へら釣り名手の釣行記 “一竿風月”

トーナメントモンスターが魅せる、
「春セット」の極意。【後編】

新機軸として話題を読んでいる「ボーダレス」シリーズ。釣り方のみならず魚種さえも超越した、まさに「境界なし」の全18種にも及ぶニューロッド群が大いに話題を呼んでいる。そしてついに発売された「へら鮒釣り」を中心に据えた「ボーダレスGL Nモデル」。コイやレンギョ等が掛かっても微動だにしない「剛」の印象から、春の野釣りシーズンとも相まって、今のところ大河川等での超長竿がクローズアップされている。
しかし、そこに待ったをかけたのが「トーナメントモンスター」の異名を取り、シマノフィールドスタッフでもある岡田 清だ。
「ボーダレスは短竿も最高だよ。特に椎の木湖なんかはベストマッチで、例会やトーナメントでも『飛天弓 皆空』と並ぶファーストチョイスになるんじゃないかな」
管理釣り場、しかも椎の木湖で「ボーダレス」…。
筆者は半信半疑で初春の椎の木湖を訪れた。
そこで展開されたのは、抜きバラケを駆使した春らしいメーターウドンセット。
そして、「ボーダレス」の意外なまでのマッチングと驚きの戦闘力だった…!

前編記事はこちら

「中途半端を愉しむ」

朝はスロースタートであることで知られる椎の木湖。それを見越して焦らず冷静に入った岡田は、ポツポツとカウントを重ねつつ、まずは釣りの骨格は大きく変えずにバラケの持たせ方をじっくりと探っていった。
そして、春らしい「オモリ付近抜き」というところに正解を見出した岡田は、8時を過ぎて徐々にへら達の活性も上がり始めたところで、いよいよ細部の「詰め」に入っていく。
「ここで勘違いして欲しくないのは、決して釣りを『決めよう』なんて思っていないってこと。椎の木湖では釣りが完全に決まってイレパクになることなんて夏でもないし、それは狙ってはいけないんだよね。俺も何度も痛い目を見てるけど(苦笑)。あくまでも、釣り全体の方向性をじんわりとアジャストさせていく…という感じで、アタリ方は完全に一定にならなくてもいい、という『気持ちの幅』も持っておくことが大切かな」

ボーダレスGL Nモデル」8で豪快なアワセを連発していく岡田。スキのないメーターウドンセットが炸裂していく。特にジワジワと釣りをアジャストしていった中盤以降の釣りは、圧巻の一言。椎の木湖のキロフィッシュを連発していく!

まず岡田が注目したのは「ハリス&ハリ」。それまで、ある意味では「冬仕様」であった下バリのセッティングを、上昇傾向にあったへらの活性に合わせてハリスを短く、ハリを重くしていく。下ハリスの長さは5cm詰められて35cmになる。
この変更に好感触をつかんだ岡田。アタリまでの「間」が詰まり、空振りも明らかに減少する。いわゆる「ヒット率が上がった」状況が生まれた。
「ここが難しいんだよね、椎の木は。これ以上追い込むと一気にアタリがなくなったり、逆にアタリ数はそこそこあるのに全然乗らなくなったりする。それでいつの間にか時間だけが過ぎていく、というパターン(苦笑)。今日の場合も、下バリを重くしたのは正解だと思うんだけど、ハリスの長さは30cmまでいくと急に釣れなくなる…いや、アタリはあるし、ポチポチは乗るんだけど、これがまたやっかいで、変にウキは動くから、気がついたら時間2枚ペースとかになってたりする。ここはもう、椎の木に通い込んで体に染み込ませる必要がある独特の感覚だろうね」

この日岡田が使用した「ボーダレスGL Nモデル」8及び、エサ付けの状態

釣りをアジャストする。
へら鮒釣りなら誰もが行う行為だろうが、シビアな大型池ではそれなりのアジャスト法が必要となってくる。まして「全てが中途半端」になりがちな春は、より慎重な対応が釣り人側に要求されるのだ。
「まず大切なのは、あまり難しく考え過ぎずに、アタリを消し過ぎないようにしながら釣っていくことだよね。アタるからって一気に下ハリスを短くしたり、バラケを強引に持たせたり…。ただ、その逆もあって、人よりアタリが欲しいからって冬のようなゼロナジミや長ハリスを押し通すのもまたダメなんだよね。冬の釣りをベースに、ちょっとずつ『強さ』を足していくのがいい。春は『中途半端を愉しむ』…くらいの気持ちでいくのがいいかな」
「中途半端を愉しむ」。いかにも岡田らしい、良い表現ではないか。

