へら釣り名手の釣行記 “一竿風月”

春こそ段底。「飛天弓 皆空」7尺で決める!
岡田 清 in 厚木へら鮒センター【後編】

段差の底釣りといえば、近年は真冬の代名詞的な釣法として定着している。
しかしシマノインストラクター岡田 清は、「意外と面白いのが春。特に短竿でカケアガリを狙った段底は、地の利を生かし、喰い気のあるへら鮒を相手にガンガン釣り込むことができるよ。」と断言する。
暖冬といわれる今年。魚たちはいつもより早く「春」を察知し、浅場を意識し始めていた・・・。
厚木へら鮒センターで実践する、「飛天弓 皆空」7尺段底。
ガンガン釣り込む岡田の姿に、「春こそ段底」を痛感する・・・‼

前編記事はこちら

「グイグイ」。

打てば打つほどウキの動きはパワー感を増していく。
特に岡田が手応えをつかんでいたのは「返し」の力感だった。
「うまく表現出来ないんだけど、『ジワジワ返す』というよりは、『グイグイ返す』という感じだよね。これは凄くいい。こうなんていうか、へらがカケアガリの下から底にある粒子を吸いながら上がってくるような・・・。返す段階から『アタるぞアタるぞ』という雰囲気がある。」

ボソに仕上げたバラケにはどんどん手水が入り、練りはしないがしっかりめにかき混ぜ、しっとりと指に絡みつくような粘り気を出していく。水分を含み、顆粒バラケとは思えない丸めやすさがあるタッチだ。これはもちろん、バラケをしっかり持たせるのはもちろん、返す段階で早めに割れ落ちしないよう、ゆっくりと返させるためだ。
「凄く『普通のセット釣り』っぽい動きだよね。こういうのができるのが、春の短竿段底の強みだと思う。」
池の下から湧き上がるような「グイグイ系」の活性を感じると、岡田は下バリに着目。「バラサ」1号ではへらの活性に負けて軽過ぎると感じ、フォルムが小さく比重のある「タクマ」2号にスイッチする。すると喰いアタリが減り、また、アタリのタイミングも明らかに遅くなった。
「これだと重過ぎて、下ハリスが突っ張り過ぎている感じがするね。」
すかさず両者の中間的な自重である「リグル」3号に変更すると、アタリの量、タイミングともに岡田のイメージとマッチしたのである。この3種の下バリのやりくりはかなりはっきりとした違いが出たので、試してみる価値大。岡田も「下バリは凄く重要。サイズだけで対応してもいいけど、小さいクワセエサに大きなハリって何となく違和感があるから、俺は重くするなら種類を変えるかな」と付け加えた。

グイグイ返して、チクッ!」。パワー感溢れるノーマル段底が、炸裂する。

元気な旧べらに加え、ご覧のような良型新べらも岡田の釣りを強烈にアシスト!

綺麗なボソに仕上げられたバラケの基エサにはどんどん手水が入り、最終的にはかなりしっとりとしたタッチに。これはもちろん、バラケの割れ落ちを防ぎ、しっかりと持たせるため。そして岡田はこれを「ジワジワ返す」ではなく、もう一段しっかり持たせる感覚、魚にサワらせながら「グイグイ返す」と表現した。

段底では下ハリスの張りを確保するため、軽いインスタント系や「力玉」ではなく、比較的比重のあるウドン系のクワセを使う岡田。終始「魚信」のポンプ詰めで通していた。そのうえでハリの種類やサイズで「重さ」を追い込む。取材当日は「バラサ」1号(写真上)から入り、軽過ぎると見るや「タクマ」2号にチェンジ(写真下)。そこで「少し張り過ぎる(重過ぎる)」と感じると、中間的な「リグル」3号(写真中央)にしてリズムに乗った。「バラサ」のままサイズで調整してもダメではないというが、フォルムが大きくなると小さなクワセエサとミスマッチが生じて違和感を感じるため、岡田はハリの自重の違いを重視しているという。

バラケを底に近付ける。

昼食休憩後も、岡田の勢いは止まらない・・・。
攻め方、そして下バリも最適化して「グイグイ返してチクッ!」で次々と良型をヒットさせていく岡田。元気な旧べらに混じってピカピカの新べらも口を使い始め、もはや圧倒的なペースへと突入していく・・・。
しかし恐るべきことに、岡田はまだまだ満足していなかった!
「う〜ん、かなりいい感じではあるんだけど、もう少しだけ安定感が欲しいよね。今の感じだとバラケを上から降らせる必要性はない感じなんだよなぁ・・・。」
これだけのペースになっても、まだまだ不満気な岡田。頭の中はフル回転といった様相で、渋い表情すら見せる。いや、これだけのペースだからこそ、「詰め」の段階でもうひと押し足りないと感じているのかもしれない。
それが「岡田 清」というアングラー。
ここまで岡田がまだ手を入れていない部分。「ズラシ」――――――。
「下バリをもう少しズラしたらどうなる?」と、筆者が水を向けてみる。すると・・・
「アタリ自体はいい感じではっきり出ているわけじゃない? タイミングも悪くないんだよね。ただ、もうワンテンポ早くなれば理想だし、さっきも言ったけど、バラケを上から降らせる必要性よりも、逆にもう少し底に近付けたいかなと。」
ならば下バリをもう少しズラして、バラケを底に近付ける?
「うん、でもそこでやっぱり下バリ自体はこれ以上ズラしたくないんだよね。カケアガリとはいえ下ハリスの張りが弱まってアタリがボケたりスレが増えるのは避けたいし。」
ここで岡田が確信的な表情で、上ハリスを切る。
上ハリス?
「上を伸ばしてみるね。実はこれ、最近の定番なんだよ(笑)。」

段底ということで下バリのズラシばかりに気を取られていた記者は、その対応に一瞬、呆気にとられた。
10cmだった上ハリスが、なんと25cmに!
「さっきの下バリの探りじゃないけど、まずは極端にやってみて、ダメだったら戻していけばいいという考え方だよね。変えたことで何か被害が出るような対応じゃないから、思い切ってやった方がはっきり違いが出るんだ。」
実はすでに下ハリスも詰められて55cmから50cmになっていたために、25-50cmという、何とも見た目は違和感のある段底に・・・。
しかしだ。
さすがにウキを換えて攻め方自体をシフトした時ほどの劇的な変化ではないものの、はっきりとアタリの出る投が増え、僅かにアタるタイミングも早まったのである!
延々と釣れ続く岡田の7尺段底。14時、ついには60枚を突破する。
「見た目は不恰好だけど、コレもアリでしょう!?」
もはや筆者は観念して、頷くしかなかった。

「今はきっちりアタリが出ているので、これ以上はズラしたくはない。でももう少しだけへらを底に安定させたいよね。」
そんな岡田が取った手法は、下バリをズラすのではなく、「上ハリスを伸ばす」という方法。目からウロコ的方法でバラケを底に近付け、見事に釣りにさらなる安定感を加味させることに成功する!

岡田 清
シマノインストラクター
岡田 清

1968年生まれ、神奈川県横浜市在住。
シマノジャパンカップへら釣り選手権大会は01年、02年と連覇し、03年は準優勝、09年に3回目の優勝をした。
ジャパンカップと同様に予選会のある全国大会で通算7度の優勝を記録。「日本最強のトーナメンター」またの名を「鉄人」「トーナメント・モンスター」とも呼ばれる。

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