へら釣り名手の釣行記 “一竿風月”

岡田 清×杉山達也
「普天元 獅子吼」共演。
2人のレジェンドが、休日の筑波流源湖を熱く釣る。【前編】

この2人が並んでいる姿を見るだけで思わず胸が熱くなってしまうのは、筆者だけだろうか…。
メジャー7冠。トーナメントモンスター・岡田 清。
不世出のウルトラスーパーテクニシャン・杉山達也。
ともにシマノのテスターを務めるレジェンド2人が今、「普天元 獅子吼」降臨を機に、大いに釣り、大いに語る。
舞台は日曜日の筑波流源湖。状況はこの2人を歓迎するかのように、流源湖では珍しいくらいの喰い渋り状態に…。
しかしそんな「緊急事態」も愉しんでしまうかのように、それぞれの持ち味を存分に生かした釣りを展開していくレジェンド達。
さあ、皆で幸せな時間を共有しようではないか…。

「レジェンド」共演

「まず最初に言っておきたいのは、私にとって岡田さんというのは大先輩であり、未だに憧れの存在だということ。たまに『ライバル』みたいに語られちゃうこともあるんですが、とんでもない。何か誤解されている人もいるので、書き方、よろしくお願いしますね(笑)。」
怪しい雲が立ち込める夜明けの筑波流源湖に到着した杉山達也は、「大先輩」を見つけると車を駆け下りてきて神妙な表情で挨拶し、傍にいた筆者に真剣な表情でそう釘を刺してきた。 それを聞いた岡田 清が、茶目っ気たっぷりに返す。
「まぁた達っちゃん、そんな思ってもないこと言っちゃって〜。何にも出ないよ〜!?(笑)まあでも達ちゃんにそう言ってもらえるのは素直に嬉しいなぁ。なんせ、私なんかより何百倍も釣りが上手い人だからね。今日もあんまり差を付けないようによろしくお願いしますよ(笑)。」
現在、少々くすぶってはいるが(失礼)、メジャー7冠という前人未到の実績を残してきた岡田 清。
そしてその岡田の背中を追いかけ、勝るとも劣らない実績を積み上げてきた稀代のテクニシャン、杉山達也。
9月6日(日)、筑波流源湖。そんな「レジェンド」2人の共演を実現させたのが、実はこの秋シマノから登場する「普天元 獅子吼」という竿であった。
「よく考えたら、僕と達っちゃんってシマノテスターっていう共通項があったんだよね。最高の竿も出来たことだし、『共演、どう?』って振られた時、素直に『いいねいいね!』って。」
岡田が今回の企画実現の内幕をバラすと、杉山も嬉しそうに返す。
「竿、苦労しましたもんね。そして、出来上がった最高の竿をメーカーの代表として岡田さんと2人でこうした形でアピールできるというのは、私にとっても最高の幸せ。素直に感謝したいと思います。そうした意味も込めた決意のペアルックということで(爆笑)。雑誌等でも2人っきりでっていうのは『初共演』だと思うんですが、岡田さんとはテストや撮影なんかでちょくちょく会っているので、何か不思議な感じなんですけどね。」
以前、「飛天弓 皆空」登場時の企画で、吉田康雄を交えての3人で共演したことはあった。しかし、2人だけでの共演ということになると、筆者の記憶が確かならば、意外にも「初」ということになろうか。
大混雑の流源湖。例会組の後に入場し、北桟橋にどうにか空きを見つけて座る。思わぬヘチの釣り座(例会組が抜いていたために入れた…というか、そこしか空いていなかった)に高釣果が予感されたが、いったいどんな釣りが展開されていくのだろうか。
今は同じ神奈川に住み、「気心の知れた先輩後輩」といった空気感の2人。しかし桟橋に並べば、その2人の周りにはなんとも言えないピリっと張り詰めた空気感が漂う。岡田 清と杉山達也が並んで準備をしているだけで、明らかに周囲もザワついている。まだエサも打っていないのに、ギャラリーができる…。そんな現象が起こるのも、業界広しといえど、この2人くらいだろう。 図らずも実現した「レジェンド共演」。「普天元 獅子吼」を駆り、2人はいったいどんな釣りを見せてくれるのだろうか。

伝説の二人、ここに…。入釣時、当の本人達はリラックスムードだが、レジェンドの揃い踏みに、釣り場もザワつく。

おそらくへら竿では初となる不等長設計(主に元と元上の長さが異なる)に挑戦。「普天元調子」ともいうべきしっとりとした調子は変えずに、力強さと先抜け感を演出することに成功したのが「普天元 獅子吼」だ。ともにシマノテスターでもあるレジェンド2人のノウハウ、そして「熱い想い」もたっぷりと詰まった「令和の名竿」の誕生である。

