へら釣り名手の釣行記 “一竿風月”

中澤 岳 in 筑波白水湖「朱紋峰 本式」&「飛天弓 柳」名手、
しなやかな竿で晩秋を釣る。【後編】

道具を担いで釣り座へと向かう時のワクワク感は何年やっても変わらないと、名手・中澤 岳は言う。
秋も深まり、いよいよ冬の足音も感じられる季節・・・。
飽くなき探求心でへら鮒釣りと対峙し続ける中澤にとって、最もやりがいのある季節かもしれない。
「せっかく新べらも放流されたので、今日は浅めのポイント、しかも両グルテンの底釣りから入ってみるね。白水湖の新べらは小ぶりでも肩が張って引きも強く、最高に愉しいんだよね。」
晩秋の筑波白水湖。朝霧立ち込める中、再奥のさくら桟橋に入った中澤。
さあ、今日はいったいどんな1日が待っているのだろうか。

前編記事はこちら

釣りは全てつながっている・・・。両ダンゴの宙釣りへ。

結果的にはこの日、中澤の「この時期だからこその大ウキ」という理論が面白い展開を呼び寄せることとなる。
「午後はちょっと釣り込んでみようかな。」
午前中、底釣りで30枚を釣った中澤。昼食休憩を挟んだ午後は、宙釣りにチェンジするという。
この水深なら「浅ダナセットか?」と筆者は予想したが、それは不正解。タナもエサも違っていたのである。

●竿
シマノ【飛天弓 柳】13.5尺
●ミチイト
0.8号
●ハリス
0.5号 35―43cm
●ハリ
6号
●ウキ
パイプトップ12cm 羽根B7cm カーボン足7cm エサ落ち目盛は全9目盛中、2目盛沈め
●水
100cc

●エサ

凄麩
200cc
バラケマッハ
200cc
カルネバ
200cc
パウダーベイトヘラ
100cc
●水
200cc

タナは1.5m。エサは両ダンゴ・・・。「カッツケセット」という筆者の予想は見事に外れた。
不満そうな筆者に、中澤は実際に釣りながら丁寧に解説してくれた。
「まずタナだけど、底釣りをやっている時に『ちょい上にいるな』って感じていたんだけど、そのとおりだったね。ほら、浅くすると見事に反応が薄くなるでしょう?」
カッツケまで試してくれた中澤だったが、魚が見えるどころか、浅くすればするほどサワリすら消えていった。そしてまた深くしていくと、はっきりと強いアタリが増えていくのだ。
またセットにしなかったのは、やはり底釣り時にダンゴへの強い反応を感じていたから。釣れなくはないだろうが、釣りづらさが際立つはずと踏んだのだ。
そしてそのことは、中澤の釣れっぷりが見事に証明していた。両ダンゴの宙釣りに切り替えてから、底釣りを凌駕するイレパクなのだから・・・。

待ち気味の底釣りを楽しんだ後、午後は宙釣り両ダンゴへとスイッチした中澤。竿は「飛天弓 柳」13.5尺で、「朱紋峰 本式」と同じくしなやかな竿だが、細身でシャープ感が際立つ。そして底から宙への変更は思いつきではなく、底釣り時の状況分析から導き出された、全て計算づくのものだった。午前中の底釣りが「爆釣への布石」となっていたのだ。釣りは全てつながっている・・・。そう思わずにはいられない変更後の怒涛のイレパクは、底釣り時での「ちょい上にいる」という状況分析と、ダンゴへの好反応から理詰めで辿り着いたもの。セットでもなくカッツケでもなく、底ちょい上の両ダンゴで早く鋭いアタリが連発していった。そしてここでも、「ウキのサイズ」に対する中澤ならではのこだわりが光ることとなる。またエサに関しても、春先やシーズン終盤ほど思わず軟らかいエサにしたくなるが、実は逆だと中澤。むしろやや硬めで塊感のある固形チックな小エサをしっかりウケさせることがキモとなるという。

「ブレーキング理論」。

宙釣りもまた驚くべき釣り、驚くべき展開だった。
最初に中澤がセットしたウキは、ボディ7㎝。浅ダナとしては大きめのセッティングで、いくらタナが深めとはいえ、この季節である。最初はこのサイズから入ってだんだん小さくしていくものだとばかり予想していたのだが、実際は「逆」だったのだ。
「底ちょい上の宙釣り両ダンゴ」に手応えを感じた中澤は、何枚か早いアタリで旧べらを引くと、すぐさまウキをチェンジした。
ボディ6cm?いや、5cmか・・・?
しかし、中澤が付け替えたウキは、予想だにしないサイズだったのである。
なんと、ボディ10cm。ペレ宙用の、トップも太いものだった・・・。
ならば、ハリスは長くするのか?
いや、そのままだ・・・。
「やっぱりウキが小さ過ぎたね。いや、もっと大きくしたいくらいだなぁ。」
飄々と打ち返す中澤。付け根付近でウケたかと思うと、そのまま「タッ!」と落として怒涛のペースに突入していた。再び新べらも交じり始める。

