へら釣り名手の釣行記 “一竿風月”

吉田 康雄 in 利根川&手賀川
「ボーダレス」&「朱紋峰 嵐月」で、真冬の野に挑む。
【後編】

「利根川本流、やってみます?」
吉田康雄のそんな一言から、全てが始まった。
まさに無謀きわまりない挑戦・・・。
勝算がないわけではなかった。
“冬は流れ川を釣れ・・・”
活性がどん底まで落ち込む真冬、「動く水」は一筋の光明となり得る。
しかし、あまりにも広大な利根川本流。
まるで海のような景色の中では、「ボーダレスGL Nモデル」27尺でさえ、まるで短竿。
圧倒的な真冬の大自然に立ち向かった、吉田康雄の1日を追う。

前編記事はこちら

水深が浅くヤッカラ帯が広がるシチュエーションは「春」のイメージが強いが、開けた穴の「出口」を中尺で狙うと真冬でも綺麗な野べらと出会える手賀川。水温上昇が見込める午後から夕方は「鉄板」、なのだが・・・。

「鉄板」のはずなのに!?

“手賀なら簡単に釣れるはず”
甘かった・・・。
やはり真冬の純野釣りをナメてはいけない。しかもこの日は下り坂の雨模様が悪い方に作用したのか、とにかく生命反応がないのだ。
冷え込み自体は晴れの日よりキツくないはずなのに、やはり冬は冬らしくピリっと冷えた方がいいのか、とにかく生命感が遠い。

●竿
シマノ【朱紋峰 嵐月】12尺
●ミチイト
1.5号
●ハリス
0.6号 25―32cm
●ハリ
7号
●ウキ
吉田作【深ダナパイプ】7番(パイプT25cm カヤB13cm カーボン足9cm)

●エサ(両グル)

新べらグルテン底
5cc
グルテンα21
5cc
12cc

春の乗込み時ほど短竿で障害物周りをタイトに攻めないので「飛天弓 頼刃」までは要らないけど、軟らかい竿では少々不安・・・という今回の手賀川のシチュエーションにピタリとハマったのが、オールラウンダー「朱紋峰 嵐月」12尺だ。

水深約60cmのところを、弱いながら流れが生じるので、0.3号外通しオモリでのライトドボン。エサは手賀水系で実績のある開き気味のブレンド。
勇んで打ち始めた手賀川でも、何も反応がないまま時間だけが刻々と過ぎていく。そして泣きっ面にハチとはこのことか、14時を過ぎると予報より早めに雨が落ち始めた。
「まだ本降りにはならないと思うんですけど・・・。」
吉田のそんな言葉もむなしく、降り出した雨は普通に雨足を強め、普通に本降りに・・・。
気温はそれほど低くはないとはいえ、真冬の雨はやはりキツい。濡れた部分が体温を奪うのか、一気に体感温度も低くなってくる。

水深は約60cmと浅く、流れも出るのでライト系のドボン。吉田は0.3号外通しオモリで止めていた。ウキは吉田作「深ダナパイプ」7番。エサは両グルテンで、手賀で実績のある「新べらグルテン底」ベースのフワっと膨らむエサだ。

「何でこうなるかなぁ〜。まだ雨は降らないはずなんですけど・・・。しかしまあへら鮒はともかく、とにかく何にもアタらないですねぇ(苦笑)。利根川もそうでしたが、マブナくらいはアタってもよさそうなんですけどね。」
いつもポジティブ思考な吉田も思わずボヤキが出るほど、何せウキが水面に張り付いたかのように動かない。しかし典型的な「夕方地合」の手賀水系である。15時を過ぎれば必ず何か動きがあるはず・・・という思いだけが折れそうな心を繫ぎ止める。
完全な本降りの中、パラソルの下でエサを打ち続ける吉田。打ち過ぎないよう1投に5分以上かけて打っていくが、その分、時間の経過も早く感じる。僅か10投ほどで1時間がサっと過ぎてしまうのだ。

荷物が少ない時の野釣りで大活躍するシマノのバッカンタイプのサブバッグ。タックルとグルテンを詰めて気軽にフィールドに飛び出せるだけでなく、雨にも強い!
EVA タックルバッグ(ハードタイプ)
BK-002T
22L、27L、32Lサイズあり
リフレクトグレー、リフレクトブルーあり
※当記事で使用しているのは「EVA タックルバッグ(ハードタイプ) BK-002Q」です。現在販売しておりません。