変えちゃいけない

もはや、あえて言及する必要もないほどの魚影と型を誇る超人気管理釣り場、筑波流源湖。その日曜日ともなれば、暗いうちから釣り場は活気に満ち溢れ、主要桟橋はあっという間に釣り人で埋まっていった。
流源湖をよく知る杉山にとっては見慣れた光景で、「今日は天気が下り坂予報のせいか、少ないくらいですよ。」と話す。対象的に、取材や竿のテスト以外ではなかなか来る機会がないという岡田は、あまりの釣り人の多さに朝から目を丸くしている。
それではまず、流源湖に釣り慣れた杉山達也の釣りから紹介していこう。

●竿
普天元 獅子吼】 19.5尺
●ミチイト
1.2号
●ハリス
上下0.5号 55-70cm
●ハリ
上下7号
●ウキ
グラスムクT23cm B14.5cm カーボン足5.5cm ※エサ落ち目盛は全11目盛中、3目盛沈め
●タナ
チョーチン

●エサ(両ダンゴ)

ザ・コア
100cc
チャンピオン
100cc
100cc
30回ほど練って…
オペレーション
100cc
20回ほど練って仕上げる

短竿でガンガン来るか?と思いきや、意外にも杉山が継いだのは「普天元 獅子吼」の19.5尺。「全部いいんですが、長竿は特に、ホント良くなりましたよ。」と言いながら、竿先をヒラリと返して鮮やかにエサを落とし込んでいく。
「今回の『獅子吼』で、『大型化に対応するパワー』という言葉の影響か、『硬くなった』、『先調子になった』と勘違いされている方もいるようですが、これは大きな誤解です。基本、変わっていませんよ、何も。
『普天元』はやっぱり『普天元』でなければならないんですよ。間違いなく。特に『独歩』で確立されたしっとりとした中硬式胴調子は秀逸で、私は今回の『獅子吼』の話を最初に聞いた時もシマノ開発陣に対し、『独歩』の振り調子は絶対に変えないでください』ってけっこう強く言ったのを覚えています。」
さらに杉山は真剣な表情で続ける。
「変えちゃいけないんですよ、あの最高の振り調子は。単純に振った感じが根本的に変わってしまうというのは、同一銘柄のモデルチェンジとしては一番ダメなことなんです。車も同じですよね。そのブランドには必ず共通した『味』があるじゃないですか。だから長い年月をかけて真のファンが根付くんです。
でも10年経った新製品としては、ユーザーのみなさんを驚かせるものでなければなりません。ここが難しいですし、『変えちゃいけないけど、驚かせなければならない』なんて、はっきり言ってムチャクチャですよ。でも今回の『獅子吼』で、シマノは見事にそれをやってのけたんです。チャレンジングなアイデアと、積み上げてきた技術の進歩をフル動員して。」
「朝は深いのが意外にいいんですよ」と言いながら、短竿の岡田より早くアタリを出し始めていた杉山。「流源湖は凄くスロースタートな池で、2時間後から釣れ始まることも多いです。それまではオデコでもいいくらいですよ。」と言いながらも、しっかりと練り込まれたエサがウケ始めると、グラスムクらしいナジミ込みで「チャッ!」と鋭く刻むアタリが出て、良型が浮上する。
「朝は完全な拾い釣り狙いなので、エサ的には単純に『締まった小エサ』です。で、出たアタリを確実に拾っていくような、そんな釣りですね。硬めに練り込んであるのでカラツンも出ますが、まずは強いアタリを出す方が先決で、安易に軟らかくしないのがコツかと思います。」
1枚、また1枚と岡田を先行していく杉山。
「相変わらずソツのない釣りだよねぇ(笑)。達っちゃんらしいな、という感じ。でも冗談抜きで、頭では分かっていても、なかなか出来ないんだよ、これが。さすが杉山達也っていう感じかな。」
普天元 獅子吼」19.5尺を大きく絞る杉山を横目に、岡田も賛辞を惜しまない。
「私は『独歩』の19尺って大好きで、よく使ったんですね。だからこの『獅子吼』の19.5尺には並々ならぬ思い入れがありますし、本当にいい竿に仕上がっていると思います。カーボンの硬さ自体はほぼ変えていないのに、シュっとした感じが出ていますよね。これはまず不等長設計の恩恵です。それに、単純に数字(重さ)で判断してはいけないところがあって、あえて元を太めに設計していることでカタログ重量を犠牲にしつつも、力強さと先抜け感を演出しているんです。でも最初に言ったように、さらに洗練されたしっとり感を放つ振り調子や掛け調子は、間違いなく『普天元』のそれ。『変わっていない』んですよ。」

ザワつく周囲をよそにリラックスムードの2人。しかし当たり前のようにフラシを出していたのが、何ともこの2人らしいと思った。そして、余裕の雰囲気が漂う会話とは裏腹に、釣りに対する姿勢は真剣そのもの。想定外に喰い渋ってしまった日曜日の流源湖に、それぞれのやり方で真っ向から対峙していく。

