カバークランク「マクベス50」爆誕 パート1        伊豫部健×五三(ごさん)川(岐阜県)

タフコンディションに頼れる弟分「マクベス50」現る

2016年、バンタムプロジェクトが始動。表層からボトムまであらゆるレンジをターゲットとしたカテゴリーにおいて、ベーシックな外観ながらも驚くべき最新のギミックを搭載した各モデルは早くも市場に定着した感がある。そんな中でも開発アングラーの個性が最も強く表れているモデルは、おそらく筆頭に上がるのは「マクベス」ではないだろうか。

「アメリカのトーナメントでも、日本の陸っぱりでも、どこでも存分に威力を発揮できるクランクベイトが欲しかった」。
伊豫部健さんが求めたカバークランキングの金字塔・マクベス。世界のどこでも臆せず「巻くべし!」の思いを込めた意欲作。1つのカテゴリーにおいて最大限のチカラを発揮するバンタムルアーのコンセプトを実に強くイメージ付けた感さえある。そのマクベスが今季、サイズラインナップを増やすことになった。それがダウンサイズ版の通称「Co-Mac(コマック)」こと、「マクベス50」だ。

一般的に小型モデルは釣れるバスのアベレージサイズが小さなフィールドでの使用を薦めるものだ。しかし、伊豫部さんはそこだけに開発の意味を求めてはいない。写真のカラーはブラックチャート。伊豫部さんが溺愛するカラーの1つだ。

産卵・直後・回復。どの魚をどう狙うべきか

取材は5月下旬、岐阜県・五三川を舞台に敢行。伊豫部さんにとって地元愛知県に次ぐ第2のホームグラウンドとでも言うべき今回の舞台。お隣の大江川とともに古くから通い込んでいる親しみのあるフィールドの1つで、今年も春前から幾度となく訪れて好釣果を叩き出しているという。
「ただ、先週くらいから若干厳しくなってきたのは間違いない」。
今年は5月ながらも気温30度を超える真夏日が続き、水中はやや酸欠気味の傾向。時期的には数と型ともに春のラッシュはもはや過ぎ去り、水中のシーズンはポストスポーンへと移行。産卵もしくは直後で気難しい個体が多い中でも、進行の早い個体は回復へと向かいつつあるファジーな時期とも言える。さらに気になるのは、周辺の田畑から流れ込む水が全域に濁りをもたらしていること。総じて現状のコンディションを表すなら「タフ」の2文字だろう。
「おそらく皆さんが強いルアーを使わない時期だと思う。だからこそ、逆にハードベイトが良い時期かもしれない」。
伊豫部さんは2本のベイトタックルにハードベイトを結んでいた。1つはバンタム164ML-Gに「チャグウォーカー」、もう1つが168ML-Gに「コマック」の組み合わせだ。はたして、なぜこの2セットをスタメンに選んだのだろうか。

全長63ミリ重量16グラムのマクベスに対して、50ミリ12グラムのマクベス50。ここでは理解しやすさを求め、それぞれ「マクベス」(上)と「コマック」(下)と呼ぶことを先にお断りしておく。

「ゴサン」で誤算は絶対に許されない

「基本的にゴサン(=五三川)はボトムに沈み物が多く、普通に中層を巻いたらハードベイトはすぐに根掛かる。元々水質は濁り気味な上に、今はさらに濁りがきついもんで」。
水中の様子は偏光グラス越しでも見づらい状況。透明度は(水面下)15〜20センチといったところだろうか。チャグウォーカーの舞台は水面となるため根掛かりの心配は皆無。しかし、コマックはその透明度より下のレンジを探ることになり、なおかつむき出しのトレブルフックがあるため通常であればリスクは高い。
「コマックはマクベスがそうであったように、カバークランキングでのストレスを極限まで減らした。誰もが臆せず攻めることができるように」。
ストレスとはつまり、無用な根掛かり。チャンスロスを減らすことが最大の目的だ。このアドバンテージについては、後ほど詳細に解説したい。2つのルアーを選んだ理由は根掛かりを極力回避することだけに留まらないが、まずはこうご理解いただきたい。
護岸際へ投げては歩き進み、時に1カ所で粘り、また投げては歩きを繰り返す。…ある時、気づけば魚を抜き上げている伊豫部さんがそこにいた。瞬時の出来事だった。

