へら釣り名手の釣行記 “一竿風月”

中澤 岳 in 筑波白水湖「朱紋峰 本式」&「飛天弓 柳」名手、
しなやかな竿で晩秋を釣る。【前編】

道具を担いで釣り座へと向かう時のワクワク感は何年やっても変わらないと、名手・中澤 岳は言う。
秋も深まり、いよいよ冬の足音も感じられる季節・・・。
飽くなき探求心でへら鮒釣りと対峙し続ける中澤にとって、最もやりがいのある季節かもしれない。
「せっかく新べらも放流されたので、今日は浅めのポイント、しかも両グルテンの底釣りから入ってみるね。白水湖の新べらは小ぶりでも肩が張って引きも強く、最高に愉しいんだよね。」
晩秋の筑波白水湖。朝霧立ち込める中、再奥のさくら桟橋に入った中澤。
さあ、今日はいったいどんな1日が待っているのだろうか。

「朱紋峰 本式」16尺、沖底。

浅場の沖にたまる新べらを意識した両グルテンの底釣り。エサは集魚力とエサ持ち、そして適度な比重を出している中澤お気に入りのブレンドだ。
トップがゆっくりと沈む程度の大きさのタナ取りゴムを上バリに刺し、上バリトントンのタナにセットする中澤。グルテンはエサが軽めなので、いきなり大きくズラさず、まずは「軽め(浅め)のタナ」ではっきりとアタリを出していくのがセオリーだという。

釣り人で賑わう南中央、東、中央、筑桜…の各桟橋を尻目に、中澤が向かったのは比較的浅めの「さくら桟橋」であった。すでに新べら放流も始まっている筑波白水湖。浅場にたまる新べらを両グルテンの底釣りで狙う。竿は「朱紋峰 本式」で、やや長めの16尺をチョイス。味わいのある本調子の「朱紋峰 本式」で、元気な新べらの引きを存分に愉しむ算段だ。

「この竿、たまに無性に振りたくなるんだよね。今日みたいな釣りにも、ものすごく振り込みやすいし、何より釣り味は最高。シマノらしい、ゆったりと胴が機能する本調子なんだ。例会でガツガツ釣るような竿ではないかもしれないけど、これから寒くなるにつれて1枚が大切になってくると、どんどん出番が増えてくる竿だよね。」

この日はへらバッグ&ロッドケースの他にシマノのお洒落なバッカンタイプのサブバッグを持ち込んでいた中澤。軽量かつ汚れや雨にも強いアイテムで、管理釣り場だけでなく野釣りでも活躍しているという。また間仕切り風のハードインナートレイも付属していて、仕掛けやハサミ、万力、小さめのエサボウル等を収納できるので、身近な野釣り等ならへらバッグ要らずで気軽に持ち出せる。
●シマノ タックルボートバッグ(ハードタイプ)
BK-001Q ¥11,900〜14,500
22L、27L、32Lサイズあり
ベージュウィードカモ、ブラック、ホワイトあり(中澤は27Lのベージュウィードカモを使用)
インナトレー無しの廉価版(BK-002Q ¥9,500〜11,500)もあり

鮮やかな落とし込みで静かにグルテンを沖へと送り込んでいく中澤。エサが着水すると、フワリと竿を送ってウキを静かに着水させる。ウキが立つ位置より50㎝ほど先にエサをピタリと落としていく。
何度かウキ下を微調整し、はっきりと2目盛がナジむようになった頃、早くもウキに反応が出始めていた。
「けっこうジャミがいるね。少し我慢かな。」
確かにフワフワとした軽めの動きが連続するものの、なかなかアワせるようなアタリはない。以前から水況の良さでは定評のある白水湖。へら鮒だけではなく、タナゴ等のジャミも元気だ。
15分ほど打つと、ジャミのサワリがフっと静かになった。中澤の眼光が鋭くなる。へらが寄ってきたのだ。
しっかりと2目盛がナジみ、10秒ほど待つとフフッと返しが出る。さらに待つと、エサ落ち目盛付近まで上げてきたところで「チクッ!」と小さく落とした。
「来たね。しかもいきなり新べらだよ。」

ピンポイントに沖目にエサを落とし込んでいく中澤。しなやかに大きく曲がる「朱紋峰 本式」。その引き味は言うに及ばず、何と言っても卓越した振り込み性能が秀逸だ。

キュンキュンと糸鳴り。ふわりとやわらかくその引きを受け止める「朱紋峰 本式」の大きな曲がりが青空に映える。
浮上したのは、背中が盛り上がった見事な姿の新べらだった。
「サイズはそこそこだけど、この綺麗な形が白水湖の新べらの特徴だよね。しかもエサをよく追う働き者なんだ。」
思わず頰が緩む中澤。さあ、新べらのイレパクか・・・。

「小さなウキでの底釣りでいい釣りをした覚えがないんだよね」と、中澤の底釣りは大きめのウキをチョイスするのが基本。素早く底までエサを届け、キレのある返しとアタリで早い勝負に持ち込む。そしてこの日、新べらを念頭に両グルテンで入った中澤だったが、やや旧べらが多め。そこですかさず両ダンゴにチェンジし、安定してアタリを出していった。両ダンゴはペレット風味が効いたパンチのあるエサをチョイス。ジャミや旧べらに負けずにしっかりと持って、やや待ってからの「返してチクッ!」という底釣りらしいアタリで安定ペースに乗った。

