へら釣り名手の釣行記 “一竿風月”

一竿風月 番外編
吉田康雄流 シマノ最新へら竿チョイス【後編】

2020年春、日本列島を襲った新型コロナウイルスの感染拡大。釣りに行けず自宅で悶々と過ごしたアングラーも多かったのではないだろうか。
そこで今回は思い切って視点を変え、コロナ終息後にも役立つであろう「保存版」として、シマノフィールドテスターである吉田康雄による「シマノ最新へら竿チョイス」をお届けしよう。
実はかねてから問い合わせが多い「シマノのへら竿をどのように選んだらいいのか?」というみなさんからの素朴な疑問に対して、トーナメントから野の巨べら釣りまでを愛するオールラウンダーであり。常に第一線で活躍を続ける吉田康雄に、思う存分答えてもらった。
もちろんエサやウキと同じで、へら竿選びにも絶対的な正解は存在しない。「好み」というファクターも大きく影響してくるから、なおさらであろう。今回の吉田さんへのインタビューも、あくまで「吉田流」の視点。しかし、現在のへら鮒界の最前線を突っ走るトップランナーである吉田さんのアドバイスは、きっと多くの方の心に響くはずだ。

前編記事はこちら

最強オールラウンダー「嵐月」

ユーザーのみなさんからの素朴な疑問。
“シマノの竿を買いたいと思うんですけど、まず最初に何を買ったらいいのか教えて欲しい。管理釣り場や野釣り、ボートと色々使いたいんだけど…”
実はこれこそ企画自体の出発点だったりするのだが、確かに、へら鮒釣りを始められてシマノのへら竿に興味を持った方が、「じゃあ最初の一本は何を手に取ったらいいのか」というのは、まさに素朴で切実な疑問だろう。
本稿で吉田さんは「柳」をイチオシしているものの、それは「細身でしなやかに曲がる竿が好き」という吉田さんの好みも多分に入っているだろうし、ビギナーの方がいきなり「柳」を手にした時、おそらく思った以上に軟らか過ぎて「こんなはずじゃ…」となる方もいるかもしれない。今も昔も、「迷ったら硬めを選んでおく」というのが最初の竿選びの王道だと、筆者も思う。シャキっとした竿の方が、釣り味は別として、まだ竿振りが慣れない段階では圧倒的に使いやすいのだ。
また現実的な問題として、全てのアングラーが釣り場や釣り方に応じて事細かく竿をチョイスするためにたくさんの竿を所有できるかといえば、そんなことはないだろう。仮に1種類の竿だけだとしても、ある程度の釣行をカバーするためには最低3本の長さ(短、中、長尺)は必要であり、価格面だけを考えても、これは決して低いハードルではないはずだ。
最初から買い替えを想定して価格重視で選ぶのも一手かもしれないが、経験上、あまりにも低価格帯の竿を買ってしまうと必ず後でもっといい竿が欲しくなり、結果的には高くついてしまうという悩ましい問題もある。
そんなことを防ぐ意味でも、筆者はある程度は無理してでも最初から「いい竿」を買ってしまうことをおすすめしたい。一気に3本が無理ならもちろん、自分が行く釣り場でよく使う長さの竿を1本でいい。そんな時、シマノラインナップの中に最高の竿がある。それこそが「朱紋峰 嵐月」なのだ。
「『嵐月』はいわゆる万能系のオールラウンダータイプで、確かに『柳』よりあらゆる釣り場、釣り方をカバーできると思います。また後々に色々な種類の竿に手を出していくことになったとしても、ひとつの『基準』となる竿でもありますよね。
初代の『嵐水』はかなり硬めの先調子の竿で、いい竿だったのですが、ちょっと手にビンビンくるようなところがありました。二代目の『嵐馬』も当時の大型ブームを背景にさらに強い竿になっていましたが、暴れ馬のような性質を最新技術で上手く押さえ込んだ、やはりとてもいい竿でした。そして三代目の『嵐月』ではさらなる正常進化を遂げて、もはや非の打ち所のないオールラウンダーになっていると思います」
朱紋峰 嵐月」は、具体的には『嵐』の系譜をしっかりと受け継いだ硬式先調子となっており、またよりへら竿らしく細身となり、釣り味と粘りも感じられる現代的な竿に進化している。「スパイラルX」を基本にさらなる補強構造である『スパイラルXコア』という最新技術も採用され、まさに隙のない、「買って絶対に損をしない竿」となっているのだ。
シマノのへら竿選びで迷った時の盤石な回答、それが「朱紋峰 嵐月」だ。
しかし面白いのは、この「嵐月」の他に吉田さんがオールラウンダーとして挙げた竿。
まず「月影」も「嵐月」に決して引けを取らないオールラウンダーで、シンプルなデザインと価格がハマれば「買い」。吉田さんいわく、「『月影』を全体的に強めにしたのが『嵐月』」というイメージでいいという。
もうひとつ吉田さんが推すのが、「景仙 桔梗」という竿。「月影」よりさらに低価格帯の竿だが、作りのクオリティも抜群で、調子の違いによる使い分けも愉しいという。具体的には、より先調子寄りが好きならば「朱紋峰 嵐月」か「月影」、逆に胴調子寄りが好きならば「景仙 桔梗」といった具合だ。実際、チョーチン等であえて「桔梗」を使うトーナメンターも多く、安いからといって決して侮れない「隠れた名作」となっている。またどうしても1本の価格を抑えて最初から長竿の違う竿を3本揃えたい…というで場合も、「桔梗」なら「失敗した」と思うことは絶対にないだろう。