前触れを読み、リズムを構築。

岡田らしいといえば、「抜きセット」で4目盛出しというエサ落ちの設定もまた、「らしい」。
普通、ゼロナジミ前提の「抜きセット」ではエサ落ちを沈め気味に設定するのが一般的。だが岡田は「アオリを出しやすくするため」という理由からあえてトップを出し気味にし、ウキの浮力を引き出したセッティングを選択しているのだ。その理由はもちろん、「喰いアタリにつながる前触れを読みやすくするため」。
そしてある程度の探りも終わり、下ハリス&ハリを交換した後、岡田は満を持してウキをPCムクトップ仕様のタイプへとチェンジしたのだった。その理由はやはり、「前触れを読みやすくするため」に他ならなかった。

当日の使用ウキ左が最初に付けた中細パイプトップ仕様で、右がPCムクトップ仕様。同タイプのボディをトップの違いで使い分けることで的確なチョイスが行え、釣り幅はグンと増すことになる

「活性が低いと、トップに浮力の少ないムク系だと持ち上げるようなアオリが出にくくなる。だから最初はパイプから入ったんだよね。でも今日はムク系を許容する活性があることが十分に分かったから、換えた。もちろん喰いアタリ自体はパイプでも出るんだけど、頭の軽いPCムクにすることで、より前触れを読めるんだ。で、『これは待ったほうがいいな』とか、逆に『待ってはいけないな』っていう判断が付きやすくなる。その結果、釣りにリズムが生まれてくるんだよね。極端に言うと、パイプだとただ『アタリ待ち』のところを、PCムクだと前触れを読んで、待つのか待たないのかをどんどん決めていくことができるんだ」
ウキを換えてから、岡田の釣りはますますリズミカルに、そして実際に釣果も伸びていった。いい感じの「アオリ」が出ていればけっこうしつこく待って喰いアタリを仕留め、逆にアオリが弱ければもったいないほど早めに見切って次を打つ。このメリハリが釣りにリズムを生み出し、結果的に釣果となって表れていったのだ。

たとえ桟橋手前に潜られそうになっても、「ボーダレスGL Nモデル」8はその有り余るパワーによって余裕をもって引き出し、再び沖目で浮かせる。そのストレスの無さは、他ならぬ平然とした岡田の表情が全てを物語っている。ただ硬いだけでなく、しっかりと「曲がる」ことによってこそ成せる技だ。とにかく取り込みはスピーディーで、これは実際の例会やトーナメント本番で大きなアドバンテージになるはずだ

ヒアリング取材を兼ねた長めの昼食休憩を挟んだ後半は、まさに岡田 清の「春セット」の独壇場。絶妙なバラケのサイズ&圧加減でオモリ付近でフワリと抜き、下ハリスの倒れ込みで仕留める。
ベストなマッチングを見せるハリス、ハリ、そしてウキ交換によって、メリハリのある前触れを演出出来ていることが、釣果に直結していくのだ。
「まだ朝は寒いし、もっと渋いのかと思っていたんだけど、思ったより動いたよね。4月いっぱいくらいは今日みたいな『オモリ付近抜き』の抜きセットが主力になってくるとは思うんだけど、春は先入観を捨て、まずはじっくりと探ることが1日の釣果を大きく左右する。でも、そんなところがまた春の面白さなんじゃないかな。
あと、自分としては『ボーダレス』の椎の木湖での戦闘力を十二分に確認出来たことも、今日の大きな収穫だったかな。とにかくパワーがあってキロクラスと対峙してもストレスがないし、取り込みもとにかく速い。今日はメーターだったけどゴツ過ぎる感じもないし、もちろん、チョーチンでも絶対にいいと思う。他の釣り場でも、メーターは『皆空』、チョーチンは『ボーダレス』…なんてチョイスも面白いかもしれないよね」

見事、春の気難しい椎の木湖の大型を手玉にとった岡田 清。抜く位置とセッティングをアジャストし、最後はウキをPCムクトップに換えて「前触れを読む」ことでリズムを生み出す。まだチョーチンが強い状況下、メーターで周囲を圧倒するペースを構築してみせた

釣果、50枚43.67kg。文句なし、見事な釣りであった。

シマノインストラクター
岡田 清

1968年生まれ、神奈川県横浜市在住。
シマノジャパンカップへら釣り選手権大会は01年、02年と連覇し、03年は準優勝、09年に3回目の優勝をした。ジャパンカップと同様に予選会のある全国大会で通算7度の優勝を記録。「日本最強のトーナメンター」またの名を「鉄人」「トーナメント・モンスター」とも呼ばれる。

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