へら釣り名手の釣行記 “一竿風月”

吉田康雄vs清遊湖の大型旧べら 「普天元 獅子吼」、
超攻撃型底釣りで躍動。

「清遊湖の北桟橋の底釣りで、今になって大型の旧べらが荒喰いしているんですよ」
吉田康雄からの一報に、筆者は乗った。
清遊湖といえば、言わずと知れた関東を代表する人気管理釣り場。そしてその人気の中心は、やはり深場を擁する中央桟橋だろう。釣り方もやはり宙釣りがメインで、浅ダナやチョーチンで相変わらず順調に釣れ盛っている。また今季も大型新べらがすでに放流済みだが、ここにきて面白い現象が起きているという。
北桟橋の浅場カケアガリで、夏の間はどこかで身を潜めていた大型旧べらが底釣りで釣れ盛っているというのだ。
「ザリガニを弾き飛ばすような勢いですよ(笑)」
吉田康雄が見せる、「獅子吼」16.5尺による超攻撃型底釣り。
文字通り攻撃的な両ダンゴのエサ使いと超速リズムで、秋の荒喰いをとことん愉しむ!

清遊湖北桟橋、大型旧べら!

”それは新べらではないの!?“
今回の取材中、筆者は吉田康雄に何度そう確認したことだろう。
そのたびに吉田は、「今季の新べらはまだ喰っていないし、3枚4kgクラスでもっとデカいので、これは絶対に旧べらです。放流にも立ち会いましたので、間違いないですよ。」と返す…。
やってくるのは、「清遊湖にこんなへらいたの!?」というほどの、あまりお目にかかったことのないような大型旧べら。いったい夏の間はどこに身を潜めていたのだろうか。ここにきて、しかもここ北桟橋手前のカケアガリで、「荒喰い」を見せ始めたのだ。
11月13日(金)、千葉県柏市にある人気管理釣り場「清遊湖」。好天のこの日は平日にもかかわらず朝からたくさんの釣り人が詰めかけ、続々と入場していく。人気の中心はやはり、深場を擁する中央桟橋。ほとんどのが中央桟橋に入釣していく中、ロッドケースに「普天元 獅子吼」を詰め込んだ吉田は、迷わず入場口から右へと進んでいく。
北桟橋だ。
端から12席目。ゴミ箱の先の釣り座にブラックブラウンのバッグを置くと、確信の表情で準備を進めていく。

●竿
シマノ【普天元 獅子吼】 16.5尺
●ミチイト
1.0号
●ハリス
上下0.5号 50-58cm
●ハリ
上下6号
●ウキ
吉田作 底釣り用最終プロトタイプ (パイプT15cm カヤB14.5cm カーボン足6cm ※エサ落ち目盛は宙の状態で全11目盛中、4目盛沈め)
●タナ
水深約3mの底釣り(上バリトントンから1目盛ズラシ)

●エサ(両ダンゴ)

ダンゴの底釣り夏
100cc
100cc
バラケマッハ
200cc

釣り方はバランスの底釣りで、エサは両ダンゴ。しかし、随所に吉田ならではのこだわりが感じられるセッティングとなっていた。
まずは竿の長さ。
このポイントは清遊湖の中では浅場の部類に入ると同時に、足元から沖に向かって深くなっていく、いわゆる「カケアガリ」のポイント。
18尺を出せばほぼ平らになるというが、吉田はあえて釣りづらさを承知で少し短い16.5尺とし、カケアガリの終盤を狙う。なぜなら、そこに大型の旧べらが居着いているからだという。
ちなみに、短竿(手前)もいかにも釣れそうなカケアガリなのだというが、釣り座によっては根掛かりが頻発するとのことで(吉田によれば、水没した枝等ではなく、ゴロタ石系のカカリだとか)、「安全圏」としてやや長めの16.5尺がいいという。またそれより長いと背後に迫る樹木にバラした時などに仕掛けが掛かる危険性も高まってしまうので、総合的に判断して16.5尺がベストということだった。
さすがに清遊湖を知り尽くす吉田。そのチョイスに、抜かりはない。
フロート&重めのタナ取りゴムで手際よく底立てを済ませ、早々に両バリにエサを付けて打ち始めていた吉田。沖打ちのカケアガリということで、タナ取りにあまり時間をかけることなく、実際にエサを打ってナジミ幅を確認しながら微調整していくという、野釣り的なタナ合わせを実践する。
実際、両バリにダンゴを付けて落とし込み、4目盛がナジむようなところに持っていく。吉田によれば、「底を切ってしまうのはマズいけど、基本的には多めのナジミ幅を出しながら釣っていくのがセオリー。」という。イメージ的には、上バリトントンから1目盛ほどズラした程度にとどめる。なぜなら、そのアタリの取り方が特徴的だからだという。
底釣りとは思えないほど「早い」のだ。
4目盛がナジむ。当然、打ち始めはまだ寄りが薄いので、アタリはない。すると吉田は、底釣り特有の「返し」を待つことなく、即座に打ち返してしまう。
バランスの底釣りといえば「返してツン」が定番だが、今回に限っては、吉田は「返してツン」は全て捨てて、割り切って「ナジんでドン」だけを狙っていくのである。
その理由は、2つあった。
まず1つ目は、大型旧べらをターゲットとし、早い展開に持ち込みたいため。遅い底釣りでは、どうしても型が落ちてしまうという。体力ある大型が、我先にと競い喰いするイメージだ。
そしてもうひとつは、清遊湖の底釣りファンを悩ませ続ける「ザリガニ対策」。大型のへら鮒を底付近により多くキープしておくことで、弾き飛ばされるようにザリガニがエサに近寄れないことを狙ったのだ。実際、「返してツン」はほとんどがザリガニで、カウントのほとんどは「ナジんでドン」で大型旧べら、という信じられない底釣りだったのである。

