へら釣り名手の釣行記 “一竿風月”

「飛天弓 柳」vsトーナメント
掛けた一枚は、必ず獲る。岡田 清in椎の木湖【前編】

いよいよトーナメント地区予選も最終局面を迎える初秋。満席の椎の木湖、多くのトップトーナメンター達に交じり、岡田 清の姿があった。
ジャパンカップ椎の木湖予選を2週間後に控え、岡田は自身の釣りを研ぎ澄ませる作業に余念がない。そしてその右手に握られていたのは、「飛天弓 皆空」でも「ボーダレスGL Nモデル」でもなく、ブランニューの「飛天弓 柳」だった。
「いいね。全然使えるし、予選ならむしろこっちの方がいいくらいだよ」
剛ではなく柔の「柳」を、あえてトーナメント最前線の戦いに持ち込む岡田。その意図は他でもない、「1枚」の重要性だ。
「1枚1kgになる椎の木湖での地区予選は、文字通り1枚が明暗を分ける。だからこそ『柳』なんだ」
その厳しさにおいては全国大会以上と囁かれるジャパンカップ地区予選。しかもその一回戦ともなれば、全参加者が一斉にエサ打ちを開始する、超絶的にシビアな状況が釣り人達に容赦なく襲いかかってくる。
ならば、掛けた1枚は必ず獲らねばならない。
飛天弓 柳」を手に、岡田は粛々とトーナメントプランを練り上げていく・・・。

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“奇跡の竿"

前回の吉田康雄もそうだったが、いつも以上に舌の肥えたシマノテスター陣達の絶賛ぶりが凄い。
吉田は「最高。全尺欲しい」と言い切った。そして今回の岡田 清もまた、今まで聞いたことのないくらいのトーンで「飛天弓 柳」を絶賛する。
「これは本当に凄い竿だね。最初に持った印象は『とにかく細いな』ということに加え、『大丈夫か!?』というのが正直なところだった。調子的にもはっきりと軟調子を謳っているし、あ、これは勝つための竿というよりは愉しむための竿なんだなって、 そう思った。でも、それは半分合っていて、半分は間違っていた。
初めて椎の木湖でキロクラスを掛けた時の感動を、忘れることが出来ない。最初は軟調子らしく大きく曲がって『大丈夫かな』って思ったんだけど、それは一瞬だった。『皆空』や『ボーダレス』に比べたら大きく曲がるし、取り込みにかかる絶対的な時間は長い。だけど、やり取りしていて不安な感じは一切しない。むしろ軟調子らしくへらが変に暴れないし、細めのラインでも切れにくい。これはまさに地区予選のような1枚が命運を左右するシチュエーションには最高なんじゃないかって、そう思えたよね」
歩みを止めない現代の技術革新が生んだ、奇跡の竿・・・。
そんなふうに言ったら、少々大げさだろうか。

01

シマノ独自のカーボン積層技術である「スパイラルXコア」に加え、強化構造「ハイパワーX」を奢り、稀にみる細身の竿を完全武装。軟調子らしく大きくしなやかに曲がりながら、軟調子らしくない「芯の強さ」を共存させてしまったのである。
これを「奇跡」と言わずして、何というのか!
・・・と思わず興奮してしまうほど、「飛天弓 柳」はとてつもない竿なのである。

02

柳の木をモチーフにした風流を感じさせる和風のデザインとネーミングではあるが、その実は極めて先鋭的な「飛天弓 柳」。シマノ独自の「スパイラルXコア」と「ハイパワーX」のダブル構造により、細くおおらかに曲がりながら、どこからともなく湧き上がる「芯」のある強さを見せる。まさに技術革新が生んだ「奇跡の竿」だ。この日の岡田は釣り方はメーターウドンセットで、9尺を使用。椎の木湖の大型に負けることなく、1枚ずつ確実に抜き上げていった。

「これは売れると思うよ。間違いなく」
ポツリとそう呟いた岡田の何気ない言葉が、全てを言い表しているような気がした。そう、全てはみなさんが判断すること。そして、手にして魚を掛けた瞬間、きっと驚かれることだろう。
間違いなく。

対・地区予選。

9月8日(日)。岡田は椎の木湖へとやってきていた。2週間後に迫ったシマノジャパンカップ関東予選(於椎の木湖)を見据え、その調整もいよいよ佳境といったところである。
「トーナメントモンスター」の異名を取り、ジャパンカップ全国を3度も獲っている岡田であろうと、ひとたびシードを失えば厳しい地区予選から再び這い上がらねばならない。岡田は2009年に全国優勝し、その翌年にシードを失ってから実に9年、全国の舞台から遠ざかっている。もちろん挑戦を休んでいたわけではなく、毎年、地区予選で落ち続けているのだ。それくらいジャパンカップという舞台は特別で、厳しい世界なのである。
「厳しいよね(苦笑)。でも、だからこそ挑戦のしがいがあるし、だからこそ好きなんだろうね。上手いも有名も何も関係ない。みんなが平等に、横一線に並んでスタートを切る。だからこそワクワクするんだ。
まずは地区予選、それも参加者全員が一斉にエサ打ちを始める一回戦が一番厳しい(苦笑)、でもそこを抜けないと先もない。今日はその一回戦を見据えた釣りを追い込んでみるよ」