「コマックフィッシュ、1本目!」。ヒットルアーはコマックのブラックチャート。結び目から飛び出したラインの端が2本。伊豫部さんはダブルユニノットで接続していることがわかる。存分な強度のフロロライン(16ポンド)とノット、そして信頼のロッドだからこそ瞬時の抜き上げも可能なのだ。

「喰い方いいね!! ハーモニカ喰い! ワハハハ」

「ハーモニカ喰い」とは、魚の口に対してルアーを横いっぱいにくわえた状態のこと。コマックを明らかに躊躇なくバイトしたことを証明する喰い方だ。しかし、その魚体を見る限り、まだ回復前で体力のないポストスポーンの個体。なぜコマックに果敢にバイトすることができたのだろうか。謎だ。
「ポストでヤセてるね。だからこそ目の前」。
続けて伊豫部さんはこう解説する。
「完全にコマックのMAX潜行深度まで潜らせず、小刻みに巻いて止めて(浮かせて)、巻いて止めて(浮かせて)の繰り返し。ボトムに何があるのかわからないし、探り探りやっていった」。
コマックの最大潜行深度は約1.2メートル。ショートキャストなら約80センチといったところか。目に見えない水深だがそこまで到達すれば、またそこまで到達する間に何らかの沈み物があれば、たとえカバー回避能力の高いコマックだとしても根掛かりのリスクは高まる。しかし、狙いはそこだけではない。
「巻いて止めて」の小刻みな繰り返しは、コマックの浮きと潜りで多少のレンジ差こそあれ、ほぼ一定レンジをトレースしていたということなのだ。いかに体力がなく動きの鈍いポストスポーンだとしても「目の前」にコマックが現れれば簡単にバイトできる。全ては伊豫部さんの思惑通りだった。

1本目の「コマックフィッシュ!」を獲ったのはこんな護岸沿い。写真の右方向に太陽があるため、水面へせり出した樹木のオーバーハングのシェードは護岸寄りに形成されていた。「ヒットは(シェードの)明暗の境目でしたね」と。

タフコンディション下でもバイトを誘発するコマックのポテンシャルとは

「濁りがキツいことを考えたら、何らかのカバーにタイトに付いていることは明らか。その一方で、ポストスポーンは中層に浮いている。それが前提の展開だった」。
キツい濁りのため水中を見ることは不可能で、隠れ杭や岩、枝などのタテ方向のストラクチャーがあったのかは定かではないが、いずれにせよ伊豫部さんの読みが的確だったのは間違いない。
「そうは言っても、必ず答えが出るわけじゃないのがゴサンの難しいところ、特に今の時期なんだよなぁ」。
護岸際で投げては巻きを繰り返す伊豫部さんだが、その言葉通りに頻繁にバイトがあるわけではない。中部エリア屈指の人気バスフィールドは想像以上にプレッシャーが高い上に、バスは産卵から回復の狭間で実に気難しい。加えて濁りという要素もあった。
では、次のハイライトシーンへと向かう前に、ちょっとブレイクタイム。ここで伊豫部さんにコマックことマクベス50のポテンシャルを語っていただくことにしよう。

コマックが速巻きからスローまでどんなリトリーブスピードでもよく動き、カバーにコンタクトした後も常に直線軌道を描くのはマクベス譲り。では、なぜ小型化の必要があったのか。そこが知りたい。

「コマック=小さなマクベス? それだけじゃない」

ルアーがサイズバリエーションを増やす理由とは何か。一般的に、小型モデルは釣れるバスのアベレージサイズが小さなフィールド用とされることが多い。それは先にも解説した。
「コマックも確かにそう考えてもいいけど、僕はそれだけを求めて作ったわけじゃない」。
確かに国内ではフィールドによって個体の平均サイズが異なるのは事実。そう考えるとマクベスとコマックの関係性は成立すると言っても良い。
しかし、伊豫部さんが活躍する米国ツアーの舞台で、小さなバスを釣るためのルアーが必要なのだろうか。答えはノーだ。
「小さいサイズだからこそ、バイトするでかい魚も確実にいる」。
そのフィールドのベイトサイズに合わせる”マッチ・ザ・ベイト”という考え方もあるだろう。しかし、それだけでもない。
「ベイトサイズに関係なく、大型クランクで小型のバスを連発する最中、小型クランクへとローテーションした直後に大型バスが釣れることも少なくない。それは明らか」。
何がどう影響しているのか。それはバス自身に聞くしかないが、事実として存在する現象。そんな伊豫部さんの濃密な経験値がコマック開発の背景に存在していたのは言うまでもない。
「誰だって、でかい魚を釣りたいよね?」。
まさしくその通り。世の多くのアングラーが望む答えを伊豫部さんは代弁してくれたのだった。

