カバークランク「マクベス50」爆誕 パート2        伊豫部健×五三(ごさん)川(岐阜県)

「マクベスとの差は潜行レンジだけ。そう考えていい」

パート1では伊豫部健さんが1本目の「コマックフィッシュ」をキャッチするに至った経緯を解説してきた。パート2では、当釣行のハイライトシーンをお届けすることにしよう。
なお、下の画像はコマック(マクベス50)ではなく、マクベステネシーシャッドでキャッチした1本。実釣終盤にコマックとのローテーションを繰り返した末に見事ひねり出したグッドサイズだ。

「マクベスもコマックもアクションの強さは変わらない」と伊豫部さん。だとすれば、そのサイズ以外にはどんな差が存在するのか。
「ショートキャストでの潜行深度は、マクベスが1.3〜1.4メートルだとすれば、コマックは70〜80センチ。この場所ではマクベスでボトムを叩き、コマックでボトム上15センチをトレースする感じだった。ボトムを叩いた瞬間のバイトだったね! ゴサン(=五三川)、サイコー!! ワハハハハ」。
バスは上を向いているのか、下なのか。全てはバスの本能である食欲、つまりベイトの存在に支配されていた。わずか15センチの高低差で食うか食わないか、バスの立場から言えば食えるのか食えないのかが決まったのだ。
「ま、言うても、リアクション(バイト)だったけどね」。
伊豫部さんがコマックでの実釣中に度々口にしたのがリアクションという言葉。普段、我々もよく使う言葉のひとつだが、はたしてそこにどんな意味が含まれているのか改めて検証したい。

全長50ミリ、重量は12グラム。小粒ながらも存分な重量で水中では、伊豫部さんが追い求めた理想のアクション「ウォブル6:ロール4の強い動き」を再現。濃密な経験値がはじき出した数字がそこにある。

カバークランキングとリアクションバイトの関係性

「reaction」。カタカナで書くなら「リアクション」という英単語。「反射」という意味を持つ。そこに「bite」(バイト、=かじる)がつけば、ご存知の通り反射喰いという意味だ。
話はそれるが、パブロフの犬をご存知だろうか。山木一人さんが開発したパブロシャッドのネーミングにその想いを込めたことでも知られる条件反射を実証した歴史的な実験結果だ。動物は脳を介して後天的に反射現象を身につけることもある。対してリアクションバイトは先天的に備えた抗うことのできない自然な現象。いわば、本能だ。これを伊豫部さんは自身のスタイルへと大いに活用している。
「バスは水質が濁れば濁るほどカバーに、よりタイトに付きやすくなる」。
ここまでは飽くまでも習性の範囲。伊豫部さんの濃密な経験値から弾き出された水中の事実。野生が導き出した答えだ。
「そうなると、バスは側線(魚が水中の変化を感じ取る器官)で感じた何らかの急激な変化に思わず口を使わざるを得ない」。
人間ならばとっさに手や足を出すだろうが、バスが有効に使いやすい体の部位はその大きな口。バスはけっして食欲のみで口を使うわけではないのだと想像がつくだろう。
このスタイルはここ最近で始まったものではない。伊豫部さんがバスフィッシングを知った25年以上もの前から日々の積み重ねで身に付けていったものだ。話は今から10年前へと遡る…。

マクベス(上)と比較。サイズが異なるのは一目瞭然だが、リアフックに注目。なお「Co-mac(コマック)」の「Co」は英語で”相棒”を意味。その通称にも伊豫部さんは徹底してコダワリを見せている。

イヨケンスタイル、実は「ゴサン」から生まれた!?

