ジジルが切り拓いたi字系の新境地 パート1 山木一人×高滝ダム(千葉県)

i字系のゴッドファーザー・山木一人が求めた次なる回答=『ジジル』

山木一人さんが開発を手がけ、今季発表へと至ったもう1つのバンタムルアーが『ジジル』。「カテゴリー分けするならば『i字系』」と山木さん。i字系とはその名の通り、直線軌道を実現するはずだが、なぜジョイントボディなのか? 謎は深まる。写真のジジル同様に、誰もが首を傾げたのではないだろうか。

前回までは新作パブロシャッドで実に見事な個体をキャッチした経緯を解説してきたが、ここではもう1つの新作『ジジル』にフィーチャーしてお届けすることにしよう。
が、しかし…実釣開始早々に発した山木さんの言葉が気にかかる…。
「この状況じゃ普段だったら、ジジル…というか、i字系自体に出番がない日だね」。
前日まで長く降り続けた雨が流れ込み、当日の高滝ダム全域の水はカフェオレ色であることは既に解説した通り。濁りはジジルのポテンシャルを存分に発揮することを拒むのか。はたしてジジルに勝機はあるのか…。
「(獲れる)確率はゼロじゃない。けど、限りなくゼロに近い」。
ジジルの全貌を明らかにする前に、まずはi字系というルアーカテゴリーについて基本を知っておくべきだろう。なぜなら山木さんはこのカテゴリーにおける、いわばオーソリティ。他に先駆けてi字系の有効性を世に訴え、今や定番化となるまでの道を築き上げてきたい偉大なる父とも言える存在だからだ。その濃密なノウハウは新作ジジルの開発にもちろんフィードバックされている。

i字系が釣れる理由は「水面下7センチの直線軌道にある」

i字系とはどんなカテゴリーなのか。一口に解説するならば、読んで字の如く、ルアーの軌道が「i字」のように直線であること。当初山木さんが提唱してきたi字系は水面直下の表層というレンジに限定したルアーだったが、現在ではその幅を広げ水面からボトム付近まであらゆる泳層を攻略可能なモデルも各社から登場している。とはいえ、一般的には中層より上、主に表層をトレースするルアーと考えていいだろう。では、なぜ表層であるべきなのか。かつて山木さんはこう語ったことがある。
「ズバリ言うなら、水面下7センチまでの直線軌道」。
この「7」という数字が意味するものとは何か。どうやらバスが中層から見上げた際のi字系の見え方が起因するようだ。i字系に限らず、表層系ルアーを見上げた際、水面の裏側にもう1つのルアーのシルエットが見えることをご存知だろうか。トップウォータープラグ使用の際、時に的外れな位置でバスが水面を割った経験がある方も多いのではないか。それこそが表層系ルアーの幻影。一説には1つのルアーを2つ以上に見せることでベイトフィッシュの群れをイミテートしているとも言われる。しかし、山木さんが着目しているのはそれだけではなかった。
「7センチ以上ではルアー自体がバスからしっかり見えすぎてしまう。直下こそが曖昧なシルエットを醸し出せる」。
魚から見破られにくいゾーンこそが水面下7センチまでなのだという。「7」という数字を明確に語るには理由がある。何と山木さん自身が水中に潜り、その目で計測したというのだ!
山木さんの発言を裏付ける事例として、フライフィッシングの世界には『サーフェスフィルム(=水面と水中の境目)直下が魚に見切られにくいゾーン』として認知されている事実がある。水面で発生する光の屈折を利用して、水面直下にあるフライの存在自体を茫洋とさせ違和感を与えないうちに食わせてしまうというのがその仕組みだ。水面に近過ぎれば光の効果を利用しづらく、離れ過ぎてもまた然り。フライであればその存在自体が小さいため、光を利用するには水面により近く直下2〜3センチとも言われる。ルアーであれば、おそらくは山木さんが言う7センチが妥当だろう。
「絶妙なゾーンをキープし続けるからこそ、i字系は威力を発揮する」。
バスプロとして知られる山木さんだが、そのバックボーンは桁外れ。バス釣りに限らず、海やトラウトを始めあらゆるルアーフィッシングに造詣が深い一方で、フライフィッシングはもちろん、果てはエサ釣りまであらゆるフィッシングスタイルにも精通している。全ての濃密な経験値は、全ての釣りにクロスオーバーして真価を発揮。ジジルをはじめとする全てのバンタムルアーにフィードバックされていることはもはや言うまでもない。

直線軌道だけではもはや現代バスには通用しない(!?)

