へら釣り名手の釣行記 “一竿風月”

吉田 康雄 in 利根川&手賀川
「ボーダレス」&「朱紋峰 嵐月」で、真冬の野に挑む。
【前編】

「利根川本流、やってみます?」
吉田康雄のそんな一言から、全てが始まった。
まさに無謀きわまりない挑戦・・・。
勝算がないわけではなかった。
“冬は流れ川を釣れ・・・”
活性がどん底まで落ち込む真冬、「動く水」は一筋の光明となり得る。
しかし、あまりにも広大な利根川本流。
まるで海のような景色の中では、「ボーダレスGL Nモデル」27尺でさえ、まるで短竿。
圧倒的な真冬の大自然に立ち向かった、吉田康雄の1日を追う。

利根川本流!

ひび割れた荒野を歩く侍のよう・・・。
2020年1月7日(火)。夜明けの利根川本流、長門川吐き出しから少し下った右岸。
「凄いですよね。ここはしばらく川底だったんですから。」
昨年秋の台風による大増水で、少し前までは川底だった軟らかい陸に足を取られながら水際へと歩く。

荒野を歩く侍のよう・・・。MOVEBASE へらバッグを担ぎ、ひび割れた大地を歩いてポイントへと向かう吉田康雄。利根川本流、長門川吐き出し。ここは局所的に「深み」になっており、それを知っていた吉田はここに越冬するへら鮒が潜んでいると読んだ。しかし、確証があるわけでもなく、前情報があるわけでもない。まさに純野釣りらしい「一発勝負」となった。

現れた水域は、波が打ち寄せる広大な海岸のようだった・・・。
本当にここでへら鮒釣りをするのか?しかもこの真冬に!
勝算は、なくはなかった。
「冬は流れのある川が絶対ですからね。ただ、正直僕もこんな真冬に利根川本流で竿を出したことはないんですよ。でも野釣りって、釣れるか分からないからこそ面白いじゃないですか。」
吉田によれば、ここは古くから実績のあるポイントだという。しかし吉田が過去に釣ったのは、全て暖かい時期。真冬にやるのは初めてだというのだ。
不安いっぱいの筆者を尻目に、吉田は広大な砂浜の水際に釣り台を置き、さっさと準備を整えていく。

●竿
シマノ【ボーダレスGL Nモデル】27尺
●ミチイト
1.5号
●ハリス
0.8号 25―35cm
●ハリ
8号
●ウキ
吉田作プロト(グラスムクT25cm 7mm径カヤB13cm カーボン足9cm)

●エサ(両グル)

野釣りグルテン
1分包
グルテンα21
60cc
110cc

野釣りではもはや欠かせない「相棒」となっているシマノMOVEBASE へらバッグシリーズ。その名の通り、機動力抜群の背負式バッグで、各所に工夫が凝らされ、野釣派には最高のアイテムとなっている。
●シマノ MOVEBASE へらバッグ BA-023Q 26L (¥12,000) 43L(¥13,000)
ベージュ、ブラック、ネイビーあり
●シマノ MOVEBASE へらロッドケース RC-023Q ¥12,000
ベージュ、ブラック、ネイビーあり
●シマノ MOVEBASE へらクッション ZB-013Q ¥4,900
ベージュ、ブラック、ネイビーあり

かつては「香取海(かとりうみ)」と呼ばれる海だったという利根川。もともと東京湾へと注いでいて、銚子で太平洋に出る現在の流路は、治水のために人間の手によって変えられた歴史を持つ巨大河川だ。足元の砂浜に散らばる無数の貝殻は、その名残か・・・。
「凄い川ですよね。ほら、27尺がまるで爪楊枝のようですよ(苦笑)。」
確かに27尺という超長竿を出しているにも関わらず、どう見てもヘチを釣っているようにしか見えないのだから恐れ入る。
もちろん強い流れがあるので、問答無用、2号外通しオモリをセットしたドボン。長門川から水が吐き出す影響かこのエリアは特に水深があり、ウキ下は4mにも達する。
「この辺りだけ深みになっているので、寒い冬は魚がたまると思うんですよね。ま、確証はないんですが。」
豪快に回し振りで両グルテンを打っていく吉田。

豪快極まりなし。真冬の利根本流!

