へら釣り名手の釣行記 “一竿風月”

夏野釣り開幕。「ボーダレス」でヤマを愉しむ!! 【前編】

梅雨の晴れ間、颯爽と精進湖にその姿を現した、競技野釣りの名手・シマノインストラクター西田 一知。
「今日は貴重な晴れだから、思いっきりヤマのチョーチン両ダンゴを愉しみたいですよね。」
最盛期の釣り場の代名詞とも言える富士五湖を、釣り人達は愛着と畏敬の念を込めて「ヤマ」と呼ぶ。そして西田の右手には、この春、シマノが放った新機軸「ボーダレスGL Nモデル」が。大河川等での超長竿や、はたまた大型主体の管理釣り場だけでなく、「ヤマのような湖水での釣りにも最高ですよ」と西田は太鼓判を押す。
天候不順による不調も伝えられていた精進湖。しかしこの日、雄大な「子抱き富士」に見守られながら、西田は貫禄の釣りを展開していく。

西田流超速攻。ウキが立った直後から「喰わせにかかる」。

冷たい雨が続く梅雨…。
思わず気分も沈んでしまいがちな季節だが、待望の晴れ間がやってきた。
6月14日(金)。この機を逃さじと、西田一知は精進湖を訪れた。
「ここのところの梅雨空のせいか、ちょっと喰いが落ち気味でねぇ。」
舟宿である「ふじみ荘」のご主人が屈託なくそう言って苦笑いする。
「このロケーションの中、何枚かでも釣れれば大満足ですよ。それに出来れば浅ダナではなく、チョーチンで釣りたいですよね。引き味を愉しみたいですから。」
苦戦も覚悟で5時、出舟。
目の前の雄大な「子抱き富士」に歓迎されながら向かったのは、至近の「天神ロープ」。看板前、岸を向いてボートを固定する。

継続的な放流が実り、湖が非常に健全な状態に保たれている精進湖。近年はアベレージサイズも上がり、「良型の数釣り」が愉しめるのが最大の魅力だ。釣り方は宙釣りが主力で、今年は浅ダナでも高釣果が出ているが、やはり富士に抱かれ深場から良型を抜き上げる釣趣は格別。

●竿
シマノ【ボーダレスGL Nモデル】16.5尺
●ミチイト
1.25号
●ハリス
上下0.5号 55―70cm
●ハリ
上下「バラサ」7号
●ウキ
PCムクトップ19.5cm 羽根B11.5cm 竹足6cm

エサ落ち目盛は、全11目盛中2目盛を沈めた位置

●エサ

GD
200cc
カルネバ
200cc
凄麩
200cc
バラケマッハ
200cc
250㏄

まず真っ先に目につくのは、やはりウキのサイズ。西田のチョーチン両ダンゴの時のウキの小ささは知られたところだが、実際に目の当たりにすると、やはり違和感があるほど小さく感じる。西田がセットしたウキのサイズなら、12尺くらいの竿が普通だろう。

取材時も梅雨時とあってタナは高めだったが、天神ロープに入った西田は釣果度外視でやや長めの「ボーダレスGL Nモデル」の16.5尺をチョイス。さすがの釣りで、予想以上の釣りを展開していった。

小さなウキでゆっくりと落下させ、きわめて自然な状態を作り出しておき、ウキが立ち上がった直後から喰わせにかかる…。そんな超速攻のチョーチン両ダンゴこそが、数々の激戦を制してきた西田一知の「代名詞」だ。
「一番釣れているのが浅ダナって聞いたんで、竿はちょっと遠慮して短めです(笑)。本当は18尺以上を出したかったんですけど、たぶんそれだと深過ぎると思います。このくらいでアタってくれると愉しいんですけどね。」 そう言いながら、富士をバックにエサを打ち始めた西田。ボソ感が残る硬めに仕上げられたエサをキュっとチモトを押さえ、まずは軽快にナジミ切りを繰り返していく。晴れてはいるが、空気はひんやり。なんせ出舟時の気温は10度。レインウェアを羽織っていなければ寒いくらいだ。

ヤマの定番、チョーチン両ダンゴ。小ウキを駆使するのが西田流だ。竿16.5尺でサイズ11番というのは、かなりの小さめだろう。そこに軽いハリ、さらに意識的なピンポン状態を生み出すべくボソの残る硬めの小エサを組み合わせて、ウキが立った直後から「喰わせにかかる」超速攻が西田の真骨頂だ。

「今年はこの冷え込みも喰いに影響しているんでしょうね。精進湖は晴れるとあからさまに喰いが立つ傾向があるので、今日はそれに賭けましょう。」
1日やって30枚も釣れれば御の字か…。傍で見ている筆者も、そんな呑気な心持ちで西田の釣りを追っていた。
しかし…!

