へら釣り名手の釣行記 “一竿風月”

萩野 孝之 in 土浦新川
「飛天弓 閃光P」長竿で真冬の野を堪能する【前編】

激戦の秋を終え、季節はいよいよ凍てつく冬。
今年もビッグトーナメントを制した「絶対王者」は、野に還る・・・。
「釣れるかどうか分からない冬の野釣り。それも型がいいとなれば、もう最高だよね。」
そこには競技者としてではなく、1人の釣り人としての萩野 孝之の横顔が。
そう、この男は勝つことが好きなのではなく、「釣り」が好きなのだ。
そして、だからこそ「強い」のだと・・・。
冬になるとやってくる大好きな釣り場、茨城県・土浦新川。
王者の帰還を歓迎するかのように、そこには最高のへら鮒と最高の「試行錯誤」が待っていた・・・。

土浦新川、釣れ始まる!

12月12日(木)。朝焼けの土浦新川駐車場に、萩野 孝之の姿。
例年、冷え込みが厳しくなるにつれて大型が釣れ始まる茨城県土浦市、霞ヶ浦に直結する「土浦新川」。ポイント背後の下水道処理施設から流れ出る温かい温排水を求め、へら鮒やブラックバスが集まってくる。「釣り場」として整備され、釣り人専用の駐車場も整備されているのもありがたい。そして過去に萩野もここで何度もいい釣りをしているという。

競技の時とはまたひと味違った柔和で真剣な表情を見せる萩野 孝之。さて、今日はどんな釣りが待っている?

秋のトーナメントシーズンも終わり、春にかけては王者が野に還る時期。
「釣り師としてはいよいよこれからがシーズンイン、という感じ(笑)。」
野釣り・・・いや、へら鮒釣り全てが大好きな萩野。管理釣り場のトーナメントだけでなく、ダイナミックな山上湖でのボートフィッシング、巨べらを求めてのダム湖での釣り、そして身近な野川での野釣りまで・・・。
全てのジャンルのへら鮒釣りを貪欲に愉しむ「釣り師」としての側面を覗かせるのが、これから春にかけての「ベストシーズン」なのだ。

夜明けの土浦新川。美しい朝焼けが釣り場を包む。

「野釣りだからといって全てを運に任せるというのではなく、出来ることはベストを尽くす。それが自分のスタイルです。でもそれって、競技でも同じなんですよね。ベストを尽くして初めて『運』も付いてくる。自分はいつもそう思って釣りに臨んでいます。」
熱狂のシーズンを終え、野に戻ってきた萩野。その「初戦」が今回の土浦新川なのである。
6時に開門される駐車場に車を入れると、萩野はムーブベースへらバッグを背負い、なんと折りたたみ式自転車にまたがった。なんでも以前、ジャパンカップ予選の抽選で当たったもので、ずっと大事に使っているのだとか。
「野釣りでは必需品ですよ(笑)。」

野釣りでも様々なシマノグッズを愛用する萩野。「欠かせない」というジャパンカップ予選で当たった折りたたみ式自転車を始め、背負式へらバッグ、悪路や濡れたコンクリでも滑りにくいスパイクシューズ、そして釣り過ぎ(!?)で手首を痛めないためのリストサポーター・・・と、どれも普段からしっかり使い込んでいるアイテムだ。
●シマノ MOVEBASE へらバッグ BA-023Q 26L (¥12,000) 43L(¥13,000)
ベージュ、ブラック、ネイビーあり(萩野は43Lベージュを使用)
●シマノ MOVEBASE へらロッドケース RC-023Q ¥12,000
ベージュ、ブラック、ネイビーあり(萩野はベージュを使用)
●シマノ MOVEBASE へらクッション ZB-013Q ¥4,900
ベージュ、ブラック、ネイビーあり(萩野はベージュを使用)
●シマノ リストサポートグローブ(左手) GL-05LQ ¥2,800
レッド、ブラックあり 右手用あり ※価格は全て税抜

確かに土浦新川では駐車場から対岸のポイントまではけっこう歩く。しかし自転車があればひとっ飛びというわけだ。他にも野釣りでは駐車場からポイントが離れている場合が多く、かなり重宝しているのだという。
颯爽とポイントへと走っていく萩野。筆者は写真を撮りながら、ヒイコラと歩いて追いかける。
背後に下水道処理施設を背負う定番のポイント。河口から15mほどのところに、3名の釣り人と並んで入る。コンクリ護岸で足場はよく、持参のスノコを置くだけで釣り座は完成だ。
「水門寄りだと深くて、宙で数が釣れているみたい。自分は底で大型を釣りたいので、こっちに入ります。釣り方は外通しのいわゆる『ドボン』で、流れに合わせて板オモリの量を調整できるようにしてあります。」
見事な出来栄えの手製の外通し仕掛けをセットしたのは、「飛天弓 閃光P」21尺。軽さ最重視の「飛天弓 閃光L」ではなくパワー系の「P」をセレクトしたのはもちろん、霞ヶ浦産の大型がターゲットとなるためだ。

●竿
シマノ【飛天弓 閃光P】21尺
●ミチイト
1.25号
●ハリス
0.8号 30-45cm
●ハリ
上下6号
●ウキ
一志【アドバンテージ】 13番(パイプトップ18㎝ 羽根B13cm カーボン足7cm)

