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ベタ底で自信をもってアタリを待つ
百合野崇が体現するクロダイ釣技の現在形

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素早く底に馴染ませる高速スルスル

高速スルスルがさく裂した百合野さんの予選3試合目。

「ベタ底でしか喰わない」そう判断した百合野さんの今大会の仕掛けは00号のウキを用いてナビ下にG3もしくはG4を2つ打った。ハリまでの間はノーガンである。キャストしたウキは着水後に水面で30秒ほど粘り、仕掛けが馴染むとジワジワと沈んでいく。ウキには仕掛けを持ち上げるだけの、ある程度の浮力が必要。でないとミチイトがウキ穴を抜けにくく、軽い仕掛けを落とし込みにくくなる。
イメージでは沈んだウキはサオ一本分のタナに留まり、ウキからナビまではタテにイトが抜け、ナビからネリエサまでのハリスは真横になって沈降。ナビ下に噛ませたG3×2のシズはネリエサと同等の重さと考えており、ウキからナビまではタテに直線、ナビからネリエサは真横になることから仕掛けはL字を描いて高速で海底に届けられる。この釣り方を百合野さんは「高速スルスル」と称した。
ナビが着底すると海底にハリス全体を這わせる格好になる。ハリスの間にガン玉を打たないのは、ナビから先のハリスは底をフワフワと漂わせたいからだ。こうしてエサの喰い込みを、より良くするのである。

決勝で使用した百合野さんのウキは「鱗海 ZEROPIT 遠投SP」。ミチイトのPEに直で通すスタイルだ。
強風対策として素早く上潮を切るためにG7相当の板鉛を貼り付けて浮力を微調整しており、
ナビは「FIRE BLOOD ナビストッパー」。
その下に極小サルカンを介してハリスを結ぶ。
ガン玉はこのサルカン下にG3もしくはG4を2つ打って高速スルスルを演出した。

「今回の試合は〝地形〟を釣るよりも〝潮〟を釣ったほうが、いい釣果を得られました。カケアガリや根のキワではなく、沖の砂地を重点的に攻めて、底潮が動いて仕掛けをもっていくような時に喰いが立ちました。予選も決勝も遠投での釣果ばかりです。水温が下がって喰い渋る状況だったので、エサはほとんど動かさず、小さなアタリを取ったほうが大型のヒットは多かったですね」

サオ2本、3本という深場が隣接する九十九島の磯。
208もの島々を縫うように流れる潮ははっきりとせずフラフラとしている。
海底に的確にポイントを作り上げることが肝要だった。

予選3試合目ではフラフラとしていた潮がほんの数分だけ動き出す時合に集中。たて続けにアタリをとらえる。それもPEでなければ現われなかったであろう、チョンとラインが弾かれる小アタリを合わせて、50cmクラスを2尾も手にした。対戦相手の生駒浩史さんと4尾対4尾の接戦となったが、重量差で百合野さんは決勝の舞台に勝ち上がった。

PEラインらしい小さなアタリを取って50cmクラスを手中にした。

エサを打ち返すインターバルの重要性

クロダイ競技に精通するトーナメンターは多様なエサを使うのが特徴のひとつ。オキアミだけでも生、加工、色付きと3、4種。ネリエサも色違い、成分違いで3種。コーンやムキエビも欠かさない。多種多様なエサを用意するのはエサ取り対策をはじめ、偏食するクロダイの当たりエサを見つけるため、クロダイの目先を替えアタリを持続させるといった意味もある。2位の横路さんは2試合目で5尾のリミットメイクを果たし10尾の釣果をあげる大釣りをしたが、この時は数種のエサをローテしてアタリを継続させたと話す。
そして百合野さんの当たりエサは黄色いネリエサ。かなり軟らかくネリ込んだもので、ハリ落ちしないような粘りを出すべく2種をブレンド。これをハリが隠れるかどうかのサイズで小さく付けると効果があり、小さくまとめやすいように短軸のグレバリ(6号)でかつハリ先が立ちやすい早掛け型(ストレートタイプ)を使ったのもこだわりだ。

多種多様なエサを使うのがクロダイトーナメンター。
今大会の百合野さんの当たりエサは2種をブレンドして軟らかくネリ込んだ黄色いネリエサ。
これをなるべく小さくハリ付けする。

クロダイ競技はサシエを打ち返すインターバルの取り方も釣果に大きく影響する。判断材料は第一にエサ取りの有無。すぐさまエサが取られてしまえば、打ち返す回数が多くなるのは当然のこと。今大会のように低活性な状況では、一流しのインターバルは長くなる。百合野さんと予選3試合目で対戦した生駒さんは、正確な間合いをつかむためにストップウォッチを使用。1回の投入を5分と決めていた。となると前後半180分の予選では、およそ36回の投入しかできない。エサ付けから投入の段取りをスムーズにこなせたとしても、おそらく投入回数は30回に満たないはずだ。