15時。時間的にはもうアタってもいい頃合い。しかし太陽光線による水温上昇がないためか、ウキは沈黙を決め込んだまま。モジリも皆無。
ますます強くなる冷たい雨の中、筆者はオデコを覚悟した。いつもの手賀川なら、へら鮒ならずともウキが動いていいはず。それが1回もないということは、相当に状況が悪いということなのだと思ったからだ。
もはやこれまでか・・・。
思わず記者が覚悟を決めたその時、吉田が小さく呟いた。
「動きましたよ・・・。」
15時30分の出来事だった。
そろそろ上げて次を打とうかというかなり待った時、「フッ」と小さく動いたというのだ。
「確実に魚です。いましたね!」
思わず吉田の声が上ずる。
しかし、そう甘くはなかった。
期待を込めて投じた次の1投では、それまでどおり「ノー気配」。動いたのは気のせいだったのか!?
「いえ、絶対に動きました。へらかどうかは分かりませんが・・・。」
そのまま16時を過ぎる。天気が悪いせいか、早くもぼんやりと辺りが暗くなってくる。時間がない・・・。

「何でこうなるかなぁ~。」 まさかの「ノー気配」と、予想より早めに降り出した冷たい雨に、思わずボヤく吉田。ウェアもバッグもズブ濡れ。春の印旛取材に匹敵する、過酷な取材になってきた・・・。

ワンチャンス。

どんどん強くなる雨。
そして、どんどん暗くなる景色。
もはや万事休す。さすがの手賀水系といえど、この時間で何もウキが動かないというのは厳しい。
筆者が完全に覚悟を決めた、まさにその時だった。
「アタった・・・!」
見ると、吉田の腰が浮いている。
竿が大きく曲がっている!?
心臓の鼓動がひとつ、ドクンと鳴る。
我に返り、夢中でシャッターを切る。
切る!
興奮していたのか、露出は適当。しかし構わず撮りまくる!
案の定、足りないシャッタースピードのせいか、ついに「それ」を玉網に収めて拳を突き上げてもんどりうつ吉田の顔がブレていた。
しかしそれが妙にリアリティがあって、お気に入りのカットになった・・・。
「いやぁ、やった!やった!」
声にならない声を上げ、吉田は何度も拳を握りしめた。

まさに「ワンチャンス」。諦めかけたその時、吉田の竿が大きく曲がった!

へらだ。しかも、デカい。
「やっぱりへらだったんですねぇ。信じてやり続けてよかった!アタリははっきり、喰って走ったような消し込みでしたよ!」
この時期の手賀水系のアベレージサイズは尺一寸から尺二寸級。明らかにそれより大きな「本命」だった。
「これはもしや、40いったか!?」
写真を撮り、検寸する。
39.7cm!
「いやぁ、いったと思ったんですけどね(笑)。でも、サイズじゃないです。この1枚は本当に嬉しいです。今日1日、寒い中頑張ったご褒美ですね。やっぱり野釣りは最後まで諦めちゃダメですね!」

やはり手賀は裏切らない!? 渾身の1枚は、なんとこの時期の手賀水系としてはなかなかのサイズ、39.7cm! 最高の「ご褒美」となった。

その後もウキが完全に見えなくなるまでエサを打ち続けた吉田だったが、残念ながら追加することは出来なかった・・・。
まさに「ワンチャンス」。

いつものように真っ暗になるまで竿を振り続けた吉田。残念ながら追釣は出来なかったが、真冬の野釣りの醍醐味が凝縮された、最高の1日になった。

しかし、それこそ真冬の野釣りの醍醐味。そんなことを再確認した、厳しくも素晴らしい1日であった。
「利根川にはまたリベンジしたいですね。今日は正直挫けそうでしたが、終わってみれば最高でした。やっぱり野釣りはいい!」
これは今年の春の印旛が愉しみになってきたか!?

シマノフィールドテスター
吉田 康雄

1976年、東京都荒川区で生まれる。
数々の大会で上位入賞、全国大会進出を果たしているが、記憶に残るのは99年シマノジャパンカップへら釣り選手権大会の準優勝と、14年に実現した同大会優勝。人気ウキ師としても評価が高い。巨ベラ狙いにも積極的で、05年春には亀山湖で50cmを達成した。

PAGE TOP