普天元 獅子吼」19.5尺をチョイスした杉山達也。釣り方はチョーチン両ダンゴだ。勝手知ったる流源湖、「朝の2時間はオデコでもいいくらい」と、締まった小エサで拾い釣りを展開。苦戦する岡田を横目に竿を大きく曲げていく。その曲がりは紛れもない「普天元」。「変えてはいけない。でも、驚かさなくてはならない」と言った杉山の言葉を体現するかのような、美しくも力強い「獅子吼」の曲がりだった。

「独歩」を越えろ

振り込む、掛ける、浮かす、取り込む…という基本性能に加え、「味」までをも求められるシマノの旗艦モデル、「普天元」シリーズ。「カーボンロッドの極みに達した」とまで言われた完成度を誇った前作の「普天元 独歩」こそが、「普天元 獅子吼」最大の「壁」として立ちはだかった。
岡田は言う。
「私も『独歩』は大好きな竿で、特に短竿は好んで使っていた。カッツケ両ダンゴとか最高だったね。また1枚が勝負を左右するトーナメントの地区予選なんかでも、よく『独歩』に助けられてきた。そんな『独歩』は実際に恐ろしいほどの完成度で広くユーザーに受け入れられていたし、『もうこれ以上どうすんの?』って、私の周囲の仲間もよく言ってたし。だから最初に『獅子吼』のことをシマノから聞いた時は、正直、凄く不安だった。『次の10年も『独歩』のままいっちゃった方がいいんじゃないの?』って本気で思ってたくらいだから。あの『独歩』を越えなくちゃいけないというプレッシャーは、半端じゃなかった。でも、達成出来ていると思う。」
初めて「普天元 獅子吼」開発のプランをシマノから聞いた時、岡田は懐疑的だったという。なぜなら、それほど『独歩』の完成度が高かったから…というのは、正直な岡田らしい言葉だろう。
しかし、シマノはやってのけた。
「私の周囲でトーナメントをマジでやっているヤツらから、『独歩』は落とし込みもやりやすいし、細いハリスを使えたり、バラしも少ないんだけど、(へらが)上がってこないことがある…ってよく言われていたんだよね。だからまずは、そこを何とかしたかった。でも、さっき達っちゃんが言っていたように、単に硬くしたりするなら、それはもう『普天元』じゃない。『皆空』でいいわけ。それでも『普天元を使いたい』という人達に向けて回答を出さなくちゃいけなかった。」
杉山とは対象的に、メーター両ダンゴで流源湖に挑む岡田 清。「普天元 獅子吼」の短竿のポテンシャルを証明したいと、「今日はこの釣りで通す」と、らしい心構えだ。

●竿
普天元 獅子吼】 9尺
●ミチイト
1号
●ハリス
上下0.6号 30-40cm
●ハリ
上下6号
●ウキ
一志 プロトタイプ (細パイプT仕様 B6.8cm ※エサ落ち目盛は全9目盛中、3目盛沈め)
●タナ
メーター

●エサ(両ダンゴ)

コウテン
400cc
カルネバ
200cc
浅ダナ一本
200cc
230cc

「短竿ならなおさら、後半尻上がり」と聞いていた岡田。ゆったりとした構えでエサを打っていく。
「このズッシリとした質感は、『独歩』以上だと思う。振り込み性能はもう、神の領域だよ。」
こちらにしっとりとした感触を伝えながら、きわめて正確な落とし込みを決めていく岡田。振り込み性能を頼って『独歩』をチョイスしていたトーナメンターは多いが、どうやら『獅子吼』はさらにその上を行くようだ。
開始から30分、岡田の9尺が初アタリをとらえた。早い「刻み」だった。
「ギュン!」
いきなりの沖走り。しかし「獅子吼」はそれを難なく受け止め、軽くいなしてしまうのだった。

振り込む、掛ける、止める、浮かす…。全ての部分で「独歩」よりワンランク上のステージに上がった感がある「獅子吼」。「独歩」とて、現在でも十分通用し、実際にファンの多い恐るべき完成度を誇った竿である。その上を行く…いや、行かねばならない使命を課された「獅子吼」だが、「見事にやってのけた」と岡田は絶賛した。

シマノフィールドテスター
岡田 清

1968年生まれ、神奈川県横浜市在住。
シマノジャパンカップへら釣り選手権大会は01年、02年と連覇し、03年は準優勝、09年に3回目の優勝をした。
ジャパンカップと同様に予選会のある全国大会で通算7度の優勝を記録。「日本最強のトーナメンター」またの名を「鉄人」「トーナメント・モンスター」とも呼ばれる。

シマノインストラクター
杉山 達也

1978年、栃木県生まれ。
03年シマノへら釣り競技会 浅ダナ・チョウチン一本勝負!優勝。シマノジャパンカップへら釣り選手権大会は05年準優勝、07年優勝、08年準優勝。 他、多数入賞。神の右手と称されるエサ合わせの妙技により、飛沫を上げ続ける姿から、人呼んで「スプラッシャー」の異名を持つ。

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