ペンシルベイトの金字塔「ラウドノッカー」のすべて・前編 伊豫部健×小野湖(山口県)他

全米ツアーから帰国直後の強行スケジュール!

8月中旬、夏真っ盛りの頃、伊豫部健さんと取材班は山口県へと向かった。

米国ツアーからの帰国直後、わずかな国内滞在期間で多忙を極める最中での釣行。真っ黒に日焼けした伊豫部さんの笑顔からは、疲れというものは微塵も感じない。ひとことで言えば超人。その人並みはずれた体力があるからこそ、我々は国内外で活躍する伊豫部さんの姿をいつも見ることができるのだ。

「さー、今回も始まりますよ、フィッシュイット…あ、違ったね、ワハハハハ」。

今回も絶好調。楽しい旅が始まりそうだ。ところで、ここでお気付きの方もいるだろう。

「8月の釣行がなぜ10月に公開されるのか?」。

夏と秋、水中の季節は大きく異なるのは事実。しかし、トップ画像で伊豫部さんがバンタムシリーズのペンシルベイト・ラウドノッカーを手にする姿を見て何かに異変に気付いている方もいるだろう。レインウェアを身につけ、背景はどんよりとした曇天。そう、今回の取材日を挟んだ数日間は、真夏とはいえ、実に秋に近いコンディション…というよりむしろ秋は始まっていたのだ。

10月第1週から第4週までお届けする当釣行全4回を読み終えた時、アナタは伊豫部さんから秋の釣りに関して何らかのヒントを得ることになる。ぜひ今後の釣りの糧にしていただきたい。

「釣りって、仲間が大切。本当に本当に感謝!」

現場に到着するや、ケースから取り出したバンタムロッド各種をセッティング中。7フィート以上のモデルはグリップ部がジョイントとなる。伊豫部さんは1本1本、リールシートとガイドが一直線になるように見定める。竿のポテンシャルを100%発揮すべく、万全の準備は怠らない。

当釣行は取材日こそ事前に決まっていたが、実は取材場所が決定したのは前々日のことだった。当初予定していた場所は移動手段から宿泊場所までの全てが壊滅状態。そう、先にもお伝えした通り、8月中旬とはお盆の最中だったのだ。

「釣りって仲間が本当に大切。休日を返上して、協力してくれた山口県ローカルの仲間には本当に本当に感謝している」。

超渋滞必至のため、愛艇を地元愛知からトレイルして来ることも困難なのがこの時期。使用ボートから投宿先、移動手段まで仲間があってこそ実現できたのが今回の釣行。帰国直後、タックルを最小限にまとめて身体1つで満席の新幹線に飛び乗り、当日を迎えられたのも仲間たちのおかげ。取材班共々感謝しきりだった。

実釣は移動日の翌日早朝からスタート。毎回2日間に渡り行われる当連載の初日は、山口県を代表するリザーバーの1つとしてその名を知られる小野湖へ。エンジンの使用は禁止、機動力はエレキのみに限定。仲間に借りたアルミ艇は、伊豫部さんとしては初の利用となる前後エレキ仕様だった。

「なにこれ!? スゴい! 速っ!! 何だか釣りをする前から楽しくなっちゃうね!」。

米国ツアーでは大排気量のバスボートを駆り広大なフィールドを渡り歩く伊豫部さんだが、また新たなチャレンジにテンションも高め。また新たな一面を見ることができそうだ。

このラウドノッカーのカラーは既存10色の1つ「オイカワ」。トップ画像で伊豫部さんが手にしているのは、「チャートギル」、「マットローア」、「スキニーハス」の2017新色の3色。さらに戦力を増強!

バス釣りは、ボートに乗る前から始まっている!

「今回はコイツたちが味方になってくれそうな気がする」。

前後にエレキが装着されたアルミ艇に乗った伊豫部さんはそう言ってラインの先にペンシルベイトのラウドノッカー、ポッパーのチャグウォーカー、そしてノイジー系のトリプルインパクトを結んだ。いずれも水面をテリトリーとするトップウォータープラグ。これらを状況に応じて使い分け、サブとして水中を探れるクランクベイトのマクベス、「コマック」ことマクベス50も準備した。なぜ今回はトップウォーターが軸になると読んだのか。当日出船するスロープへと到着する前、小野湖の水面が見渡せる道路に差し掛かった時、こう語っていたことが思い出される。

