へら釣り名手の釣行記 “一竿風月”

春こそ段底。「飛天弓 皆空」7尺で決める!
岡田 清 in 厚木へら鮒センター【前編】

段差の底釣りといえば、近年は真冬の代名詞的な釣法として定着している。
しかしシマノインストラクター岡田 清は、「意外と面白いのが春。特に短竿でカケアガリを狙った段底は、地の利を生かし、喰い気のあるへら鮒を相手にガンガン釣り込むことができるよ。」と断言する。
暖冬といわれる今年。魚たちはいつもより早く「春」を察知し、浅場を意識し始めていた・・・。
厚木へら鮒センターで実践する、「飛天弓 皆空」7尺段底。
ガンガン釣り込む岡田の姿に、「春こそ段底」を痛感する・・・‼

「飛天弓 皆空」7尺、「抜き段底」。

「段底(段差の底釣り)って真冬の釣りっていうイメージも強いけど、釣り込むってことを考えると、実は春が一番面白いんだよね。それも、深場の段底ではなく、ズバリ浅場。各管理釣り場でも浅いエリアやカケアガリ等の地形変化のあるところで好釣果があがるのが、この短竿での段底なんだ。」
厚木へら鮒センターへとやってきた岡田 清。迷わず大池手前寄り32番釣り座に道具を置くと、やはり迷わずロッドケースから「飛天弓 皆空」7尺を引き抜いた。水深はちょうど竿いっぱい。やや仕掛けを長め(ヨリモドシが竿尻より少し出る位置)にして、ほぼチョーチンの位置にウキがくる竿いっぱいの段差の底釣りである。

豊富な魚影と行き届いたサービスで人気の「厚木へら鮒センター」。同じ神奈川に住む岡田もよく訪れる釣り場だ。もちろん宙釣りもよく釣れる釣り場だが、手頃な水深も相まって底釣りファンが多い。そんな中、岡田は大池手前寄り3席目に座り、迷わず「飛天弓 皆空」7尺を継いだ。釣り方は段差の底釣りで、手前カケアガリにつっかけてくる喰い気のある良型を狙うのだ。これは魚が本能的に浅場を意識する春に面白い釣り方で、各釣り場で好釣果をもたらす釣りなのだ。

「宙のセット釣りがどんどん難しくなっていく中で、『底』という安定基盤を利用できる段底は、ある意味では古典的なセット釣りの手法でガンガン釣り込むことができる釣り方。例えば浅ダナセットでやっていてとても難しく、どんどん深くしていってついには下バリのクワセを底に着けたらいい感じでアタリが出て釣れ始まった・・・なんて経験をした方もいると思うんだけど、春にそんな釣りが効くのは、実はとても理にかなっていること。浅場の地形変化を意識したへら鮒達が、まるで次から次へと下から湧いて出てくるような、そんな釣りが可能なんだよね。釣り方自体もそんなに難しいことはなく、しっかりバラケを持たせてジワジワ返させてチクみたいな、そんな釣りが可能なのも段底の魅力だよね。」
とはいえ取材日はまだ冬真っ盛りの2月5日(水)。暖冬とはいえ朝の冷え込みは厳しく、まずは無難に冬を意識した釣り方から入るという。
「冬を意識した段底」・・・
そう、「抜き段底」である。
「理屈は宙の時と一緒。ガッチリとバラケをブラ下げちゃうとアタリにならないから、上で抜いて粒子をゆっくり降らせて、底にあるクワセに反応させていくイメージかな。だからウキもグラスムクトップで、エサ落ちも沈め気味なんだ。ただ冬を意識した釣り方とはいっても、決まれば宙よりアタリも早いし、安定して釣れ続くよ。」
ではさっそくその「抜き段底」のタックル&エサを見ていこう。

●竿
シマノ【飛天弓 皆空】7尺
●ミチイト
0.6号
●ハリス
上0.5号 下0.3号 10―55cm
●ハリ
上 6号 下 1号
●ウキ
一志【セットスピリット グラスムク】4番
(グラスムクT20cm 羽根B5cm カーボン足9cm ※エサ落ち目盛は全11目盛中、上ハリスのみ付けた状態で水面上に4目盛出し)

●バラケ

粒戦
50cc
粒戦 細粒
50cc
サナギパワー
100cc
200cc
10分以上放置してしっかり水を吸わせて・・・
セット専用バラケ
100cc
セットアップ
100cc
パウダーベイトスーパーセット
100cc