「うん、全然いけるね。」果たして、「飛天弓 柳」は椎の木湖でも大丈夫なのか?そんな素朴な疑問に、岡田は即答した。細身軟調子の竿は、思った以上に芯のある強さを発揮。1枚キロクラスの椎の木湖と対峙しても、まったくストレスなく釣りに集中出来るという。「絶対的な取り込みの時間ということで言えば『皆空』や『ボーダレス』なんかよりはかかると思う。だけど、『掛けたへらを確実に獲る』ということなら、むしろこちらの方が上。厳しい戦いが予想される地区予選なんかには最高じゃないかな。」。しなやかで「芯」の強い頼もしい相棒を手に、岡田は2週間後、ジャパンカップ椎の木湖予選に挑む。

●竿
シマノ【飛天弓 柳】9尺
●ミチイト
1.0号
●ハリス
0.6号 8―25cm
●ハリ
上 7号 下 6号
●ウキ
パイプトップ8.5cm 二枚合わせ羽根B7cm カーボン足5.5cm
エサ落ち目盛は、全8目盛中、クワセを付けて2目盛沈め

●バラケ

バラケマッハ
800cc
浅ダナ一本
100cc
200cc

●クワセ

力玉ハードⅢビッグ
 
04

「ほんと、一度使うとやめられないね。」とシマノの「キャリーバッグXT」を手に入場する岡田。手持ちのレッドのクッションと取っ手を流用し、自分流のコーディネートも楽しんでいる。
へらキャリーバッグXT ¥46,200
へらロッドケースXT 2層 ¥23,700  3層 ¥ 26,200
へらサブバッグXT ¥14,900
へらクッションXT ¥9,900
※全てメーカー希望価格(税抜)。カラーは「カーボンブラック」、「サファイアブルー」、「メタルレッド」あり

椎の木湖が発祥とされる、マッハ単品のバラケに大きなクワセを組み合わせたパワー系チョーチンセット、そのメーター版。岡田はこの釣り方に、厳しい地区予選一回戦の勝機を見出していた。
「まだモノにした・・・と言える段階ではないだけど、だいぶ見えてきたかな」
さて、いったいどんな釣りが展開されるのか。

メーター・ホタ、躍動。

「バラケマッハ」単品の大きなバラケに、まるでホタテのような大きなクワセエサを用いたことから「ホタチョー」と呼ばれ、その呼び名が定着しているパワー系チョーチンセット。今日の岡田の釣りはそのメーター版ということで「メーター・ホタ」などと言われ、こちらも徐々に定着しつつある釣りだ。ここでも便宜上、この「メーター・ホタ」という言葉を使わせていただこう。
さて、まずは単刀直入に、なぜこのような釣り方が釣れているのか、または、なぜこれまでの「粒戦」に代表されるペレット顆粒をベースにしたバラケではないのか、岡田に聞いてみる。
「単純に魚が大きく、薄くなった、ということなんだと思う。特にここ椎の木湖はとにかくデカく、そしてとにかく賢い。そんな中、今までは顆粒バラケでへらを下に向けるような意識が必要だったけど、最近はただ開き過ぎで離れるだけ・・・となって、全然アタリをもらえないんだよね。逆もまた真なりというか、歴史は繰り返す、というか。そこで俄然注目を浴び始めたのが、『今また顆粒を抜いたバラケはどうなのか?』という着想だった。
ヒントになったのが、先にチョーチンで流行していた『ホタチョー』やヒゲチョーチン(トロロをクワセにした、やはり『マッハ』の大バラケで釣るチョーチンセット)だった。それをそのままメーターに持ってきたらどうなるんだろう、というところだよね。で、それが意外に釣れる、と。これは俺が発明したとかじゃなく、トーナメントに夢中になっている方達が研究し、やり始めたこと。だから本来であればその方達がメディアで伝えるべきなんだろうとも思う。俺はまだ『見習い中』って感じだよ(苦笑)。ちょっと話が逸れちゃうけど、そういう熱い人達と一緒に竿を並べたり、競ったり、研究したりっていうのは本当に愉しいし、結果の出ない今の俺の「糧』にもなっている。大袈裟かもしれないけど、生きがいのようなものだよね」
「メーター・ホタ」を研究し、この釣りで一回戦突破の絵を頭に描いているという岡田。
釣り方の大枠をザックリと言うと、「顆粒無しの軽いバラケでできるだけへらを近づけ、また大きなクワセで喰い気のあるへらを選別し、いいアタリで仕留める」・・・という感じになるだろうか。接近戦でいいアタリで・・・という意味では、ヒゲトロセットのイメージにも近い。「マッハ」主体のバラケは「馬鹿デカい」というほどではないが、やはり大きめ。そして、その下にブラ下がるクワセも、やはり大きい。