「かなり減水してるね。しかも、下流は濁ってるんだ、なるほど」。

小野湖には流入河川が2つ存在。ボートを昇降するスロープは中流域に位置して、上流に2つのバックウォーター、下流には深場を控えたダムサイトというのが大まかな地形。現場に着くやスロープ周辺も濁りを蓄えていることを知る。伊豫部さんは一路、バックウォーターへと進む。水面を見れば、夏の風物詩とも言えるアオコこそないものの、水中には細かな粒子が見える。よもや既にターンオーバーか。表層の水が冷やされて底へと沈み、それまで水底にあった状態の良くない水が押し上げられたのかもしれない。水はけっして良い状態ではない。

伊豫部さんの小刻みなロッドワークと共に、水面ではラウドノッカーが右へ左へとフレキシブルにドッグウォーク。その美しい軌道に目を奪われるが、後方に残された泡の存在が気にかかる…。

流入河川を進むと、川幅は徐々に狭くなり、水深も浅くなっていった。進行方向の左右には、小さな流れ込みがいくつか存在した。枯れた場所もあれば、微かな流量の場所もある。伊豫部さんはラウドノッカーを軸にそのいずれをも狙っていった。

「枯れていても地形変化はあるからね」。

新たな水が流れ込むことで本流の流れに変化を与える。しかし、それだけがバスの着き場ではない。場所によってはボトムも微かに見えるほどの浅い水深。地形変化に潜む個体もいるはずと読む。とある流れ込みでは、水面に細かな泡を伴った水が流れ込む。本流の流れとぶつかることで、ちょっとしたマットカバーを作ったエリアもあった。

ココ、あると思いますワ」。

一見、悪条件にも思えるが、実はそこが盲点。泡は水面のみに膜を作っているだけで「水中には何ら影響がない」のだという。むしろ、その水面フィルターが時にシェードを形成して、バスの着き場となっているのだ。

「やっぱり出た! けど、出方がしょぼかったなぁ…あれじゃ乗らない」。

水面を激しくドッグウォークしながら泡をさらに攪拌して増やす。静まり返る流入河川の上流域にエコーする独自のノッキングサウンド。ラウドノッカーのポテンシャルにバスも観念したのだろう。しかし、活性が低いせいなのか、水面への出方に勢いがない…。流れが激しくなる最上流へと到達。水深が浅く、ボートでそれ以上進むことができないエリアまで進んでも、魚の姿を確認することは稀だった。ようやく見えたバスの姿に、伊豫部さんはこうコメント。

「あそこまで行って、バイトが1回。見えバスもいたけど、背中に白カビって…ずっと水が悪かったことは明らかだね」。

上流に進むに従って、確かに水の透明度は増した。しかし、想像以上に水の状態は良くないようだった。

一方の流入河川では、流れによって岸際を削られたこんな地形が各所に。「この地形変化は、水が流れていようとなかろうと続いている」。また、本文中にもあるように水面の泡はけっしてマイナス要素ではない。

遠征アウェー、かつ時間は短い。選択眼が肝要

画像右側に干上がった地形が見えるように、そこは広大なシャロー。小魚を追い回すフィーディングのステージとなっても何ら不思議はない。しかし、バスはおろか小魚も見かけない…。

「さっき岸釣りアングラーと話したら、ここ最近はもっと水が少なかったって。ようやく流れが出た最上流で反応なしって、これはかなり手強いね。バイト云々の前に、小魚を含め生命感がない」。

2つの流入河川のうち、前情報で有望とされていた方をまずは攻めたが、想像以上の「デスレイク」ぶりに驚きを隠せない。

「もう1つの方が気になるね。ここは要所要所を撃ちながら下って…ていうか、早く向かわないと」。

ここ小野湖はスロープ利用時間が9時から17時と短く、この時点で時間は既に正午に近い。「今回、下流は捨てる。濁っているのは明らかだし」と、もう一方の流入へと向かうことにしたのだった。

「今回、迷ったのがラウドノッカーのタックル、特にラインだね」。

その流入に入るや広大なシャローが広がった。伊豫部さんはバンタム170Mでフルキャスト。ラウドノッカーを存分に水に絡めて、躍動感のあるドッグウォークを演出。ハイギアのメタニウムDC XGがトゥイッチによって微かにたるんだラインを即座に回収して次のトゥイッチへと、切れ味鋭い連続動作をアシストする。

