へら釣り名手の釣行記 “一竿風月”

夏野釣り開幕。「ボーダレス」でヤマを愉しむ!! 【後編】

梅雨の晴れ間、颯爽と精進湖にその姿を現した、競技野釣りの名手・シマノインストラクター西田 一知。
「今日は貴重な晴れだから、思いっきりヤマのチョーチン両ダンゴを愉しみたいですよね。」
最盛期の釣り場の代名詞とも言える富士五湖を、釣り人達は愛着と畏敬の念を込めて「ヤマ」と呼ぶ。そして西田の右手には、この春、シマノが放った新機軸「ボーダレスGL Nモデル」が。大河川等での超長竿や、はたまた大型主体の管理釣り場だけでなく、「ヤマのような湖水での釣りにも最高ですよ」と西田は太鼓判を押す。
天候不順による不調も伝えられていた精進湖。しかしこの日、雄大な「子抱き富士」に見守られながら、西田は貫禄の釣りを展開していく。

前編記事はこちら

エサを開かせ、さらに攻撃的に。

9時には30枚をクリア。ここまでですでに1日の想定枚数をクリアしており、申し分のない釣りだった。しかしこのあたりから朝の喰いのいい時間帯も終わり、ウキの動きが落ち着き始める。
「ちょっと地合は落ち着いてきちゃいましたが、もう少し何かある感じですね。」
ここで西田は、エサに着目。ブレンドの中から「カルネバ」を外し、代わりに「GTS」に置き換えた基エサを作ったのだ。
ネバリが強くエサに芯ができる「カルネバ」。そして、軽く、ザックリと開く「GTS」。正反対のエサに置き換える思い切った対応、その心はいかに。
「精進湖って傾向として開くエサに反応がいいんです。今日は深いタナは渋いって聞いていたんで、安全策という意味でも今日はまとまり感のあるエサから入りました。ただ実際にここまでやってみると、それほど渋い感触はない。ハリスを伸ばしてさらに攻めても、悪くない感じでした。今ちょっと地合が落ち始めてきましたが、もう少し開くエサの方が反応をもらえるかもしれないと思ったんです。これでダメなら、この方向はないということ。ただ今日の精進湖なら、試してみる価値はありますよ。」
軽くて開きのいい「GTS」を配合したエサにチェンジする。すると、精進湖のへらは即座に反応した。

●エサ

GD
200cc
GTS
200cc
凄麩
200cc
バラケマッハ
200cc
250㏄

硬めに仕上げた基エサに手水を加えながら様子を見る。持たなくなったら『BBフラッシュ』をパラっとやり、入るようになってしまったら基エサに戻る…というローテーションを、こまめに回していく。
エサ付けのサイズとチモトを押さえる「圧」は常に一定にし、何かを変化させる時はボウルの中のエサを大胆にいじっていく西田。普通は逆で、まずはエサはそのままに、手元で簡単にできるエサ付けの変化で探っていくのがポピュラーなやり方だろう。しかし西田は逆なのだ。
エサ打ちそのものをよりスピーディに、かつ釣れる状態を長続きさせる。
厳しい例会で培った西田ならではのノウハウは、尋常ならざるイレパクを呼び込む「心臓部」である。
そんな西田の超攻撃的な釣りと、「GTS」を加えて開きを増したエサとが、強力にリンクした。
「うん、やっぱりこのエサでも釣れますね、今日の精進は。」
ギヤが一段上がる、というのはまさにこのことか。
時間帯的な地合落ちもなんのその。全てを弾き飛ばすかのようなハリケーンのような釣りが始まった。
激しく突き上げるようなウケから、そのまま「ダッ」と決める!