ジジルの全長は70ミリ、自重は4グラム。軽量ながら重心移動機構を内蔵することで、存分な飛距離を達成。フックアイは他の表層系バンタムルアー同様にせり出し「小さいフックでもハリ先が口に近づく」ことでより深いバイトを追求。ここでやはり気になるのはそのジョイント部、そしてテール部だろう。

水中に魚の姿を確認しながらの釣りをサイトフィッシングと呼ぶことはご存知だろう。この釣り方を得意技の1つとして、まるで魚と会話をしているかのように次々とキャッチしていくのが山木さんというプロフェッショナルアングラー。かつてはその武器としてワームを用いていた時期もあるが、フィールド事情に応じていつしかハードルアーへと手駒は変遷。公式戦26勝という偉大な記録は、その多くがシャッド、そしてi字系でもたらした戦果なのだという。
「多くのアングラーがi字系を使ってくれるようになったのは実に喜ばしいこと。でも、その一方でどんなにスレにくいルアーとはいえ、見切られることが増えてきたのも事実」。
水面直下を泳ぐi字系の背後にピタリと身を寄せるもバイトには至らず、船べりや足下まで追ってくるもののUターン。魚の姿を確認できるという意味ではエキサイティングではあるが、食わせることができなければ悔しさだけが募る。釣り人なら『どうにかして食わせたい!』と思うのは必然だろう。
「見切られないようにするには、何とか口を使わせるにはどうすべきか。追究してきた結果がここにある」。
いよいよ新作ジジルの全貌を明かす時が来た。アクションの中核を成すジョイント部について語ってもらう前に、まずはテール部からご覧いただきたい。

テール側に浮力を確保して、バイト寸止めの完全解消へ!

ジジルのテール部にズームすると、テール側アイ周辺の独自の構造がよくわかる。若干上向きに仕上がっているのはなぜだろうか。

テール側アイには人工物のファイバーがチューブで固定されているのがわかる。ボディに対して上、つまりは水面方向に傾いている。注意深く見れば、アイ自体もわずかだが水面方向だ。一見、ポッパーに装着されるフェザーと同様に『移動距離を抑える抵抗源』と『アピール力を高めること』と考えがちだが、その目的は若干異なる。
浮力の確保が第一の目的。泳いでいる最中はもちろん、止めた瞬間から完全に浮上するまでの間、やや尻を上げた状態をキープ。尻下がりの姿勢では魚に見切られてしまう」。
魚は先にも述べた通り、i字系の直線軌道に魅せられ背後にピタリと寄り添うことが多い。となれば、テール側こそが魚に最も近く、その眼を欺くことが急務。ジョイント部を介して前側ボディが小さく、後側ボディが大きいとあれば当然、後側が重く沈みがちになる。上向きに装着されたファイバーが孕むエアによって浮力を確保して沈みを防いでいるのだ。
後に山木さんが使用するジジルを見ると分かるが、そのファイバー量は市販品に比べなぜか少ない。本数を間引くことで最低限の浮力を確保すると共に、各繊維の自由度を高めアピール力をアップしているのだという。この辺りはジジルを使い込んだ後に、各自調整すべきところだろう。

