へら釣り名手の釣行記 “一竿風月”

“飛天弓 柳” 悦楽の深宙。吉田康雄×戸面原ダム【前編】

猛暑と豪雨が交互にやってくる晩夏ならではの一日。
吉田康雄は、久しぶりに千葉県房総半島の雄、戸面原ダムを訪れた。
名ポイント、本湖「石田島」立木。釣り方はもちろん、深宙両ダンゴだ。
そしてその右手には、「飛天弓 柳」。キラキラと光る細身のグリーンが、戸面原ダムの濃緑とシンクロする。
15尺から、13.5尺へ。地合を確実に捉えた若武者が、真夏のダム湖を存分に愉しむ。

どこまでも細く、しなやかに、そして強く。シマノ新章「飛天弓 柳」。

「驚きました。まさかここまでの仕上がりになるとは、正直思ってもみませんでした。最高の竿です」
8月13日。久しぶりに戸面原ダムへとやってきたシマノフィールドテスター吉田康雄は、まだ薄暗い駐車場で、車の中からいきなりロッドケースを取り出した。その興奮の度合いから、ついに完成したというシマノの新しい竿がどれほどのものなのかがすぐに伝わってきた。
「ちょっと振ってみてくださいよ!」

名ポイント「石田島立木」に入った吉田。期待が高まる。

飛天弓 柳(やなぎ)
その和風なネーミングとは裏腹に、吉田が取り出した渋いグリーンメタリックに輝く竿は、あの「飛天弓 閃光シリーズ」を彷彿とさせる斬新なデザインだった。
そして、とにかく細い!
「15尺で12尺くらい…いや、ちょっと太めの竿だったら10尺くらいの細さですよ」
早速振らせてもらう。
細い。そして、軟らかい。
しかし、何だろう…。
ベロンと垂れ下がるような感触は皆無で、何か金属的なまでの「芯」の強さが感じられるのだ。

「実はもう何度か使わせてもらっているんですが、最高です(笑)。もしかしたら、個人的には今までのシマノの竿の中で一番のお気に入りかもしれません。浅ダナもチョーチンも、沖もいい。軟らかいんですけど、使いづらい感じは一切ないし、曲がれば曲がるほど強さをを感じられる竿なんです。そして何より、釣っていて愉しい。これ大事です。
自分はあの『飛天弓 本ぬけ』でシマノにハマったクチなんですが、基本、『曲がる竿』が好きなんですよね。へら鮒釣り!って感じがするんです。で、今回の『柳』は、あの『本ぬけ』が現代の技術とデザインをまとって蘇ったかのような、そんな印象すらあるんです。『スパイラルXコア』と『ハイパワーX』のダブルX構造が本当に効いていて、こんなに細いのにちゃんとした『芯』がある。全くブレないんですよ。初めてこの『柳』でへらをかけた時、僕はあの『本ぬけ』の『芯のあるしなやかさ』を思い出したんですよね。
今日は初めて野釣りで使うので、とても愉しみにして来たんですよ。もちろん、深宙両ダンゴで『柳』の感触を存分に愉しむつもりです」
久しぶりの釣行だという戸面原ダム。朝、ボートセンターのスタッフから丁寧な説明を受け、狙いを本湖の「石田島」立木に絞る。問答無用、最盛期の同湖の超一級ポイントで、最近も50枚以上の釣果が続出していたのだ。

女将さんが作る美味しい朝食をいただきながら、ボートセンタースタッフの方が最近の釣況を丁寧に解説してくれる(この美味しく温かい朝食もまた、戸面原ダムの魅力のひとつ)。ダム湖のボート釣りというと敷居が高いような気がするが、戸面原ダムなら大丈夫。優しいスタッフが懇切丁寧にポイントや釣り方、舟付けの方法までアドバイスしてくれる。

「浅ダナでも釣れるくらいなので、竿はあまり長くない方がいいかもしれません。15尺前後から探ってみてください」
スタッフの言葉に背中を押され、5時30分、ボート桟橋を離れる。
出舟前にはスコールのような雨。台風接近により大気は不安定となっていて、今日はスコールと猛暑が交互にやってくるような天気になるらしい。
「雨は全く気になりません。今年も印旛で鍛えてきましたからね(笑)」