筆者はもっと大きなバラケを想像していたが、「バラケマッハ」主体に「浅ダナ一本」で軽さを加えたバラケは、意外と小さめ。しかし「大きめ」であることには変わらず、これを必ず深くナジませ、そこからの強い消し込みのようなアタリだけに的を絞っていく。一見、大柄な釣りのように思われるが、他者より釣り込むには状況に合わせたハリやハリスワーク等が必須。この日もそんな繊細な一端が垣間見られた。

狙うアタリはズバリ、「深くナジんでズバ!」か、「やや待ってからのズバ!」。このあたりもやはりヒゲトロ的接近戦に通ずるものがあるだろう。釣り手側が「いいへら」を選別してしまうことで、釣りを簡単にしていこうという意図であるが、裏を返せば、それだけ普通の釣りでは手に負えないくらい難しくなっている、ということか。それは竿の長さにも表れていて、以前なら迷わず8尺だったところを、アタリ数を求めて9尺以上の長さも視野に入れているという。
「いつもはハシャギが強いことからムクトップでやることが多いんだけど、今日はあえてパイプトップでの感触を確かめてみたくてね。日曜日でほぼ満席だし、本番一回戦の状況に近いと思うし。今のところはいい感じだよ」
 

07

大きめのパイプトップのウキである「Dゾーン」4番をゴム管に差した岡田。普段はムク系でハシャギをかわすような釣りが多く、「パイプではどうか」というのがこの日のチェックポイントであったという。「無難に入るならパイプで確実に釣っていくのもありかな、という感じ。本番はもっと渋るだろうしね。ただ、ムク系と使い分けられるようになったら、さらにいいだろうね」。試釣を重ね、「さらに大きいサイズのパイプや、ムクとの使い分けを試せたらいいね」と語っていた。

 あらゆるトーナメントシーンの中で「最も過酷」と言われるジャパンカップ地区予選の一回戦。釣り座が間引かれる二回戦(決定戦)よりも、釣り的にはとにかくシビアな状況に置かれる。岡田を始め、毎年、苦渋を舐めるトップトーナメンターが続出するのもまた、この地区予選一回戦なのだ。僭越ながら筆者も若い頃に10年連続でこのジャパンカップ地区予選に挑戦し続けたことがあるが、一回戦を突破出来たのは、ついぞ最初のビギナーズラック的な1度だけだった・・・という苦い思い出がある。

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この日は「飛天弓 柳」をチョイスした岡田。ちなみに左隣は空席で、右隣はチョーチンセットだった。本番なら隣が空席ということはありえないから、さらに長めで入る可能性もあるという。以前なら8尺一本勝負でいけたが、近年は9尺以降、時には11尺以上の中尺も視野に入れる。周囲との相対も重要で、例えば両隣が大バラケのチョーチンなら、あえてエリアを離すために長めを・・・などという柔軟なチョイスが求められる。また逆に8尺の方がアタリ数は少なくても型がいい場合などもあるので、決めつけずに対応すべし。

打ち始めから激しく寄り、ハシャぐ大型。しかし、その見た目ほどの喰い気はなく、なるほど「手練れ」揃い。少し前ならこのハシャぐへら達をペレット顆粒による「持たせ」や「抜き」で制御出来たのだが・・・。
丁寧な落とし込み。ハシャギに負けず。スクっと立ち上がる大きめのウキ。マッハバラケをしっかり支えるパイプトップ。喰い気のあるへらだけを強烈に選別する、大きなクワセエサ。そして、深くナジんでドン。
岡田の「メーター・ホタ」が、ジャパンカップ一回戦突破を見据え、突き進む。

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深くナジんで、ドン。一回戦突破を見据え、岡田のメーター・ホタが突き進む。

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シマノインストラクター
岡田 清

1968年生まれ、神奈川県横浜市在住。
シマノジャパンカップへら釣り選手権大会は01年、02年と連覇し、03年は準優勝、09年に3回目の優勝をした。
ジャパンカップと同様に予選会のある全国大会で通算7度の優勝を記録。「日本最強のトーナメンター」またの名を「鉄人」「トーナメント・モンスター」とも呼ばれる。

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