今からおよそ10年前の晩秋、伊豫部さんと共に霞ヶ浦水系へと訪れたことがある。この時、お題として提示されたのが陸っぱり、かつクランクベイトだった。クランク限定、さらに冬間近の季節ともなれば厳しさはなお増す。今でこそ言えるが、周囲からは玉砕覚悟とも言われた無謀な実釣だった。
とある流入河川でのこと。伊豫部さんは沖10メートルほどに立つ橋脚を前にキャストを開始した。1投、2投…10投…20投…。この間に2度ほど足下まで追ってきた魚影を発見するがバイトには至らない。時間は30分を経過。通常なら諦めて移動している頃だろう。それでも投げる手を止めずキャストは続いた。
すると、突然、伊豫部さんのロッドが絞り込まれた!
我々は今そこで、目の前で何が起きたのか理解に苦しんだ。川だけに動く魚を待つ釣りだったのか、それとも居着きが口を使ったのか。クランクベイトというルアーはファーストインパクトが強く、同じ場所に何度も投げるルアーではないという教科書的発想が脆くも崩れ去った瞬間だった。
「霞ヶ浦は甘くないと聞いていましたけど、僕の地元もそう簡単じゃないです。いるけど食わない、何かの拍子で食う。粘って絞り出せる魚っているんですよ」。
何尾かバスをキャッチした後に伊豫部さんが語ったこの言葉こそが、現在にも続くカバークランキングの根源。いわば、今回のロケ地、準地元であるこの五三川が伊豫部イズム、イヨケンストロングスタイルを産み出したのだ。

パート1でも解説したように、前後フックは干渉しない絶妙なアイに位置設定になっていることがわかる。効率の良いカバークランキングが可能だ。

国内で温めたワザが米国の大舞台で奥義へと昇華

2013年B.A.S.S.セントラルオープン第1戦ルイジアナ州・レッドリバー戦。米国ツアーで自身最高位となる第3位に入賞した当時を伊豫部さんは振り返る。
「最初から最後まで1つの倒木で8時間釣り続けたことがある。釣った魚? 40尾くらいかな?」。
まるでバスが成る木だ。驚くべきは次の言葉だった。
「クランクベイトです。同じ魚を3回釣った。その魚は日本でもたまに見かける黒斑の大きな特徴的なバスだった」。
試合中に何度となく入れ替えを行ったが、その特徴的なバスを3回リリースしたのも覚えているという。
「バスがどうしても抗えない動きって存在するものなんですよ。それが、僕の場合はクランクベイトのスクエアビルで何か硬いものに当てる起こるリアクション。考え方としては冬によくやるメタルバイブと一緒。ここだけの話…山木さんのパブロシャッドも、多分ソレなんだと思う」。
少年期から知らず知らずのうちに体の一部となっていたカバークランキングメソッド。伊豫部さんは国内と米国を区別して考えることはないが、数多くの戦いをくぐり抜けてきたことでその身に蓄えてきた経験値はより一層パワーアップを遂げたと言えるのではないか。
長年のカバークランキング集大成、現時点での「最高傑作!」と呼ぶマクベス、そしてコマック。いよいよその実力を知るハイライトシーンが訪れた。

いよいよ「コマックフィッシュ」のハイライト!!

コマックをバスが襲ったのは、岸から沖へ2メートルにも満たない位置にある斜めグイ。周囲に群がるベイトフィッシュを見つけるや、1投目でクイに当て、同場所に2投目で当てた瞬間…!

太陽光をほぼ真上から受けるド日中。何らかのストラクチャーやカバーが形成するシェードは岸際にしか存在していない。伊豫部さんは川沿いに並ぶ樹木の隙間を探しては滑り込み、上流方向へ下流方向へと隈なくキャストしては歩きを繰り返す。
その隙間がやや広めな場所へ辿り着くと、伊豫部さんは何かに気付いたのか、それまでの岸沿い方向ではなく沖方向へとキャスト。岸からは2メートルほどの地点に着水しているが、やや上流方向からのキャストで飛距離としては5メートルほどだった。鋭いキャストで1投目、そして2投目で当釣行「コマックフィッシュ」のハイライトシーンは訪れた!
「さっきまで止まっていた水が動き始めたんですよ。で、ベイトが垂直の杭と斜め杭の辺りに見えて…」。
垂直杭が作り出すシェードは小さかった。対して斜め杭は先端から根元まで全てがシェードを形成していた。
「1投目でコンタクトさせたら、ベイトがビックリしてバッと散った。で、2投目も同じ場所に当てたら、やっぱり出た!」。

