流しでもまったく問題はない。ただ、ポイント次第ではあるがそれ以外の環境で鯛ラバ、マイクロジギングだけでなく、一つテンヤまで視野に入れ、真鯛ゲームとして突き詰めていく条件としては、パラシュートアンカーはマストアイテムだと思う。
さらにもう一点。巻きの釣りと落としていく釣りを同時にやると釣りがぼやけてしまう。同時にやると一つテンヤは不利になる。喰わなくても追う、という状況を作ると、その後に喰わせるのが難しくなるし、レンジもぼやけてしまうことがある。船長が状況判断をして釣り方を提案してくれるのがベスト。思い思いにやりたい気持ちはわかるが、釣りを壊してしまうくらいなら、乗船者全員で釣りを揃え、船長の指示に従って釣りを展開する、というのが一番の理想だと思いますよ。