新べら放流のこの時期、「浅場カケアガリの底釣りで、見たこともないような大型旧べらが喰っている。」という面白い現象が起こっていた清遊湖。一見、無機質に思える管理釣り場でも、魚達は様々に居場所を変え、思わぬ季節に思わぬポイントで大釣りがあったりする。それもまた、へら鮒釣りの醍醐味だろう。ちなみに、今季清遊湖では「3枚4kg」という超ド級の大型新べらがすでに放流済み。また今後は奥の自由釣りエリアも含めて随時放流が続き、冬季に口を使う中型の放流も予定している。季節風にも強く、毎日の釣果はもちろん、気温、水温等のデータも提供。家族的なサービスも温かい清遊湖に、みなさんもぜひ出掛けてみては?

朝は、じっくりと。しかし、「待つ」ことはない。「清遊湖の特徴として朝は(宙釣りも)魚が全体的にハシャギ気味なので、ガマンですよ。」と言いながら、吉田康雄は眩しい朝陽を浴びながら、早くもコンスタントに「獅子吼」を曲げ始めていた。底釣りとはいえ、狙うアタリはナジみきるまで。そうすることで活性の高いへらを1枚でも多く底に集めて競い喰いさせるだけでなく、清遊湖ではやっかいなザリガニ対策にも直結する。「返してツン」のイメージしかない方は最初は戸惑うかもしれないが、先入観を捨ててやってみれば、その威力を実感してもらえるはずだ。

竿は「普天元 獅子吼」16.5尺を使用。タチは約3mで、カケアガリの終盤を狙う底釣りだ。吉田によれば、「短めの竿だとカカリがあり、18尺以上を出せばほぼ平らとなるが、いい魚が付いているのはまだカケアガリが続いているところ。」という。
この秋発売され、話題沸騰の「普天元 獅子吼」。「これぞ獅子吼」という重厚でしっとりとした調子はそのままに、不等長設計により、特に長竿ラインはよりシュっとした感触を得て、振り込み、取り込みともに大幅にブラッシュアップされている。取材当日も吉田の底釣りを大いに助けていたと同時に、その芳醇な釣り味に、吉田自身が曲がった竿を見上げ、見惚れるシーンが何度も見られた。

ウキはもちろん、自身が作る「吉田作」のプロトモデルを持ち込んでいた。ショート系の軽量パイプトップ&カーボン足仕様のオーソドックスタイプで、この写真の状態でほぼ市販化に向けての最終形態だとか。そう遠くない未来に店頭に並ぶはずだ。発売を愉しみに待とう!

長年にわたって清遊湖の底釣りファンを悩ませ続けているのが、このアメリカザリガニ。吉田の釣りを見にきた清遊湖の渡辺社長も、「この吉田さんの釣り方を、ぜひザリガニ対策としても記事にしてほしい。」と話していた。
伝統的な「返してツン」の底釣りだと、ザリガニの餌食になりやすい。また、底釣りらしい持つエサも危険だという。そこで吉田は、「夏+マッハ」の水量多めのエサを「ナジミ切り」していくことで大型旧べらをガンガン寄せ、同時にザリガニ対策に直結させているのだ。同池でザリガニに悩まされている方は、ぜひ吉田の釣りをヒントにしてみてほしい。

100回練りのヤワエサを打ち切る!

