ジジルが切り拓いたi字系の新境地 パート2 山木一人×芦ノ湖(神奈川県)

聖地・芦ノ湖で魅せたジジルと山木一人の本領

『i字系が有効な条件=魚が上を向いている時』であると、前回の記事で山木一人さんは語った。ならば、それがピタリとハマる状況であれば、ジジルは如何なるポテンシャルを発揮するのかを検証したい。昨年の10月中旬、最終プロトが仕上がったばかりの頃、山木さんのホーム・芦ノ湖で実釣した模様を振り返ってみることにしよう。

上の画像は知る人ぞ知る山木さん独自のi字系リトリーブ方法。そこにどんなメリットが存在するのかを解説する前に、スプールに巻かれたラインに注目していただきたい。そう、その鮮やかなピンクは紛れもなくPEラインだ。

山木さんが使用するラインは、メインがPEでミッションコンプリートEX8の0.5号。リーダーにはソアレアジングフロロ5ポンドを「1ヒロ(約1.8メートル)」を接続。「フロロカーボン4ポンド前後の直結でも、もちろんOK」とは言うものの、自身がジジルを使う際には必ずPEを使用している。そこにはきっとアドバンテージがあるに違いない。
「PEは強度が十分な上に、何より細径だから明らかに飛距離が伸びる」。
水中での引きしろを稼ぎ、魚に追わせる距離をより長くすることはi字系ならずともあらゆる巻き物で有効となる事実。ロングキャスト後は直線軌道を確保すべく、ラインメンディングして水面へと一直線に這わせる際、その鮮やかなカラーの変化でバイトを察知するマーカーとしての役割も果たす。フロロカーボンのリーダーを要するのは、水面に浮くPEとは異なり水に馴染んでジジルのレンジをキープすると共に、その違和感のないラインカラーが「気分的に」バイトさせやすくなるのではないかという理由がある。i字系専用に1スプールを用意することはなかなか難しいが、ここぞという場面では圧倒的なアドバンテージを発揮することも理解しておきたい。

『人差し指巻き=通称:山木巻き』が有効な理由

ジジルはわずか自重4グラムながら、タングステンウェイトの重心移動によって圧倒的な飛距離を達成。「何よりジョイントなのにカーブせずにまっすぐ飛ぶからこそ飛距離も伸びるし、精度も高くなる」。

キャストの際は「ロッドの半分以上」とタラシを長めにして、ジジルを振り子のように前から後ろへと到達した瞬間にしっかりとロッドに重みを乗せ、その反発力を利用して勢いよく前方へキャスト。俗にペンデュラムキャストとも呼ばれる方法が、ジジルの遠投性能をさらに活かす。山木さんが使うロッドはスピニングにしては長めの6フィート10インチ(=バンタム2610L)。軽量なジジルの重みをしっかりと乗せやすいテーパーが貢献していることも付け加えておこう。

そして、着水後の巻き方は『通称:山木巻き』だ。
「今さらもういいんじゃないの? みんな自由に巻けばいいよ」。
山木さんはi字系をリトリーブする際に、人差し指のみを使ってハンドルを回転。先に「ラインはフロロカーボンでもOK」とは言いながら、自身はPE+フロロのセッティングしか使わない事実と同様に、このリトリーブ方法しか活用しないところを見ればそこにアドバンテージが存在していることは明白だ。なぜハンドルノブを持たないのか。理由は動画を見れば明らかだ。

ハンドルノブを持って回す際、人差し指のみで回す際。どんな差があるのか。
「(人差し指の方が)回転半径が明らかに小さくなる。つまり回転速度にブレが出にくい」。
ハンドルノブを持って回す際、頂点から下げる時は勢い付き、上げる時に比べて早い回転になりがちなのだという。また人間の手首は常に一定の速度で巻ける構造には仕上がっていない。むしろ指の方が正確に一定のスピードを刻めるのだ。自ら試してみれば、その意外な事実に即座に気付けるだろう。
山木さんがこの釣りに愛用するのはステラ2500HGSとヴァンキッシュ2500HGS。

入力に対して素直な出力を実現する軽快な回転性能があるからこそ、人差し指のみの軽い力でもスムーズな回転を実現する。トルク重視のスピニングリールでは初速での回転を持続してしまう。リール選びにも適材適所があるため、この辺りは注意が必要だろう。

十八番のサイトフィッシング、その片鱗を垣間見た!