直進軌道と不意打ちアクションの決め手=ワグロックジョイント

ジョイント部を介して、前部と後部それぞれのボディが絞り込まれ、自由度は高い。フレキシブルに動くことは推測できるが、目的はそれだけではない。

i字系が直線軌道を目的とするのであれば、気になるのはなぜジジルにジョイント部が設けられたのかということだ。ジョイント部を介するルアーといえば、代表的なカテゴリーがビッグベイト。ただ巻きするだけでボディの前側と後側を交互にフレキシブルに動かして、実に艶かしい動きを見せることで知られているだろう。i字系がボディをくねらせてしまえば、もはや単なるジョイントルアーでしかない…が、しかし、ジジルを泳がせてみると、なぜかボディは一直線で音もなく進む…。まるでマジックショーを見ているかのようだ。
「ボディの前後半がほぼ同じサイズのセンタージョイントだと、動き過ぎてしまう。後側ボディに対して前側を短くしたこと、それとテール側の浮力を利用した独自のジョイント構造が直線軌道を可能にした」。
それが『ワグロックジョイント』。ジョイント部の前側には垂直方向に柱を立て、後側と繋いでいるのはエイト環。他に比べよりフレキシブルな動きを可能にするかのように思えるが、目的はそこだけではない。前側はラインで引かれるため上を向き、テール側は前段で述べたファイバーテールの浮力でこれもまた上を向く。つまり、ジョイント部を中心に前側後側のボディが水中でV字に固定されながら直線軌道を描いているのだ。驚くべき事実がここにあった。

巻きを止めた時こそ、ジジルの真価が問われる

ワグロックジョイントを上から見ると、この通り。時にジジルがi字系ならぬ「J字系」とも呼ばれる所以は、首の曲がり角度に由来している。

巻いて止めた瞬間、質量の大きい後部ボディが小さい前部に追突することで、ジジルが首を曲げると山木さんは解説。ルアー自体が自発的に生み出すアクションに、これまでのi字系では反応しきらなかったバスの口を使わせてしまうのだ。

パブロシャッドでは結果良好! はたしてジジルでは?

高滝ダムに流れ込む流入河川の1つが小敷谷川。平水時であればボートで踏み込めぬ最上流域まで遡るも、バスの気配はない…というより魚が見えるような水の透明度はない。
ジジルの類稀なるポテンシャルを理解していただけだろうか。それでは、話題を実釣編へと戻そう。
冒頭で山木さんは「i字系自体に出番がない日」と語ったが、それは何を意味しているのか。答えはこうだ。
「魚が上を見ているのであれば、季節を問わず使うのが表層のi字系。この濁りで魚は浮かないことに加えて、水面近くに小魚も見えない」。
水質が濁れば魚種を問わず魚は危険を回避すべくストラクチャーにタイトに着くと言われる。だとすれば、水面付近の表層に小魚が浮くこともなければ、それを狙うバスも現れない。打つ手なしなのだろうか。苦肉の策で山木さんが取ったのは、斜め護岸の岸ギリギリを狙う戦略だった。
「透明度は10センチ程度もないドチャ濁り。バスが岸際にいることを前提として、故意に派手な着水音を立てて気づかせたらそのまま50センチ程度巻いてから浮かせてみたんだけど…」。
魚からジジルを発見しづらい現状を打破すべく、岸際ギリギリで敢えて音を立てるという奇策に出たが、そう易々と答えは出ない。その発想力には毎度驚かされるが「無理がある釣り」は、魚側にとっても喰いつくには無理があるのだろう。
では、ジジルがハマる好条件「魚が上を見ている時」であれば、はたしてどんな釣りが展開されるのか。次回は舞台を変えて、実釣の模様をお届けすることにしよう。

ジジル使用タックル

●ロッド:バンタム2610L

●リール:ステラ2500S

●ライン+リーダー:ミッションコンプリートEX8 0.5号+ソアレ アジングフロロ 5ポンド

PEをメインラインにフロロリーダー「1ヒロ(約1.8メートル)」を「イモムシノット」と山木さんが呼ぶパロマーノットの変形版で接続。なぜPEなのか、なぜフロロリーダーなのかはパート2で解説予定。