「清遊湖の特徴として、朝は(宙釣りでも)ハシャギ気味なので、とりあえずはガマンです。ただし、アタリを待つようなことはしません」
そう宣言して打ち始めた吉田。その言葉どおり、「ナジんでは切り」を繰り返していく。
これは宙釣りではない。底釣りである。
傍で見守る筆者も、あまりにも潔い吉田の早切りに、「今はサワったから、もう少し待った方が…」などと思わず口をついて出てしまう。
「笑。確かに今なんかナジみ際でいい感じでサワリが出たので、ナジんだ後も少し待ちたくなっちゃいますよね。でも待ちません(笑)。あそこで待っちゃうと、アタっても十中八九ザリガニですよ。良くて小型の旧べらになってしまうし、寄りがどんどん薄くなって悪循環に陥ってしまうんです。まずは釣れなくてもいいので、勇気を持って『ナジミ切り』を繰り返していきます。絶対に釣れるようになりますから。しかも、デカいですよ。」
迷いなくエサを打ち込んでいく吉田。
そして気付く。
そのエサも、きわめて特徴的であることを――――――。
「さすが、バレてますね(笑)。これ、僕が子供の頃から愛用しているブレンドで、こういう速い底釣りには最高なんですよ。」
…と、吉田は使っているエサを一粒丸めて筆者に渡してくれた。
“ペトッ”
筆者の指先に触れたそれはまるで、カッツケ両ダンゴのペトコンエサのような軟らかさだった。
「『夏』に多めの水を入れた後、間を置かずに『マッハ』を絡めます。作ってみてもらえばわかると思うんですが、その段階ではまったくエサにならない軟らかさになっています。そこからハリ付けできるようになるまで、ボウルのヘリにこすりつけるようにしながら100回くらい練り込みます。すると、水分多めで軟らかいまま、どうにか底までは持つエサになります。これでいいんです。」
100回強く練り込んでいるとはいえ、そもそもの水分量が多いので、エサ自体は「開くエサ」に違いない。しかしこのエサこそが、この北桟橋カケアガリでの底釣りで効くのだ。
「練り込んだエサではありますが、イメージとしては『粘るエサ』ではなく、『開くエサを練り込みでギリギリ持たせている』という感覚です。このエサをナジミ切りで打っていくことで、底付近に大型の旧べらを寄せ、競い喰いさせているんです。またそうすることが、ザリガニ対策にもなっているのです。」
釣りながら吉田は、100回練った基エサをさらに練り込んでいくこともあった。それくらい軟らかいエサである。
そしてそのエサを底釣りとは思えない高速回転で打っていくことで、大型旧べらを厚く寄せ、同時にそれがザリガニ対策にも直結していたのだ。
「さすがにボソで開くエサでは、釣りが壊れてしまいます。このペトっとした軟らかい『開き』が、ギリギリのところで釣りを成立させるキモなんです。」
朝陽を浴びて、吉田の底釣りが進み始める。
ナジミ際のサワリが連続してくれば、もうしめたもの。「ナジんでドン」が連発し、大型旧べらが「獅子吼」を曲げ始めた。

フロート&重めのタナ取りゴムで速やかに上バリトントンのタナにセットした後、早々にエサを付けて打ち始めた吉田。ナジミ幅を見て、ちょうど4目盛ナジミとなるようウキ下を微調整。イメージとして上バリトントンから1目盛程度ズラした程度で、多めにナジミ幅を取って底釣りらしからぬ「ナジんでドン」を狙っていくのが今回の底釣りスタイルだ。またこうしてナジミを多めに設定しておけば、へらに叩かれてエサが持たなかった時も、即座にそれを察知することができるという利点もある。宙底ともに旧べらが非常に濃い清遊湖での底釣りでは特に、真似したいノウハウだ。

そのエサ使いが、非常に特徴的だった。一言で言えば、「軟らかい」のだ。
エサは吉田が少年時代から愛用しているという「ダンゴの底釣り夏」と「バラケマッハ」のみのブレンド。硬めに作れば「通常の」底釣りエサとなるが、今回の場合はジュワっと滲み出てくるほど水分量が多いのが特徴で、ハリ付けできるようになるまで100回以上、徹底的に練り込んでペトっとしたタッチに仕上げていく。これを小指の先ほどの大きさにつまみ取り、チモトを押さえて綺麗にエサ付け。しっかりとナジミ幅を出しながら、ナジみきった位置で強いアタリが出るよう仕向けていくのだ。そして、それ以上は決して「待たない」。大型旧べらをガンガン寄せ、競い喰いさせるのだ。
あえてまとまり感が出る「ダンゴの底釣り冬」や「ペレ底」をブレンドしていないところもミソで、ヤワ練りした時もよけいな粘りが出ず、あくまでも「軟らかく、開くエサ」として機能させるのがポイント。どうしても持たない時は、やんわりとしたまとめ役として「グルバラ」をパラっとふりかけて手直しするが、あくまで補助的な意味合いにとどめておくのが肝心。軟らかいエサをギリギリ持たせて、「ナジんでドン」を狙っていくことが釣りの「柱」となる。