とある桟橋下で明らかに大型の個体を発見した山木さん。山木さんには見えているという。この1本とどう戦うのか、そこに注目したい。

タックルのセッティングはこれで決まった。それでは、実釣の模様へと話を戻そう。
出船後、山木さんは1つ目の場所へと着くなり、取材班へと質問を投げかけた。
「さて、(バスは)どーこだ?」。
岸から30メートルほど離れた位置にボートをステイ。岸際は浅く、岩が点在したボトムの地形が丸見えだが、魚がいないのも丸見えだ。が、しかし。
「いるじゃん、あそこに」。
偏光グラスをかけても、魚か岩かの判別は付けづらい。なぜなら、先にも言った通り、ボートから岸際までの距離は遠い。なぜ山木さんだけに見えるのか。
「魚を見つけようと思って水中を凝視するわけじゃないんだ。景色全体をパッと見渡した時に、目の端で何らかの変化を感じたら、それが魚」。
その変化とは動きなのか、色なのか。時折吹く微風が水面を軽く波立たせ、さらに魚を発見しづらくさせてもなお山木さんは魚の位置を把握。常人では理解し難い特殊能力。パブロシャッド編で述べた『時を捉える』能力と同様、超人的なフォースがそこに垣間見えた。さらになおもこう続ける。
「何回も投げて(ジジルを)魚に慣れさせるんだ」と言いながら、一般的なi字系とは異なり、バスがいるであろう場所からやや距離をとって何と高速巻き!「慣れさせてしまえば、喰わせ方はある」と言うや「あぁ、慣れないうちに魚に反応させちゃったよ…」と落胆。
いったい水中で何が起きているのかは、取材班にはわからない。なぜなら我々の目では魚を発見することすら不可能なのだから。推測するに、慣れさせた後の「喰わせ方」とはおそらく巻きを止めての浮上アクション。徐々に間合いを詰め、最終的にバスの不意を突くことで口を使わせてしまうということではないだろうか。推測の域を出ないが、あながち間違いではないはずだ。

表層にベイトフィッシュの存在を確認。「バスは確実に上を見ている」

夕刻迫る16時前、それまで見かけることがなかったベイトフィッシュのライズを確認。結果は言うまでもなく、出た!

この日は朝から昼を過ぎ、夕方が迫っても未だに表層付近で小魚の姿を発見することはできなかった。バスの目は上を向いているのか、判断のしようがない。わずかにでも見えれば、確信を持ってi字系を投げ続けることができるのだが…。
本来ならバスがいるであろうエリアを見つけた後に、ここぞという場面で威力を発揮するのがi字系というカテゴリー。しかし、小魚が見えないのであれば、広範囲を探るサーチベイトとしても機能する。ただし、小型であるが故に、無風もしくは微風が条件ではある。山木さんの特殊能力がなくても、投げて巻くだけで魚を呼べる。これなら誰にでも可能な釣り方だ。
先ほど、山木さんは高速巻きでジジルを操るシーンを見せたが、その際に驚くべき事実も判明した。なぜかボディは揺れず、直線軌道をキープしていたのだ! ワグロックジョイントとは何と優れたギミックなのだろうか。
「もっと速く巻きたいなら、背中の穴にラバーを1本だけ通す。これがスタビライザーの役割を果たしてくれるよ」。
プラグにラバーとは何とも奇抜な発想。さらに本数を増やせば、i字系とはまた別の役割を果たすこともできるのだという。
「5〜6本通せば、虫ルアーになる。巻き続けなくても、オーバーハング下で浮かせたままってのも有効だね」。
これから夏へ向けてのハイシーズン、ちょっとした工夫でジジルの威力がさらに発揮されることになりそうだ。
いよいよ辺りが夕方の様相を呈し始めた16時前、とある岬周りに山木さんは移動。夕マズメパワーなのか、それまでとは明らかに異なり、水面付近に浮いた小魚の群れを確認できた。ロングキャスト、そしてただ巻きを繰り返す。結果は言うまでもなく、出た。

水質とシーズンはノーリミット! あとはチャンスをモノにするだけだ!!

ただ巻きで水面直下をトレースすると、時に小魚が散るほどに状況は一気に好転。派手過ぎないアクションでバスをスレさせることもないのがi字系だが、加えて小魚の慌てた行動も喰わせのトリガーになることもある。まだバスがジジルを追う姿は確認していない…が、その時は突然訪れた!
ただ巻きでi字軌道を描くジジルを目で追える距離まで到達した時、山木さんは巻く手を止めた。同時に水面へと浮上する瞬間、微風が水面を煽った。おそらくこの風もトリガーの一端を担ったのだろう。気づいた時には山木さんがバンタム2610Lを根元まで曲げてファイトを繰り広げていたのだった。
山木さんとジジルのタッグは、またしても結果を叩き出した! 今でこそ製品版として世に送り出されているが、当時は最終プロトが出来上がったばかりの頃。10月中旬というハイシーズンと呼ぶにはやや遅く、水温低下も始まった頃の話だ。
「たとえ低活性でもバスが目を上に向けているなら、ジジルに勝機はある」。
真冬でも可能性はゼロではなく、これから訪れるハイシーズンならその可能性は実に高い。「ただ…」と山木さんはこう付け加える。
「ジジルはもちろん、表層系のルアーは一度ハリに触った魚が、次のキャストで喰うことはない。見当違いな場所に出て、喰いそびれたなら話は別だけどね。その点、中層のルアーは合っていれば何度でも食ってくる」。
数少ないチャンスをモノにしなければ次はない。その目で感じるエキサイティングなゲームこそが表層系の魅力だが、万全の準備がなければ悔しさだけが残ることも考えておきたい。
「そこもまた表層の釣りの醍醐味ではあるけどね」。
のるかそるか。ALL OR NOTHING(オール・オア・ナッシング)。今回山木さんはわずか1チャンスを確実にモノにすることに成功したのだった。

ジジル使用タックル。

●ロッド:バンタム2610L

●リール:ステラ2500HGSまたはヴァンキッシュ2500HGS

●ライン+リーダー:ミッションコンプリートEX8 0.5号+ソアレ アジングフロロ 5ポンド