迷ったら「朱紋峰 嵐月」「月影」、そして胴調子寄りの「景仙 桔梗」も決して侮れない“隠れた名作”だ。

現シマノラインナップの中で、「オールラウンダー」と言えば、この「朱紋峰 嵐月」で決まりだろう。登場時の取材、吉田さんが灼熱の門池、16.5尺の底釣りで見事に良型を仕留めたのも印象深い。「まず何の竿を選べばいい?」、「色々な場面で使いたいんだけど…」という切実な問いにガッチリと答えてくれるのが、この「嵐月」なのだ。

管理釣り場や湖水の釣りだけでなく、気軽な平場の野釣りにも「嵐月」はベストマッチ。まさにあらゆるシチュエーションに対応する、現シマノへら竿の最強オールラウンダーだ。

※よりはっきりとした硬式先調子が好みなら「朱紋峰 神威」がオススメ。元が太めで先が細く、がっしりとした力強さを味わえる。
こちらも管理釣り場から野釣りまでオールラウンドに使える名作で、特に大型主体の管理釣り場で愛用者多し。

長尺「L」を基本に、パワーの「P」。そして「振り込み番長」の「翼」!

今から20年以上前、二代目「飛天弓 閃光」である通称「レインボー」が出た時の衝撃は、今でも忘れることが出来ない。そして相当無理をして何とか釣具店で21尺を買い求め、初めて釣り場で振った時の感動もまた、格別だった。
玉虫色に輝くレインボーカラーは今見ても十分斬新だし、太陽光線によって見え方が違うのもまた、素晴らしかった。
そして何より、とにかく軽かった。
それまでの長竿というのは、「重さを我慢して振る竿」という域から脱することが出来ないでいたが、「レインボー」はその常識を完全に破った。さらに凄かったのは、ただ軽いだけでなくシャンとした張りがあって、「普通に使える竿」だったことも大きい。
その後、「閃光」シリーズは「G」、「R」、「X」…と着実に進化を遂げ、現行モデルではよりきめ細かくユーザーの要望に応えるため、ついに二分化。「軽さと強さを共存させる」という矛盾するテーマから一気に解放され、軽さの「飛天弓 閃光L」と、パワーの「飛天弓 閃光P」となって今に至る。
「基本は『L』ですね。軽さ重視といっても、完全に軽さだけに振り切っているわけではなく、ちゃんと脈々と続く閃光シリーズの伝統を受け継いでいて、軽さと強さが両立している隙のない竿になっていると思います。調子のイメージとしては、先調子気味だった『X』と胴調子気味だった『R』のいいとこ取りといった感じで、シャンとして操作性が良く、魚が掛かればちゃんと曲がって浮かせてくる、という感じです。とにかく今、『軽量長尺を買おう』と思ったら、まずはこの『飛天弓 閃光L』で間違いないでしょう。
じゃあ『飛天弓 閃光P』はどうかというと、シチュエーションとしては、管理釣り場ならばこれからの夏や新べらのシーズン、ペレ宙やペレ底など、大型相手のパワー系の釣りなどには最高でしょう。また野釣りや巨べら釣りでも、『ボーダレスではちょっとゴツ過ぎるかなぁ』という人にもいいと思います。ボートフィッシングのチョーチンなんかでも、軽さより強めの竿を好む方にはいいでしょう。」
「閃光L&P」の使い分けのアドバイスに加え、吉田さんはもうひとつ意外な竿を挙げ、いかにも「らしい」使い分けを紹介してくれた。そこで登場したのが「」だった。
「もうけっこう古い竿になってしまいましたが、『翼』って実は凄い竿なんですよ。何が凄いかというと、その振り込み性能なんです。具体的に言うと、『閃光L』も十分に素晴らしいんですが、『翼』の方が少しだけしなやかなんですね。なので、たとえば長竿の浅ダナ等で、しかもかなり渋い状況で、落とし込みを1投もミスれないような時、僕は『翼』を選ぶんです。絶対的なパワーは『L』や『P』に負けますが、あの小ウキがスーっとストレスなく飛んでいく感覚は、『翼』ならでは。その名前のとおり、羽が生えたかのように仕掛けが飛び、ピンポイントな落とし込みが決まるんです。なので、長竿の浅ダナをやる時、『飛天弓 閃光L』の他に必ず竿ケースに忍ばせてあるのが、この“振り込み番長”の『』なんですよね。」