秋の高い青空に大きな弧を描く「飛天弓 柳」13.5尺。中澤が攻めたタナは「浅過ぎるとアタリが飛ぶ。やっぱり魚は底ちょい上に一番いたがっている感じだね」と、ウキ下1.5m。水深は約2mだから、だいたい50㎝くらい底を切っているイメージだ。そしてその宙釣りは「チョーチン両ダンゴのイメージだね」と、付け根付近で勝負が決まる超速攻。大きめのウキによりハリスを立たせ、そこからハリスが張り切るまでにアタらせる、いかにも中澤らしい釣り。宙釣りも大ウキがキーポイント。タナで急ブレーキを掛けて一気にテンションを抜き、へらを振り向かせるのだ。

「ウキを大きくした方が俄然アタリも多くなったし、早くなった。不思議だね。これだからへら鮒釣りってやめられないんだよなぁ。」
後半は「飛天弓 柳」13.5尺で宙釣り両ダンゴを試した中澤。ボディ7cmのウキから入ったが、なんとウキを大きくしていく方向に進み、10cm、12cmとしたところで決まりが出た。タナまでは一気に下ろし、フワっとエサをバウンドさせるようにブレーキをかけ、リアクションバイト的にへらを振り向かせる・・・。秋や春先の活性の低さを逆手にとったような手法で、超速攻でのイレパクを演じてみせた。7cmでも大きいと思ったウキが最終的には12cmになったのも驚いたが、それをさも当たり前のように実践してみせた中澤には驚きの一言。飽くなき探究心で理想のへら鮒釣りを追い求め続ける氏ならではの、個性溢れる釣りだった。

誤解しないでほしいのだが、この日の白水湖は11月も半ば。水面で湧いているわけでもなく、ウキが立ちづらいほどの寄りがあるわけでもない。水面はいたって静かなのだ。
「これって春先も効くんだけど、季節的な活性が低いからこそ、パっと落としてパっとテンションが抜けた時にリアクション的にへらが振り向くんだよね。これが小ウキでメリハリなく広範囲にヌボーっと落としちゃうと、そのまま振り向かずに通り過ぎちゃうみたいな・・・。これはイメージでしかないんだけど、経験的にも春や秋の方が大きめのウキでやった方が早いアタリが出るような気がするんだよね。しかもこれは、管理釣り場でも野釣りでも共通しているような気がする。さらに言えば、底釣りでもそう。重めのオモリで引っ張り、パっとタナでブレーキをかけるように止まって一気にハリスへのテンションが解かれた時にへらがハっと振り向く、というようなね。」

「中澤 岳のブレーキング理論」

中澤ファンなら、過去の中澤の雑誌の記事等で見た覚えのあるフレーズではないだろうか。なぜなら、他ならぬ筆者もそれを書いたことがあるから・・・。
ラスト、中澤はさらにウキをボディ10cmから12cmにサイズアップ。イメージどおり付け根付近でのさらに早い「振り向き」のアタリを連発させると、季節感のない怒涛のペースへと突入していった・・・。
午前中は底釣りで30枚。午後は宙釣りで50枚(!)。計80枚、まさに名手・中澤 岳ならではの、個性溢れる晩秋の爆釣劇となった。

どこまでもふくよかでやわらかい感触の「朱紋峰 本式」と、細身でしなやかながら、どこか芯のあるシャープ感の「飛天弓 柳」。両者のキャラクターが、味わいのある底釣りとスピーディーな宙釣りに、見事にハマった。

晩秋の楽しき一日を彩った、しなやかな二品。

シマノインストラクター
中澤 岳

1955年、茨城県生まれ。
86年シマノジャパンカップへら釣り選手権大会準優勝、マルキユーゴールデンカップ優勝。06年と12年JC全国進出。07年と11年にシマノへら釣り競技会 野釣りで一本勝負!! 優勝。大学時代に学釣連大会の連覇記録達成。「関東へら鮒釣り研究会」所属、「クラブスリーワン」会長。

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