ボトムから斜めに立つクイ(立木)の向こう側に投げて巻き始め、リップがコンタクトしても根掛かることはなく、すり抜けるかのように回避可能。何度当てても根掛かりはない。はたしてなぜなのか。

カバークランキングで、優れた回避能力を引き出すために

「カバークランキングをする上で最も大切なのが、カバー回避性能と強いアクション。そのためにはファットボディとスクエアビル(=四角形のリップ)であることは絶対に外せなかった」。
丸々としたボディは内部の空気量によって高い浮力を稼ぐとともに、リトリーブを開始するや伊豫部さんの求める「ワイド、かつ強いウォブル&ロール」を発生して強烈アピール。その圧倒的な動きの強さは「浮力とともに抵抗となり、深く潜らせない」。シャローを攻略するカバークランクの不文律がそこにある。
リップには先端の幅が広く、カバーに接触した際にまるでバンパーの役割を果たして弾むように機能するスクエアビルを搭載。また両サイドを薄肉に仕上げたサイドスラッシュエッジリップ構造によって、水を鋭く切り裂きながら水をつかむ。
「コマックを作る際に、マクベスの優れた構造を等倍縮小してみるとアクションも弱くなってしまった。ならばマクベスとほぼ同じサイズのリップを付けてみたけど、今度は水をつかみすぎてバランスを崩してしまって…」。
文字にすればわずか100文字にも満たないが、その開発過程には多大な時間と労力を要した。アクションが強く、カバー回避性能に優れるダウンサイジング版マクベスの開発は難航。開発は断念かと思われた矢先、ふとした打開案が閃いた。
「リップが水をつかみすぎるなら、テール側もしっかり水をつかめば前後でバランスが取れるんじゃないかと」。
解決の糸口は意外なところに存在していたのだった。

リップサイズは両者ほぼ同サイズ。マクベス(左)がテール側を尻すぼみにしたシェイプであるのに対して、コマック(右)は寸胴気味でテール側をカットしたかのような形状だ。

「マクベスもコマックもアクションの強さは変わらない」

「寸詰まり、ですね。結果的にテールが太くなることで水押しが強くなって、強いアクションに安定感が生まれた」。
動きに関してはひとまず完成。次はカバー回避性能をより高めていく作業へと入った。
「低重心化。ボディからはみ出るくらいのウェイトがカバーを回避して斜めになったボディを素早く復元」。
ダルマや起き上がり小法師の原理を考えれば、容易に想像がつく。しかし、ボディが短い分、マクベスのようにせり出した重心の頂点にベリーのフックアイを設定すればテールフックとの干渉は避けられない。カバー回避性能を高める以前に、強いアクションすら生み出すことも不可能。キャスト毎にいわゆる「エビ状態」になってしまっては、ストレスは溜まるばかりだろう。

ベリー側とテール側、前後のフックが干渉しないことが一目瞭然。腹側から見ると、ボディがより「寸詰まり」であることも明解だ。フックのサイズにも注目していただきたい。

フック位置、そしてサイズにも徹底的なコダワリ

「ベリー側アイの位置を前方にズラすことで完全解消した」。
O’s weight(オーズウェイト)と呼ばれるフックアイ一体成形ウェイトが不可能を可能に。これでいよいよコマックは完成か。いや、まだまだ細部を煮詰める作業は続いた。続きは本稿のパート2でご覧いただきたいが、そのハイライトシーンで伊豫部さんが叫んだひとことだけ最後にお伝えしておこう。
「よっしゃ!! テールフックがでかくて良かった!」。
上画像を見れば確かにベリー側に比べ、テール側のフックがひと回り大きく見える。これはチューニングではない。市販品の状態でこの仕様なのだ。なぜテールフックだけを大きくする必要があったのだろうか…。

マクベス50使用タックル
●ロッド:バンタム164ML-G
●リール:メタニウムDC
●ライン:フロロ16ポンド