●クワセ

魚信(あたり)
1分包
70cc
鍋で煮て作り、玉の状態でラップにくるんで釣り場に持参。ポンプ出しで使用

上バリ(バラケ)が常に宙にある釣り方・・・ということもあり、エサ落ち目盛の設定方法が特徴的。まず岡田は上ハリスだけを付けた状態(宙の状態)でウキのバランスを「水面上に4目盛出し」に設定。つまりこれが、実際に釣る時の「下バリが完全に底に着いて、下バリとクワセの重さが消えた状態」ということになる。
バランスを取った後、あらためて下ハリスを装着。トップがギリギリ沈没するくらいの小さな粘土オモリを下バリに装着し、タナ取り作業に入る。
おおまかに「下バリトントン」のタナを取ったら粘土オモリを外し、振り込む。すると最初は「3目盛出し」の状態となるが、そこから少しずつウキ下を深くしていき、さらに1目盛が浮上して「4目盛出し」となるようにする。約3cmほど深くしたところではっきりと「4目盛出し」となり、これが実際に釣り進んでいく時の「基準のタナ」となる。つまり、確実に下バリ(クワセ)が底に着いている状態だ。釣っていて「4目盛出し」が「3目盛出し」になるなら、深いところにエサが着底してしまっているか、もしくは掘れたか・・・という判断基準になる。
「慎重に落とし込んで、なかなか勝負目盛が出てこないような時は深みに入っているから早めに切るとか、置き直してみようとか、底が掘れたかなとか、そういう感じだよね.」
最初に上ハリスだけでバランスを取っておけば、下バリを変えた時でも迷うことがないのも利点だろう。

まずは冬を意識した「抜き段底」から入った岡田。グラスムクトップのウキを使用し、バラケを支える必要がないことからエサ落ち目盛も上の方で。具体的にはまず上ハリスだけを付けて(宙の状態で)「4目盛出し」にバランスを取り、その後に下ハリスを付けてタナ取りに入る。カケアガリを転がり落ちないよう、トップがギリギリ沈むくらいの小さな粘土オモリを下バリに装着しておおまかに下バリトントンのタナを取ったあと、粘土オモリを外して振り込み、「4目盛出し」となるまで少しずつウキ下を深くしていく。そして3cmほど深くしたところではっきりと4目盛が浮上したことを確認すると、岡田はそれを「基準のタナ」とした。

さて、全ての準備が整いエサを打ち始める岡田。バラケは「必要最小限」という考え方で小さく丸め取り、軽めの圧で上バリに付けられる。完全な「上抜き」ではないが、半目盛から1目盛バラケの重さがトップにかかるかかからないかといった感じの「抜き」のイメージから入る。もちろんこれは浅ダナ同様、冬を意識した攻め方で、そのためのグラスムクトップであり、沈め気味のエサ落ち目盛の設定なのである。まだへら鮒の活性が低く、宙釣り同様「抜きセット」気味でないと厳しいと予想したのだ。
しかしそこには岡田らしい「攻め」の思惑もあった。「底」という安定基盤を利用できる「抜きセット」と考えれば、「攻撃的かつ安定的な段底を具現化できるのでは?」という狙いもあったのだ。細いトップにバラケの重さが僅かにかかるかかからないか、という「抜き段底」で打っていく岡田。早めにクワセだけにした状態から「サソイ」や「置き直し」でアタリを出していければ攻撃的かつ高いヒット率を実現できると考えたのである。

大人気の厚木へら鮒センター。平日にもかかわらず、ほどなくして釣り座は一杯となった。暖冬とはいえ、取材時はまだまだ「冬」。厳しい釣りも想定し、岡田は冬を意識した「抜き段底」から入ったが・・・。

迷わず岡田が継いだのは、規定最短の「飛天弓 皆空」 7尺だった。もちろんその狙いは、なるべく手前のカケアガリを狙うため。下から湧き上がってくるような喰い気のあるへらの供給と、比較的ヘドロがたまりにくく底が硬い(掘れにくい)ことや、バラケが滞留しにくくてエサボケしにくい等のメリットが多数あるのが「カケアゲリ」という地形なのだ。

トーナメントロッドとして衝撃的なデビューを飾り、今やすっかり定着した感のある「飛天弓 皆空」。硬式系のパワーロッドではあるが、ただ硬いだけではなく、「しなやか」と表現したくなるほど胴がしっかり機能し、バラシやラインブレイクを抑えつつ、真の意味で「早く取り込むことができる」勝負竿である。そして素晴らしいのが、その「飛天弓 皆空」の7尺。この長さで驚異の4ピース(4継)を実現しており、7尺とは思えないパワーと「しっとり感」の両立を見事に実現している。 トーナメントロッドとして衝撃的なデビューを飾り、今やすっかり定着した感のある「飛天弓 皆空」。硬式系のパワーロッドではあるが、ただ硬いだけではなく、「しなやか」と表現したくなるほど胴がしっかり機能し、バラシやラインブレイクを抑えつつ、真の意味で「早く取り込むことが出来る」勝負竿である。そして素晴らしいのが、その「飛天弓 皆空」の7尺。この長さで驚異の4ピース(4継)を実現しており、7尺とは思えないパワーと「しっとり感」の両立を見事に実現している。

「抜き段底」不発!