夜明けは晴れていたが、みるみる雲が広がってくる。このあと夕方には雨になる予報。出来れば早めに勝負を付けたいところだが、そんな人間側の都合などどこ吹く風。あまりにも広大なロケーションに、絶望感ばかりが募る。
そんな筆者を尻目に、吉田はいつものようにとにかく愉しそう。
「最高ですね!(笑)申し訳ないんですが、こうして回し振りしているだけで最高に気持ちいいですよ。もちろん、これで釣れてくれればもう言うことなしなんですが。」
6時30分にエサを打ち始め、沈黙の時間が続く。
真冬の利根本流。そう簡単に釣れないとは思いつつ、正直、色々な魚がウキを動かしてくれるとは思っていた。
少し沖めでは、時折ボラが跳ねる。生命感はそれだけで、ジャミやコイ、ナマズどころか、まったくウキが動く気配もない。
8時を過ぎる頃、下流への流れがいっそう強くなる。強烈にシモられるウキに、吉田は手応えを感じていた。こういった河川の釣りでは、流れや水位の変化が釣果につながることがほとんどだからだ。よりいっそう集中力を高め、寸分の気配も見逃さじと、斜めになって流れに耐えるウキを凝視する。しかし、何も起こらないままさらに時間は過ぎた。
9時40分、今度は流れが急に穏やかになる。そして10時過ぎには風も止み、川はまるで巨大な湖のようになってしまった。
「これはあまりよくないですね。流れも弱く、バランスでもいいくらいになってしまいました。こんなこと、あるんですね・・・。」
その後再び流れが復活するものの、ウキには何の生命感も現れないまま刻々と時間だけが過ぎる。正午を過ぎると、いよいよ吉田も決断を迫られた。

まさに豪快な釣り・・・。2号外通しオモリを豪快にブン回し、ポイントへと投げる。竿は「ボーダレスGL Nモデル」27尺で、がっしりとした感触は大河川の釣りにもバッチリ。河川の釣り独特の風や流れにもビクともせず、快適な釣りを提供してくれる。巨ゴイやレンギョが掛かっても安心だ。

利根本流不発!手賀川へ・・・

流れは弱く、天気予報は完全な雨待ち・・・。
河川の釣りとしてはネガティブな要素が重なる中、それでも吉田はワンチャンスに賭けてウキを見つめ続ける。
そんな願いが天に通じたのか・・・
「何かいますよ。」
やや離れたところでカメラを構えていた筆者に、吉田は呼びかけた。そして・・・
ビシュウ・・・!
響くアワセの音。しかし、ボーダレスGL Nモデル27尺は虚しく空を切った。
「アタったよ〜。」
竿を持ったまま天を仰ぐ吉田。確かに1目盛、「ツッ」と入ったという。
「ボラのイトズレだったんですかねぇ。でも前触れといい、へらっぽい感じだったんだけどなぁ。」
初めて出た生命反応に、気を取り直して次を打つ吉田。

一度だけのアタリ。豪快にアワせるが、空振り・・・。

空はますます黒くなり、今にも雨が落ちてきそうな雰囲気に。予報ではまだ大丈夫なはずなのだが・・・。
「これはヤバいかもしれないですね。ジャミやナマズがアタっていればまだ望みがあるんですが、利根川にしてはウキが動かな過ぎますよ。」
30分ほど悩むが、13時を前に、吉田は早めに決断を下した。悔しそうにボーダレスGL Nモデルを抜く…。
「やっちゃいましたね〜。」
顔は笑顔だが、全身から悔しさが滲み出る。出来ればこの広大なロケーションの中、綺麗な本流べらを釣りたかった・・・。
正しいかどうかは分からないが、吉田は釣り場を変えることを決断。車に飛び乗り向かったのは、吉田のホームとも言うべき手賀水系だった。
「時間もないので、鉄板ポイントでまず1枚釣って落ち着きましょう。」
向かったのは手賀川(手賀北新堀)。浅間橋上の北岸、高圧線下。実績十分の「鉄板ポイント」だ。

「やっちゃいましたね〜」。移動を決意し、悔しそうに「ボーダレスGL Nモデル」27尺を仕舞う吉田。1枚でいいから真冬の利根本流で本命を出したかったのだが、その願いは叶わず。

「急いで土手を駆け下り、釣り台をセット。冬ということで思わず長竿を出したくなるが、ここでの冬の定番である12尺を出して、ガマの先を狙う。
とりあえず1枚釣って楽になりたい。

転戦したのは吉田のホームとも言うべき手賀水系で、「鉄板ポイント」の手賀川浅間橋上高圧線下。早々に1枚釣って楽になりたい。吉田も記者もそう思っていたのだが・・・。

しかし・・・。
そんな甘い願望を見透かしたかのように、利根川同様、ウキは完全に沈黙を決め込んだのである。

シマノインストラクター
吉田 康雄

1976年、東京都荒川区で生まれる。
数々の大会で上位入賞、全国大会進出を果たしているが、記憶に残るのは99年シマノジャパンカップへら釣り選手権大会の準優勝と、14年に実現した同大会優勝。人気ウキ師としても評価が高い。巨ベラ狙いにも積極的で、05年春には亀山湖で50cmを達成した。

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