基本は軽い「L」。パワー重視なら「P」。そして“落とし込み番長”の「

※暴風が吹き荒れるような時は、長竿でもあえて重めをチョイスするのもひとつのテクニック。風に押されても自重により振り込みが格段に楽になる。そのような場合、「月影」 、「景仙 桔梗」 、「普天元 独歩」の21尺などを使用する名手が多いぞ!

へら鮒釣りを「愉しむ」竿

では最後に、シマノへら竿ラインナップの中で軟らかめ、「趣き重視」の竿を紹介したい。
まずは何と言っても真っ先に挙げたいのが、「特作 伊吹」だ。
先に挙げた「特作 天道」が硬式の竹竿を意識して作られた竿であるのに対して、この「伊吹」はズバリ、軟式の竹竿を目指し、そこにカーボンロッドならではの感触と整備性を加えた究極の一竿となっている。釣り具店でひと振りしてもらえればわかるとおり、その性格は、はっきりと軟らかい。なので「竿の硬さで魚を引きたい」という方には、まったくもって相容れない竿であろう。
「へら鮒釣りを愉しむ竿、ですよね。1枚の引き味を心ゆくまで堪能できる竿です。その感触を一度でも味わってしまうと、もう病みつきになりますよ。」
そしてカーボンロッドである「特作 伊吹」に加え、シマノが誇る超個性派が「天舞」だ。
かの山彦工房との奇跡のコラボによって生み出されるこの竿は、なんとコミ部のみカーボンを使用し、竹素材をサンドするという驚くべき発想によって作り出されている“奇跡の竿”。その感触はカーボンロッドというよりは「合成竿」に似ているが、コミ部はカーボンのため神経質な扱いや管理は必要なく、またその感触も唯一無二。竹竿の重厚感とカーボンロッドの淡麗感&利便性が混ざり合ったかのような、不思議な感触を味わえるのだ。すでに登場からかなりの年月が経過しているが、決して色褪せることなくカタログモデルとして存在し続けていることこそが、「天舞」が唯一無二である雄弁な証拠であろう。
「ただ愉しむためだけではなく、釣りの戦略的に「天舞」や『特作 伊吹』を選ぶこともあります。たとえば細いラインを駆使するカッツケ釣りなどにも最高ですし、また、自分的には、冬場の繊細なチョーチンセットや段底などでも選びます。これはなぜかというと、タテサソイを掛ける時、硬めの穂先(竿)だと敏感に動き過ぎて、微妙なサソイが掛けづらいんです。そんな時はあえて反応を鈍くするために軟らかい竿を使うと、凄くいいんですよ。『半目盛だけ持ち上げる』とか、そういうタテサソイが凄くやりやすいんですね。」
そして――――――。
最後に、やはりこの竿を忘れてはならないだろう。
シマノが誇る旗艦(フラッグシップ)モデル、「普天元 独歩」だ。
「『独歩』に関しては、もう僕ごときがクドクド言う必要はないですよね(笑)。最高の素材、最高の技術を投入したシマノの最高機種です。
竿の性格としては、平たく言えば、
『やや軟らかめの胴調子』。そういう意味では『オールラウンダー』でもある竿ですが、僕はあえて『独歩』は『趣き系』に入れたい。カタログに『まろやかでコクのある手応え』とありますが、まさにそのとおりで、これはもう理屈ではなく、竿の振り調子や掛け調子が最高で、『嗚呼、いい竿だな』と思わず顔がニヤけてしまう竿です。価格も今となっては他の竿に比べてべらぼうに高いということもないですしね。とにかく、シマノへら竿の“親分”といいますか(笑)、行き着く先には『普天元 独歩』がある、という感じですよね。」

軟調の極み「特作 伊吹」。未だ唯一無二の「天舞」。そして最高峰、「普天元 独歩」。

※朱塗りのデザインが気に入れば、「朱紋峰 本式」もオススメ。感触的には「普天元 独歩」をさらにソフトにしたような印象で、こちらも素晴らしい世界観の竿だ。

シマノフィールドテスター
吉田 康雄

1976年、東京都荒川区で生まれる。
数々の大会で上位入賞、全国大会進出を果たしているが、記憶に残るのは99年シマノジャパンカップへら釣り選手権大会の準優勝と、14年に実現した同大会優勝。人気ウキ師としても評価が高い。巨ベラ狙いにも積極的で、05年春には亀山湖で50cmを達成した。

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