ナジんでドン。「夏+マッハ」のヤワエサを、勇気を持って打ち切る。すると、信じられないようなアタリで、大型旧べらが連発していく。

底釣りで大型70枚!

いやはや、それにしても凄まじい底釣りである。
獅子吼」によってしなやかに沖に飛ばされた軟らかいエサは、上層のへらに揉まれながらもしっかりと4目盛がナジみ、その直後に「ドン」と落とす。
そんなチョーチン両ダンゴのようなアタリで次々とキロクラスの大型旧べらばかりが浮上するのだからたまらない。
「さっき『グルバラ』でまとまり感を出してみたんですが、やっぱりダメですね。寄りが不足しますし、『返してツン』でザリガニになってしまいます(苦笑)。ここは思い切って『夏+マッハ』のヤワエサを打ち切るのが正解でしょう。」
エサの最終チェックを終えると、吉田はさらにギアを上げて超高速回転でエサを打ち続ける。9時に15枚を突破すると、もう止まらない。朝のハシャギも落ち着きを見せ始めると、底付近での強烈なアタリが連発。型も一段上がって、もう手がつけられないといったふうの底釣りが驀進していく。
「意外と真っ昼間がデカかったりするんですよ。だからここも集中です。」
11時を過ぎると日中のマッタリタイムに突入してしまったのか、釣れるペース自体はスローダウン。しかし吉田は「こういう時間帯にポンとデカいのが来ることが多い」と、野の巨べら釣りを彷彿させる理屈で、エサ打ちをする手を休める気配はない。そしてその言葉どおり、キロアップの大型旧べらをコンスタントに弾き続けていくのだ。
そのあまりに素晴らしい魚体に、思わず筆者は「それ、新べらじゃないの!?」と口をついて出てしまう…。
すると、「いやいや、今季の新べらはもっとヤバいですから。」と返す吉田。放流に立ち会った吉田によれば、今季入っている新べらは「こんなもんじゃない」とか。「あまりにも大き過ぎるので、放流直後からバカバカ喰うような雰囲気じゃないんですよね(苦笑)。ただいつどこで喰い出すか分からないので、それもまた愉しみですよ。あと清遊湖では今後、冬季に口を使うサイズの新べらも入る予定になっていますので、ますます愉しみですね。」
確かによく見ればそれは新べらではないのだが、キロアップの大型を超速攻の底釣りで連発、である。それがいかに凄まじい釣りか、容易に想像していただけるはずだ。
「ザリガニが連続した時は、へらが薄くなっているサイン。さらに回転を上げて寄せを意識します」
明確なタクティクスと実践。終了の15時半までに大型70枚。その完璧な釣りに、筆者はもはや脱帽するしかなかった。

終了の15時30分までめいっぱい底釣りを愉しんだ吉田。大型旧べらばかりを70枚という、この時期としては申し分のない迫力ある釣りとなった。正面の森の頭に太陽が隠れるまで「獅子吼」を大きく曲げ続けたその釣りは、圧巻の一言。たとえ新べらは釣れずとも、キロクラスの大型ばかりが揃う超速攻の底釣りは見応え十分だった。

大型を釣り上げるたび、「これ、新べらじゃないですからね(笑)。」と筆者に念押しする吉田。それくらい素晴らしい旧べらで、知らない人が見れば思わず新べらだと信じてしまうほどの魚体ばかりだった。ちなみに放流にも立ち会った吉田によれば、今季入っている新べらが3枚4kgの「超ド級」ということで、こちらもいったいいつ喰い始めるか、大いに愉しみだ。

フィールドテスター
吉田 康雄

1976年、東京都荒川区で生まれる。
数々の大会で上位入賞、全国大会進出を果たしているが、記憶に残るのは99年シマノジャパンカップへら釣り選手権大会の準優勝と、14年に実現した同大会優勝。人気ウキ師としても評価が高い。巨ベラ狙いにも積極的で、05年春には亀山湖で50cmを達成した。

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