広い範囲で釣れている戸面原ダムだったが、なかでも最近好調の「石田島」立木に狙いを定める。チョーチン両ダンゴ、良型交じりで50枚以上の釣果が上がっていたのだ。
降っていた雨も上がり、バサーの舟に交じって5時30分、出舟。狙いどおり「石田島」立木のポイントを確保した吉田は、出来立てホヤホヤのシマノの新作「飛天弓 柳」15尺を継ぐ。今日はこの竿で、戸面原ダムの釣りを存分に味わうつもりなのだ。

 豪快に笑う吉田は、どこまでもポジティブ。今年はトーナメントでも着実に釣り、あとは秋の全国大会を待つばかり。年齢的にも充実の時を迎えつつある、今最もノっているアングラーであろう。そして、そんな状況下でも吉田は子供のような謙虚さと無邪気さを忘れない。
「最高の釣り場、最高のポイント、そして、最高の竿。贅沢ですね」
さあ、愉しき戸面の釣りが始まる。

15尺深宙両ダンゴ、アタリ活発!

スタートは土砂降り。苦笑いしながら、吉田は第1投を優しく落とし込んだ。

●竿
シマノ【飛天弓 柳】15尺
●ミチイト
1.2号
●ハリス
上下0.5号 55―70cm
●ハリ
上下【軽量ダンゴヒネリ】6号
●ウキ
吉田作【深ダナパイプ】11番
(パイプトップ14cm カヤB11cm カーボン足6cm エサ落ち目盛は、全9目盛中2目盛沈め)

●エサ

凄麩
200cc
バラケマッハ
200cc
カルネバ
200cc
浅ダナ一本
200cc
200cc

シンプルにネバボソに仕上げたエサを小さめにハリ付け。ウキもどちらかといえば小ぶりで、ライト系の深宙両ダンゴ、と言えるだろう。ただ、これでも吉田にとっては「振れ幅のある」セッティングらしい。
「管理釣り場ではとことんいっちゃいますが、ここは野釣り。いかに魚影が濃いとはいえ、ある程度は寄せを意識しながらリズム重視で釣っていきます。ただ、ゴツい仕掛けや大エサを打つようなことはしませんね。管理釣り場の延長でいいと思いますよ」

15尺深宙両ダンゴ。大きな曲がりと滑らかな取り込みを、存分に堪能する。

アタリ出しには少々時間を要した。
土砂降りの中、淡々とナジミ切りを繰り返し、ウキが動いたのは20分後。
「このくらいでいいですよね。深宙なんで、最初にバタバタ釣れてすぐに止まっちゃうよりは、ジワジワと釣れ始める方がいいと思います」
開始から23分後、初めて「チャッ!」と落とし、第一号が「柳」を大きく曲げる。思わず顔を上げてその大きな弧を眺める吉田。
「ほんと、綺麗に大きく曲がりますよね。やっぱりへら竿はこうでなくっちゃ」
今でこそへら鮒釣り一本だが、子供の頃は父に連れられ様々な釣りを愉しんできたという吉田。千葉といえば海釣りのイメージもあるほどだという。そんな「釣りが大好き」な吉田は、やはり「大きく曲がる竿」が大好きなのだ。
「ほら、こんなに曲がるのに、けっこうスムーズに魚が上がってくるでしょう?」
雨の中、吉田は嬉しそうにそう言いながら綺麗な尺級を玉網に納めた。
「いいへらですね! 健全なへらですよ」
特別大きい、というわけではないが、傷ひとつない綺麗な尺べらに、思わず表情が緩む。

アタリは続いた。
ポンポンと打ち返すリズムをキープしつつ、アタリで終わる投が増えていく。雨が上がると、吉田の釣りはさらに熱気を帯びていった。

シマノインストラクター
吉田 康雄

1976年、東京都荒川区で生まれる。
数々の大会で上位入賞、全国大会進出を果たしているが、記憶に残るのは99年シマノジャパンカップへら釣り選手権大会の準優勝と、14年に実現した同大会優勝。人気ウキ師としても評価が高い。巨ベラ狙いにも積極的で、05年春には亀山湖で50cmを達成した。

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