「よっしゃ!! テールフックがでかくて良かった!」

獲った魚の口元をとくとご覧いただきたい。ベリー側ではなくテール側のトレブルフック、それも3本のうち1本だけが上アゴに掛かっている。

「そこにバスがいるのはわかったから、何度でも通してやるって意気込んでキャストを始めた。意外にも2投目で簡単に食ってきたよ」。
流れとベイト、そして他より広いシェードは撃つ前から伊豫部さんに確信を与えた。
「見てくださいよ、コレ。テールフック1本掛かり! リアクションで食う魚はどうしてもこうなる。だからこそ、コマックのテールフックは1サイズ大きくしたんです」。
これまでの各画像で既にお気付きかと思うが、実はコマックはベリー側フックが#6であるのに対して、テール側は1サイズ大きい#4を標準装備。ひと回り大きなマクベスの前後フックと同サイズ。50ミリのボディに対して過剰とも言えるサイズだ。
「通常なら前後#6。けど、コマックは#4を搭載しても存分にアピールする強いアクションを身に付けた。小さいトレブルより大きい方がしっかり掛かるしバレにくい」。
狙った獲物は逃さない。そのためにはタックルのセレクトにも余念がない。
「突然姿を現してひったくるようなバイトだから、しっかりと食い込ませるグラスコンポジットロッドの粘りも超重要」。
バンタム168ML-G。「G」はグラスコンポジットのイニシャル。ベイトロッドを意味する「1」に続く6フィート8インチのレングスは、投げては巻きを繰り返す手返しの良さを追求しながらもブランク全体でバイトの衝撃を吸収して乗せるアブソーバーの役割を果たす。フロロライン16ポンドもその一役を担っている。

解説しながら斜めグイに何度も何度も当て続けるが、一度たりともスタックせずかわし続けるコマック。だからこそ、カバークランキングが成立する。そして、リアクションバイトを誘発できるのだ。メタニウムDCの電子音が実に心地良い。

ここまで読み進めるとコマックはもはや絶対にカバーをかわしてくれるのではないかとの期待も高まるが、答えはNOだ。「石や木などの硬いものには強い。けど、ロープみたいな柔らかいものは苦手。それにトレブルフックが付いている以上、100%回避はあり得ない」と伊豫部さん。

「思い通りの場所へ、何度でもキープキャスト!!」

鋭いキャストと共に文字では表現しづらいDCブレーキの電子音。伊豫部さんが放ったコマックはアシ際やブッシュの隙間、護岸とクイの微かな隙間へピタリと着水。スーパー、いやミラクルとも呼べるキャストスキルを持ってしても五三川のバスはそう簡単には反応してくれない。
「どんなフィールド、どんな状況でも王道のパターンって絶対にあるんですよ。ただ、たとえ見つけることができたとしても、10人いたら1人。残りの9人が見つけるためにはどうすべきか。キープキャスト、投げ続けていくのが近道だと思う。多少ミスキャストしたっていいんですよ。思い通りの場所に入るまで何度でも投げればいいだけなんだから」。
テール側を前方にして、狙いのスポットへと勢いよく飛んでいくコマック。たとえ着水点を誤り、消波ブロックや岩場に接触しても何ら心配はない。
「そのためにテールアイは変型しにくい太軸を採用。ソルトウォーターの大物を釣ってもビクともしないパーツを搭載した」。
1サイズアップしたフックをやや上の位置で支えて前後フックの干渉を防ぎ、なおかつ強靭なエイトカンを搭載したリア部をワイルドセッティングと呼ぶ。
「小さくたって魚を確実に獲れるんだぜ、ってネ」。
その言葉を聞いた瞬間、世界の並み居る強豪を相手とする舞台で孤軍奮闘する伊豫部さんの姿が脳裏に浮かんだ。

マクベス50使用タックル
●ロッド:バンタム168ML-G
●リール:メタニウムDC
●ライン:フロロ16ポンド