“ファッ…、チャッ!”
いきなり濃密なウケから連動した付け根付近の早いアタリで「ボーダレス」が大きな弧を描いた。
「うん、今のはいい感じだったね。」
西田も納得の早いアタリ。水面に浮上したのは、コンディションのいい尺級の綺麗なへら鮒だ。
「ウキが立った直後にウケが出るということは、タナが合っている証拠。確かにもっと上にいる感触もなくはないけど、これだけウケが出れば16.5尺でも何とかなりそうですよ。さすがにこれ以上長いと(へらの層を)突き抜けちゃう感じなので、結果的にはちょうどよかったかもしれません。」
竿の長さのチョイスに自信をのぞかせる西田。約15秒程をかけてゆっくりと立ち始めるウキは、直後から濃厚なウケを見せ、そこから2目盛残しまでナジみきるまでの間に「チャッ!」と落として次々とへらを乗せていく。

椎の木湖で使用した岡田 清も断言していたが、「ボーダレスは普通の釣りにも絶対的に、いい」。特に短・中尺ラインはよりしなやかさが強調されていて、非常に扱いやすい竿に仕上がっている。もちろん「ボーダレス」らしい強靭さもあるので、ガンガン釣り込む例会の釣りにもバッチリ。スレ掛かり時や、例えば精進湖で大コイが掛かってしまったような時でも余裕をもって対処できるのも心強い。

「この『ボーダレス』という竿、こういった湖水釣りでのチョーチンにも最高に使いやすいですよね。21尺以上になるとさすがにズッシリとした感触が強くなるんですけど、短・中尺は十分に軽いし、意外なほどしなやかに曲がってくれます。例会でガンガン攻める釣りには最高だろうし、今日みたいにゆったり愉しむ釣りにだっていい。竿の性能的にも『朱紋峰 煉』や『朱紋峰 嵐月』にも決して引けを取っていません。特に精進湖は大きなコイもいたずらするから、安心感もありますよね。」

精進湖でのチョーチン両ダンゴ。深場の良型と余裕を持って対峙しながら、意外なほどしなやかに曲がり、「釣り味」も存分に愉しめる…。
結果的にベストな選択となった長さと相まって、「ボーダレス」のポテンシャルを存分に引き出すシチュエーションに、西田の釣りはますます冴え渡っていく。

ハリスを伸ばし、へらの活性に応える。

「この感じなら、もう少し攻めてもいいですね。」
7時、16枚に到達。ここで西田はハリスを伸ばし、55―70cmから60―75cmに変更する。渋いから伸ばすのではなく、「応えてくれる」だけのへらの活性があるからこそ長くし、さらに攻めるのだ。
いかにも西田らしい発想で、ウキの動きはますます活性化していく。
「いいですね。正直、事前に聞いていた情報からは、ここまでいい感じで釣れるとは思っていませんでした。やはりこの天気がいい方に作用したのかもしれません。やっぱり釣りは来てみなければ分かりませんね。」
付け根でたっぷりとウケが出て、そこからナジみきるまでに「チャッ!」と決める。ハリスを伸ばしたことで、付け根からエサ落ち目盛通過付近で出るごく早いアタリでも乗り始めた。チョーチン両ダンゴとしては、まさに申し分のないアタり方だ。
来てよかった。そして、このままでも申し分のないペース…。
筆者はそう感じながら、西田の釣りに酔いしれていた。

雄大な「子抱き富士」に見守られながら、深場から良型を引き抜く。

富士をバックに、気持ちよさそうに竿を曲げる西田。我々はもう慣れきってしまっているが、改めて目の当たりにすれば信じられないようなロケーションである。
「やっぱり気持ちいいですよね、ヤマの釣りは。」
へら師から愛着を持って“ヤマ”と総称される富士五湖の釣り。夏の代名詞を、存分に愉しむ。

シマノインストラクター
西田 一知

1969年生まれ、東京都在住。
関東へら鮒釣り研究会で97年、09年、10年、11年に年間優勝して史上5人目の横綱位に就く。09年シマノへら釣り競技会 野釣りで一本勝負!! 第3位。30尺の使い手で長尺の釣技に長ける。「関東へら鮒釣り研究会」「コンテンポラリー・リーダーズ」所属、「KWC」会長。

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