へら釣り名手の釣行記 “一竿風月”

久しぶりの釣り。BORDERLESSで愉しむ、最高の15時間。
吉田康雄in利根川本流【後編】

やっぱり釣り場はいい…。
当たり前だと思っていたことが、実は当たり前ではなかったという事実。
この2カ月、例のコロナ禍で釣行を自粛してきた吉田康雄は、思いっきり釣りができる歓びを噛み締めていた。
釣り場はこの冬、完敗を喫していた利根川本流!
一年で最も日が長いこの時期。吉田と利根本流の“勝負”は実に15時間にも及んだ。
でも、まるでそれが一瞬であったかのように…。
最高の時間だった。

前編記事はこちら

最大魚36cm。そして半べら地獄…

流れは相変わらず左に急。しかし風は信じられないほど弱く、最高の釣り日和になった。
たいていこういった釣り人が心地良い日は喰い渋るものだが、前日の雨と増水が効いているのか、魚の活性は明らかに高い。
ほぼ枚投、何かしらの動きが出て魚が掛かってくる。愉しい!
マブナ、アメリカナマズ…
ズルズルとウキを持っていってしまうような動きが多いマブナに対し、アメリカナマズなどはへら鮒さながらに「チクッ!」と繊細にアタってくるので、思わずのけぞる(笑)。
「いやぁ愉しいですね(笑)。正直、午前中にこんなにウキが動くとは思っていませんでしたよ。今まで自粛を頑張ってきた甲斐がありました(笑)。」
久しぶりの釣り、それも豪快な利根川本流の「アタリっきり」の釣りに、思わず笑顔が弾ける。
気が付けばまるで真夏のような暑さになっていた11時20分、明快に「ダッ!」と入るアタリに乗ったのは、なんとマブナとへら鮒のダブル。
そしてその直後の11時30分、またしても喰い上げで乗ってきたのは、この日の最大魚となった尺二寸、36cmであった。そしてこの5枚目を合図に、ウキの動きが止まる。気が付けば50cm以上減水し、足元のテトラが顔を出し始めていた。
「まだまだこれからですよ」と気合を入れ直す吉田。しかし執念で弾き出したアタリに乗ってくる魚は、「口が下に伸びる以外はほぼへら鮒」という、狂おしいまでの「半べら地獄」となってしまう…。

真夏のような暑さとなった日中11時20分、30分と立て続けに4枚目、5枚目を釣る吉田。4枚目はへらとマブナのダブル。そして5枚目はこの日の最大魚となった36cmだった。そしてこれを最後にウキの動きは沈静化。気が付けば減水が始まっていたのだ。1枚目の竿を絞る写真、手前のテトラが顔を出し始めているのがお分かりいただけるだろうか。

この日の最大魚、36cmの素晴らしい“川野武士”。思わず見とれてしまう魚体、とはこのことか…。広大な利根川本流で逞しく生きる美べら。体高は高いが、よけいな贅肉が削ぎ落とされたかのような精悍なフォルムの尺二寸級は、そのサイズ以上の感動を釣り人にもたらす。

生命感溢れる初夏の利根川。吉田の竿を曲げた主な魚はマブナ(2枚目)とアメリカナマズ(1枚目)だが、「猛攻」というほどやっかいな感じではなく、心地良くウキを動かしてくれている、という感じだった。特にアメリカナマズはへら鮒さながら、「チクッ!」と繊細なアタリ方をするので要注意だ(笑)。しかし暑さと減水の度合いが増した午後になると、「ほぼへら鮒」というような半べら(3枚目)の猛攻が吉田を悩ませることとなる。銀色で体高もあるのだが、口だけが下を向く、という感じ。しかし左ページの「本物」に比べると、やはり何か雰囲気が違うのである…

あっという間の15時間

野釣りで経過する時間の、なんと早いことだろう…。
うだるような暑さとなった日中。5枚目を釣った後、吉田のウキから「本命」の魚信は消えた。代わりにウキを動かし始めたのは、「ほぼへら」という、見事な半べら達。そしてアタリ数自体も、午前中の半分以下にまで減ってしまっていた。
「川ですからやむを得ないんですが、やはりこの急な減水が悪さをしているのかもしれませんね。でも、まだまだ時間はたっぷりあります。希望を捨てずに頑張りますよ」
15時を過ぎると、さすがに少し涼しくなる。川面を渡っていく風は焼けた頬を撫で、気持ちがいい。水位も上昇に転じる。
15時35分、喰い上げで40cm級の「鮒」がくる。白銀の魚体。盛り上がった肩。記者などは「これはもうへらでいいのではないか?」と思ったが、吉田は首を縦に振らなかった。
「自分が納得出来なければ意味がないですからね。趣味だからこそ、そこはこだわりたいじゃないですか」
16時、17時、18時…。
そしてついに19時が近くと、太陽が沈み、辺りは一気に暗くなっていく。そして西の空が怪しく焼ける「マジックアワー」がやってくると、吉田のウキが再び活発に動き始めた。しかし次々と竿を曲げたのは、残念ながらアメリカナマズだった。そして19時15分、ついにウキが見えなくなり、釣りを終える。
「久しぶりの釣り。やっぱり最高でしたね。このままあと15時間は出来ますよ(笑)」
様々な想いが交錯する、あっという間の15時間、「最高」だった。

午後になると減水が進み、ウキの動きは沈静化。時折やってくるのは狂おしいまでの「半べら」…。15時を過ぎて再び増水に転じるとウキは動くようになるが、今度はアメリカナマズが連続して竿を曲げた。

ラスト、竿を曲げたのがアメリカナマズだった。そして19時15分、幻想的なマジックアワーに見送られながら、実に15時間に及んだ釣りを静かに終える。午後は釣れなかったが、幸せな時間を存分に噛み締めた。

シマノフィールドテスター
吉田 康雄

1976年、東京都荒川区で生まれる。
数々の大会で上位入賞、全国大会進出を果たしているが、記憶に残るのは99年シマノジャパンカップへら釣り選手権大会の準優勝と、14年に実現した同大会優勝。人気ウキ師としても評価が高い。巨ベラ狙いにも積極的で、05年春には亀山湖で50cmを達成した。

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