雄大な「子抱き富士」に見守られながら、深場から良型を引き抜く。

攻撃こそ最大の防御。風流れを味方にする。

エサを変えた後の西田は、まさに圧巻のペース。10時50分には50枚、そして11時20分には60枚をクリアし、このままではいったいどれだけ釣ってしまうのだろうというほどだった。
筆者も聞いていた情報から厳しい状況を想定していたが(それはそれで見応えがあるが)、思わぬ大釣りに興奮を隠せない。
しかし、西田は冷静だった。
「風が吹きますね。流れが出ないといいんですが…。」
西田の予感は的中してしまう。

安心の強さを感じさせながらも、思った以上にしなやかに曲がる「ボーダレス」。巨べら釣りだけでなく、「普通の釣り」にもバッチリ。斬新なデザインも、不思議なほどヤマの景色に違和感なく溶け込んでいた。

左後ろからゆるゆると吹き始めた風は、あっという間にその風速を上げ、釣り人達のウキを容赦なく流し始めた。天気は下り坂の予報である今日、風はさほど強くなる予報ではなかったのだが、やはり山の天気は気まぐれだ。
左から右へとみるみるうちに流されていくウキ。西田の対応は早かった。
まず、それまで手水で微妙に軟らかくしながら使っていた基エサに、やや多めに「BBフラッシュ」と「凄麩」を絡めて硬めに。1粒投げてもらうと、指の腹を押し返すような、かなりしっかりとした硬さのあるボソタッチになっていた。
このエサを同じように小さめに付け、正面よりやや左にエサを落とし込む。ウキが立ってナジミに入るところで真正面にくる感じで、それまで同様、そこからナジみきるまでのアタリに的を絞る。ウケやサワリが弱ければ、アタリまでは待たず、即切り。いい感じで前触れが出ていた時だけ、竿先でウキを追いかけるようにして、少しだけ待つ。

日中は右への風流れが強まりペースダウンを余儀なくされるが、「エサは硬めに、持たせ気味に。やや左に打ち、ウキが立つタイミングで正面に。竿先でウキを追いかけながらも、サワリが弱い時は即切り。狭い範囲に喰い気のある魚を凝縮させる」…という対処法でペースダウンを最小限にとどめる。風が強いからといってウキを大きくしたり、竿で支えて待つような釣りには持っていかないのが西田流。可愛いゲストも西田の釣りを称賛!?

「基本的には待たずに、狭い範囲に喰い気のあるへらを凝縮させてタイミングで釣っていくような感じですね。」
あまりの風の強さと流れに、周囲の釣り人達は次々に早上がりしていく。
「一気に流れが強くなっちゃいましたねぇ。でも、悪いことばかりじゃないんですよ。ほら!」
風の中、早いアタリで豪快に「ボーダレス」を曲げる西田。確かな手応えに、思わず頰が緩む。
バシャッ!
豪快な水飛沫とともにタモに収まったのは、地べら化したキロクラス、それも腹パンの見事な魚体だ。

ハリスを伸ばし、エサを開かせ、いかにも西田らしい超攻撃的なチョーチン両ダンゴを決めた。

「開くエサをテンポよく打っているから、喰ってくるのはより喰い気も体力もある良型が多くなるんです。この風の中、頑張っているご褒美ですね(笑)。」
まさに、攻撃は最大の防御なり。
精進湖の活性を見切り、信頼し、あえてさらに一段攻撃のギアを上げることで、厳しい風流れの中でも確実に素晴らしいへらを拾い続けたのである。

ウキに負荷をかけないよう、あえて流しながら釣る。流す範囲を決めることで、へらの寄りを凝縮させ、リズミカルに打ち続ける。風流れへの対処法も、いかにも西田ならでは。ぜひ参考にしたいノウハウだ。

13時半、ついには釣りにならなくなるほど強まった風と波に竿を置いた時、西田のカウンターは「74」を表示していた。風が吹かなければ100枚オーバーは確実だっただけに釣果的には悔やまれるが、代わりに素晴らしいノウハウを披露してくれた格好だ。
「やっぱり夏のヤマは愉しいですね。梅雨が明ければもう最高の季節ですよ。」

強烈な風流れの中、粘釣を続ける西田。開くエサとの相乗効果か、釣れてくるへらもご覧のような腹パン良型が多数。小さくても2枚キロ以上という型揃いで74枚と、見応えある釣りとなった。

シマノインストラクター
西田 一知

1969年生まれ、東京都在住。
関東へら鮒釣り研究会で97年、09年、10年、11年に年間優勝して史上5人目の横綱位に就く。09年シマノへら釣り競技会 野釣りで一本勝負!! 第3位。30尺の使い手で長尺の釣技に長ける。「関東へら鮒釣り研究会」「コンテンポラリー・リーダーズ」所属、「KWC」会長。

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