「ラインはナイロンの22ポンド。PEにするかどうか悩んだんだよね」。

その辺りの詳細は次回解説してもらうことにしよう。

ではここで伊豫部さんがラウドノッカーをどう動かしているのか、動画でご覧いただきたい。

ロッドを水面方向に構え、下方向にチョンチョンとアオり、たるんだラインを随時回収。水面のラウドノッカーは首を右へ左へとアクティブに振り続け、時に泡をまとい時にスプラッシュ。水面で小魚が逃げ惑うアクションを演出しよう。

突然の雨、肌寒い朝夕のマストアイテム「レインウェア」

伊豫部さんが着用しているジャケットは「XEFO・GORE-TEX®エアリアスジャケット」でカラーはブラック、チタングレー(=写真)の2色。パンツは「XEFO・GORE-TEX®エアリアスパンツ」でカラーはブラック(=写真)、タングステンの2色。いずれもM、L、XL、2XL、3XLの幅広いサイズ展開がうれしい。

広大なシャローを偏光グラス越しに見渡すと所々に水面が色濃く見える。水中に何かが存在している。伊豫部さんはその何かの真上や周辺をラウドノッカーが通過できるよう、ロングキャストとロングストロークでリトリーブコースを選ぶ。状況さえ良ければ、ここで盛んにボイルが発生するであろうフィーディング場所。いつバスが水面に出ても不思議ではない。なぜかそう感じていたのは、朝から曇天によるローライトは続いていたがさらに空が暗くなり、今にも雨が降り出しそうだったからだ。

シャローエリアを過ぎ、上流方向の川幅が狭くなるのが確認できる頃、小魚がライズしているかのように水面に雨粒が落ち始めた。取材艇から伊豫部さんの姿を遠目に見ると、既にレインウェアを纏っていた。天候の変化を瞬時に捕らえ、即座に次の好機に備える。それもアングラーとして大切な部分なのだ。

後に話を聞けば、今回着用のレインウェアは伊豫部さんにとって「遠征用」なのだという。

「ヘビーレインはまた別のレインウェアを着るけど、今回みたいに身軽に遠征したい時に便利なのがコレ。軽くて快適だし、動きやすい。それにコンパクトに収納できるから、雨じゃなくてもちょっと肌寒いかなって時にサッと着ることができるよ」。

軽さにこだわり、防水性にも優れた透湿防水性素材を採用。立体裁断で身体を動かしやすく、高いフィット感の袖口は雨風をシャットアウト。かがんでも背中が出ない長めのジャケット丈、肩掛けのライフジャケットを着用しても有効に使える胸ポケットなど実に高い機能が満載だ。

「最もこだわったのが、このパンツの膝パッド部分なんだ」。

魚をランディングする際、片膝を着いた瞬間そこに力が集中する。

「例えばバスボートの金具に膝を着いてしまうと、膝を痛めやすい」。

ましてやルアーの上だとしたらなおさら危険だ。パッド部分の存分な補強にも注目したいところ。プロフェッショナルのみならず、アングラーの誰にも優しいデザインがうれしいところだ。

XEFO・GORE-TEX®エアリアスパンツの膝裏には、クッション性の高い膝パッドが。小石の多い地面に膝を着いても痛みは軽減される。

それまで確認できなかった「小魚の存在」というキー

ここから先が流入河川の最上流部、いわゆるバックウォーターと呼ばれるエリアへ。水面から小魚の存在も確認。自ずと期待は高まっていく。

川幅が極端に狭くなり始めた。その分、流れも絞り込まれ、流速も若干速くなる。また流れも蛇行し始め、障害物も多く魚の着き場も増えてきた。目指す最上流部も近い。

「おっ? 今まで見えなかった小魚が増えてきたね!」。

上流に向かうに従って、全体的な水深は浅くなるが、カーブのインサイド(=内側)とアウトサイド(=外側)で極端な水深差も現れてくる。流れが当たる外側は地形が掘り込まれ、ボートが十分に通過できる水深を蓄える一方、内側は乗り上げたら座礁を余儀なくされるほどの浅瀬。地形がより明確になる分、狙い所も絞りやすい。

さらには、バスを引き付ける最大の要素となるベイトフィッシユも明らかに多くなってきた。水質に関しても、もう1つの流入河川に比べ明らかに透明度は高い。しかし、思いの外、バスの姿は見当たらない。

「あそこで(水面に)出んかったら、もう今日の釣果は厳しいよ」。

そう言って狙ったのは、それ以上ボートが進めない最上流部。超浅瀬から水が落ち込む、まるで堰のような状態を形成している場所だ。

はたして答えは出たのか?

結果は次週、お伝えすることにしよう。