ストップウオッチで投入時間をきっちりと計る生駒浩史選手。
まるでマシーンのように釣りを組み立てる京都のグレ釣り名手である。

百合野さんもまた投入回数は少なかった。決勝で敗れた横路さんは敗因のひとつを「投入時間の差」と振り返っている。
「手返しを少なくし、アタリを待つ時間を長く取るのは勇気がいることです。百合野選手は確信を持って仕掛けを長く入れていたと感じます。それが私との決定的な違いで、釣果の差となったのではないでしょうか」


横路さんは予選2試合目で前半早々に5尾のリミットメイクを果たし、後半合わせて10尾の釣果をあげた。
圧倒的な爆発力はサシエのローテーションもキモだった。

もうひとつ違いを挙げるとすればコマセワークだろう。横路さんは投入毎に先打ちと追い打ちでサシエをサンドイッチにしてコマセを多めに撒いていた。一方の百合野さんはコマセの先打ちが少ない。サシエの着水点に3~4回外さぬようにピンスポットで追いコマセをかぶせるのを基本とした。

投入時間が長く、信念をもってアタリを待った百合野さん。
イトと穂先の変化に集中し潮の動き出す瞬間は特に集中力を高めていた。

「ネリエサは自重があり着水点のほぼ直下に沈んでいきます。サシエの周りに正確にコマセを漂わせるためにウキではなく、エサの着水点めがけて追いコマセを打ちました。なにせエサ取りは少なく、アタリが出るまで時間を要します。チヌが競い合ってエサを追う、高活性な状況であればコマセを先打ちして多めに撒いて活性を上げますが、低活性だと逆効果になることも多いです。だから追いコマセを主体に釣りを組み立てていました」

春の柔らかい日差しに照らされて浮かび上がった本命。
決勝終了まで残り30分、長い沈黙を破った1尾だった。

クロダイはエサが効くまでに時間を要す。予選は90分ハーフ、決勝は60分ハーフという短時間だ。寄せエサをあちこちに投入してしまうとポイントが分散し自滅することも多い。低活性な状況であればなおのこと注意が必要。だからこそ百合野さんはクロダイがサシエを見つけやすいような1点集中型のコマセワークを意識的に心掛けたのである。そして横路さんが釣果ゼロだったのに対し、百合野さんは2尾1,456gを釣りあげて表彰台の頂点に上り詰めた。


1尾釣れればクロダイが寄っている証拠。取り込んだ後もコマセを入れ続けて群れを散らさないようにする。
これも短時間で釣果を持続させるための技のひとつ。

喰い込みを取るか、素早く浮かすか

百合野さんのウイナーズタックルを挙げると、予選3試合は「鱗海スペシャル」1-530を使用。その理由は第一に穂先が柔軟で喰い込みをさまたげにくいことだ。このサオは細身柔軟な調子ゆえクロダイを怒らせずにじわじわと寄せられるのも特徴。1号をセレクトしたのは境界線を越えぬように、状況によっては強気のやり取りが必要になるためだ。
そして決勝では「NEWリンカイ アートレータ」0.6-530に持ち替える。高反発ながら滑らかに曲がるこのロッドもクロダイが暴れにくい。曲がりに素直に追従し、素早く浮かすことができる、よりトーナメンター向きの1本といえ、決勝の大一番で貴重な1尾を確実に取ることを念頭に置いたセレクトである。ちなみに2位の横路さんも、3位の内海さんもこのロッドで勝ち上がった。

NEWリンカイ アートレータが滑らかな円弧を描く。
魚を素直に素早く浮かす06とは思えないパワーも魅力。

リールは「BB-Xハイパーフォース3000DXXG S RIGHT」。遠投主体の釣りになるとリールは仕掛け回収の早さに重点が置かれる。短い試合時間での手返しを考えれば当然のことだろう。さらにはドラグ性能のよさも特筆すべき点と百合野さんはいう。
「PE使いは高切れ防止にドラグは緩めに設定します。もちろんサオの角度を立て直す時はレバーをオフにします。SUT機構は物理的にいって魚が暴れにくいのは間違いありません。でも私の場合やり取りのほとんどはドラグで対応しています。ハイパーフォースのドラグ性能はとても信頼性が高いです」

居食いアタリをとらえた百合野さん。サシエを底に安定させ、待ちの時間を長くして掛けた。
銀ピカに輝くコンディションのよい魚だ。

大知さんの教えを自身の釣りに昇華させ、強力なアイテムで洗練させた百合野さんは現在37歳。トーナメンターとしてまだまだ脂が乗っていく段階である。「令和」という新時代のクロダイ競技を体現するエキスパート。その進化はまだまだ止まらない。

ファイナリスト27名の平成最後の熱戦は幕を閉じた。
来年はどんな技の競演が見られるのだろうか。

百合野崇
シマノインストラクター
百合野崇(ゆりのたかし)

1981年生まれ。
山口県下関市在住。広島湾をはじめとする瀬戸内海ほか、九十九島や五島列島など九州各所にも足しげく通うクロダイ釣りのエキスパート。

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