しかし・・・。
「ちょっとへらが底から離れたところにいる感じかな。アタリが遅いじゃない? この釣り(両グルテン)だったら、もっと早いアタリで釣りたいよね。」
釣れなくはない。新べらも交じる。しかし確かに中澤の言うように、少々アタリが「遅い」のだ。
「待たないとアタらないってことは、へらが底に付いていない証拠。ビッシリと底にいるならもっと早くアタってくるからね。」
待って、返して、待って、チク。これはこれで申し分のない底釣りである。しかし、中澤の頭の中にはすでに「次の展開」が浮かんでいたようだ。

待って、返して、チクッ!底釣りならではのアタリをとらえ、「朱紋峰 本式」が大きな弧を描く。狙い通りの綺麗な新べらに思わず頰が緩む。白水湖の新べらはサイズに関わらず「形」がいいことで知られ、その引きは強烈。小気味良い糸鳴りを響かせる。アタリを送り気味としていることもあり、ダブルも交じる。しかしその地合は中澤が思い描いていたものとは違っていたようだ・・・

なぜ「大ウキ」なのか。

底釣りでは大きめのウキをチョイスすることで知られる中澤。過去の実績でも、中澤が底釣りで爆釣を記録する時には必ず大きなサイズのウキがセットされていたと記憶する。
そして、この日の筑波白水湖。水深2mの底釣りで、なんとそのボディサイズは14㎝だ。16尺いっぱいの底釣りでもおかしくない、いや、それでもまだ大きめのサイズである。これではさすがに大き過ぎやしないか?

そんな素朴な疑問を中澤に投げかけてみた。すると・・・
「うん、夏だったらさすがにもう少し小さめにするかな。」
その返しに、頭が混乱する・・・。
寒くなってきたからこそ、もう少し小さめの方がいいのでは・・・?
思わずそう呟くと、さらに中澤はいたずらっぽく次のように返す。
「もう少し大きくてもいいかなぁって思ってるところだよ。でもさすがに16番じゃ見た目がアレかなぁと(笑)。」
狙っているのは「両グルテンでの速い釣り」のはず。ならばなおさら、ウキは小さくした方が早いアタリが出るような気がするのだが・・・。
「逆なんだよね。そもそも時期的にエサを追いかける力が弱いんだから、ウキを小さくしたところでただボケるだけ。その点、夏場の方がエサを追いかける力が強いから、ウキを小さくするメリットが出る。実はこれって宙釣りでも同じ理屈なんだよ。例えばチョーチン両ダンゴをイメージしてみて欲しいんだけど、春先はパイプトップで、夏になるほどムクトップとロングハリスでエサを動かしながら釣っていくじゃない?アレがまさにそうで、もしもゆっくり落とした方がいいなら逆になるはずでしょ。活性があるからこそ、エサを広範囲に動かしても追ってきてくれるんだ。
底釣りでいい釣りをする時って意外とウキは大きめ。オモリは大きくしてメリハリを付けてあげた方が早いアタリが出るような気がするね。それで早いアタリが出ないっていうことは、魚自体が底にいたがらない状況ってことだと思う。まさに今みたいに、かなり待ってからじゃないとアタらないじゃない?これって喰い気のあるへらが底よりちょい上にいて、なおかつ軽いエサを追いかけてバクっとやるような地合じゃないんだ。これならむしろ両ダンゴの方がいいと思うよ。エサ自体に魅力があるから、ちょい上にいるへらを逆立ちさせる力が強いからね。」

●ダンゴの底釣り夏
50cc
●ダンゴの底釣り冬
50cc
●ペレ底
50cc
●ペレ道
15cc
●水
100cc

有言実行。
ウキこそサイズアップはしなかったものの、エサはグルテンを諦め、ペレット風味が効いたスパイシー(?)な両ダンゴにチェンジする中澤。そして、その効果はてきめんだった。
「ジャミがいるのも両ダンゴの方が釣りやすい理由かな。でもそれだけじゃないね。もっとへらが底にビッシリいれば、両グルの方が勝負は早いはずだよ。新べらもひとまわり口を使ってちょっとひと段落、という感じなのかもしれないね。」

抜けるような青空に美しい弧を描く「朱紋峰 本式」。両ダンゴに変えてペースは上がり、良型の新べらも交じる。

両グルテンより1目盛多い3目盛がナジむ。そこから「返し」に入るまでの間が、両グル時より明らかに短い。落ち込みで飛びつくほどの活性と濃さもないまでも、エサの魅力自体が増したことで、エサが底に付いてからへらが振り向くまでの「間」が明らかに詰まったのだ。
「もっと釣るならウキを大きくするか、宙だろうね。」
中澤はそう言うと、「ナジんで返してチクッ!」でコンスタントに「朱紋峰 本式」の引き味を楽しんでいった。

シマノインストラクター
中澤 岳

1955年、茨城県生まれ。
86年シマノジャパンカップへら釣り選手権大会準優勝、マルキユーゴールデンカップ優勝。06年と12年JC全国進出。07年と11年にシマノへら釣り競技会 野釣りで一本勝負!! 優勝。大学時代に学釣連大会の連覇記録達成。「関東へら鮒釣り研究会」所属、「クラブスリーワン」会長。

PAGE TOP