水中は岡田が予想した以上に「春」へと以降し始めていたのか・・・。
浅ナジミで打ち始めた岡田に、厚木HCのへら鮒たちは意外な回答を示してきた。
ほどなくして岡田が呟く。
「全然釣りになってないね(苦笑)。」
僅か数投で岡田は早々に「察知」していたようだったが、筆者のためにそのまま浅ナジミで打ち続けてくれた。
へら鮒の気配自体は1投目から濃厚。「湧く」ほどではないが、立ち上がろうとするウキを突き上げるような動きも出る。そして、バラケが抜けた後はシーン・・・。
「明らかに活性が高過ぎるよね。今朝はけっこう冷えたし、混雑もしているから冬っぽい釣りになるのかなぁと思っていたんだけど、水中は完全に春。バラケを途中で抜いちゃうと、ただハシャぐだけでまったく釣りにならないよ(苦笑)。」
1時間ほど「抜き段底」を続けてくれた岡田。そしてカウントはなんと、「ゼロ」!
「無理やり3目盛くらいバラケを抱えさせてやるとどうにかアタリは出るけど、全部カラかスレ(苦笑)。このセッティングだと無理があるね。」
ここで岡田は、釣り方を大きく変更することを決断。
それも、かなりの確信を持って・・・。

まず換えたのは「ウキ」。それまで差していたグラスムクトップ仕様のウキをゴム管から抜き、PCムクトップ仕様の「アドバンテージ」6番に変更。オモリ負荷もアップさせる。
エサ落ち目盛の設定も、それまでの「上ハリスだけで4目盛出し」から、同じく上ハリスだけで「6目盛出し」に変更。つまり、バラケを持たせ気味(ナジませ気味)にして釣っていく「ノーマル段底」へと攻め方を180度シフトしたのである。
「明らかに上でバラケを抜いちゃうとただ騒ぐだけ・・・という状態だから、水中は人間が考えているより春めいているんだよね。個人的には『抜き段底』で、早めにクワセだけにして、あとはサソイや置き直しで能動的にアタリを出していく釣りも大好きなんだけど、仕方ないね(苦笑)。」
「仕方ないね」という言葉とは裏腹に、ここから素晴らしい釣りが展開されていくことになる――――――。
ウキ以外はそのまま。
バラケにはそれまでより圧を強めにかけ、先端2目残しまできっちりナジませ、そこからジワジワとゆっくり返してくる・・・。
「すごい普通な感じでしょ!?(笑)」
不満気な岡田だったが、その変化は劇的だった。
ジワジワとトップが返し、完全に抜けてクワセだけになり・・・
いや、それを待たずに「チクッ!」。
“これこれ、これを待ってたんだよ!”
水中からへら鮒たちの声が聞こえてきそうな、そんなウキの動きだった。
春めく厚木へら鮒センター。
地合はズバリ、「ノーマル段底」だったのだ。

バラケを上で抜くとただ騒ぐだけ・・・。地合を早々に見抜いた岡田は、ウキをグラスムクトップ(右:T20cm B5cm 足9cm)から、PCムクトップ(左:T16cm B6cm 足8cm)にスイッチ。エサ落ち目盛も出し気味とし、きっちりバラケを持たせてジワジワ返させる「ノーマル段底」へと攻め方を180度変更した。するとどうだろう。「待ってました」とばかりに、春めく厚木HCのへら鮒達ははっきりと「答え」を返してきたのだ。

「ノーマル段底」、決まる。

それにしても、これほどまでにウキの動きが変わってしまうものなのだろうか・・・。
「違う釣り場に来たみたいだよね。」
思わず当の本人の岡田もそう呟いてしまうほどの激変ぶりである。
10時を過ぎるとますますいい感じに。もはや手がつけられないといった状況に突入していく。
小指の先ほどに小さく丸められたバラケ。やや強めの圧をかけてチモトを押さえ、先端2目盛残しまできっちりナジませる。
そこからふた呼吸ほどあってからジワジワと返し始め、完全にバラケが上バリから抜けきる前に「チクッ!」とアタってしまうのだ。
「バラケが抜けちゃうと何も動かないよね。上のへらに惑わされると分からないんだけど、今日は完全に喰うへらが地底を意識している感じ。これはもう、本当に春っぽい感じだね。」
バラケが付いている時にアタる。
むろん、ヒット率は100%ではないから、空振った時のバラケの舞い上がりが怖いような気もするが、不思議なほど岡田のペースは崩れない。
「これってカケアガリの利点のひとつかもしれないよね。喰い気のあるへらが次々と下から供給されるというか・・・。もちろんなるべくバラケの抜け際は意識するけど、ある程度は気にせずいいアタリを取っていける。平らな底だったらもう少し気をつけるかな。」

「抜き段底」から「ノーマル段底」に切り替えると、それまでが嘘のようにコンスタントに竿を絞り始める。眩しく暖かい太陽の光を浴びながら、「飛天弓 皆空」7尺が次々と豊かな弧を描く!

岡田 清
シマノインストラクター
岡田 清

1968年生まれ、神奈川県横浜市在住。
シマノジャパンカップへら釣り選手権大会は01年、02年と連覇し、03年は準優勝、09年に3回目の優勝をした。
ジャパンカップと同様に予選会のある全国大会で通算7度の優勝を記録。「日本最強のトーナメンター」またの名を「鉄人」「トーナメント・モンスター」とも呼ばれる。

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