●バラケ

ダンゴの底釣り冬
50cc
ペレ底
50cc
バラケマッハ
50cc
凄グル
50cc
110cc

●クワセ(両グル)

グルテン四季
50cc
わたグル
50cc
100cc

しっかりと使い込んだ雰囲気を醸す愛竿「飛天弓 閃光P」がこの日の萩野の相棒。管理釣り場だけでなく、この竿で野の巨べらを幾度となく仕留めてきた愛着のある一竿だという。土浦新川のような北風吹き荒れる冬の野川だけでなく、亀山湖のようなダム湖で深場を狙う場合も最適。軽量タイプの「飛天弓 閃光L」と使い分ければ、釣りの幅はグンと広がるはずだ。

水深は約1.5mで、「浅く、日中の水温上昇が見込める流れ川」という冬に釣れる条件を備える土浦新川。さらにはそこに温排水という人為的な好条件も加わり、まさに真冬の人気釣り場となっていて、この日も続々と釣り人がやってくる。
「釣れ始まるのは9時か10時過ぎくらいかな。まあ、まずはのんびりじっくり構えて・・・。」
この後、そんな萩野の予想を覆す展開が待っていた。

「らしい」外通し仕掛け

外通しの釣りというと「ドボンと振り込んで、ひたすら待つ」という印象が強い。そこに工夫やテクニックが入り込む余地はなさそうなのだが、やはり萩野の外通しはひと味違った。
「やっぱり少しは釣り手側からアクションを起こしたいですからね。できることはやりたい。」
中通しや外通しというと金属製のナス型オモリを装着するのが一般的だが、萩野は違う。太めの道糸を利用して枝イトを作り、そこに板オモリを巻いて細かく調整できるようにしてあるのだ。

状況に合わせて細かく変えることができるのだ。
まず上の補助板オモリでウキのトップ付け根位置が出るようバランスを調整しておき、あとは枝イトに巻いた板オモリの量で調整。トップがギリギリ沈むくらいのライト系からドスンと沈んでしまうほどのヘビー系まで、板オモリの量で自由自在というわけだ。

萩野は長さの違う板オモリをあらかじめ用意しておいてライト系かヘビー系かをおおまかに決めた後、場合によっては板オモリをカットして微調整していく。いかにも萩野らしい能動的で繊細な方式だ。

「道糸に直接付いている方の板オモリで、まずはボディとトップの付け根くらいの位置にバランスを調整しておきます。その上で枝イトに付いた板オモリで調整するのです。トップがギリギリ沈没するくらいにすればライト系のドボンになりますし、ドスンと沈んでしまうようにすればヘビー系になります。あらかじめ板オモリを用意しておけば即座に変えられますし、ハサミで切って微調整することもあります。」
まず萩野は枝イトに多めの板オモリをセットして釣り始める。回し振りで完全に振り切り、トップが水面上に3目盛出るようにウキ下を調整する。
そしてこの日、流れがかなり緩やかなのを確認すると、あらかじめ用意してあった短めの板オモリに付け替える。さらにハサミで小さくカットしながら微調整して、流れが止まるギリギリの軽さに調整したのだ。
「このくらいだとサワリなんかもちゃんと出るので、釣っていて愉しいですよ。それにサワリが読めれば待つ時はとことん待てますからね。」
受け身な釣りである外通しを能動的な釣りに変えてしまう萩野。さすが、「王者」というよりは「釣り小僧」の横顔を垣間見せる。

バラケ&グルテンで打ち始めた萩野だったが、ほどなくしてへら鮒の気配を感じ、両グルテンにスイッチ。じっくりと腰を据えて待つ作戦で、思わぬ早朝の好地合をガッチリつかんだ。

「野釣りの方が断然ワクワク度は高いじゃないですか。だからむしろ競技の時よりジタバタといろいろやっちゃうかもしれないですね(苦笑)。」
左手の広大な霞ヶ浦から朝陽が昇る美しい光景を眺めながら、バラケ&グルテンで打っていく萩野。モジリもあり、雰囲気は上々だ。

思わぬ朝の好地合をガッチリとつかんだ萩野。

そしてアタリは、思った以上に早く出た。
開始から僅か40分が経過していた7時39分、微かな気配を感じていた萩野がすかさず両グルテンにスイッチ。その2投目の出来事だった。
3分以上じっくりと待った後、小さいがはっきりと「クンッ!」と大きなアタリ。このアタリに「閃光P」がガツンと止まった。
「思ったより早かったですね!」
朝陽を浴びて思わず表情を崩す萩野。キュンキュンと糸鳴りを響かせる沖への突進を余裕を持って受け止めると、沖目でボコっと本命が浮いた。
へらだ。それも、尺2寸級の良型!

2枚目に来た、当日最大の41cm。

「いいアタリでした。もう喰って走っちゃった感じでしたね。」
狙いの大型ではないが、十分に素晴らしい魚体。こんなへらが釣れるのなら、何の不満があろうか。
朝から濃厚なへら鮒の気配を感じ取っていた萩野。「勝負は今」とばかりにさらに枝イトの板オモリを切り、ライト系のドボンへとシフトしていく。エサ使いもほぼバラケは止めて、両グルテン一本となっていた。
「今年はまだ暖かいせいか、イメージよりアタリ出しが早いですよね。もしかしたらこれは日中にボケるパターンかもしれないので、ここで集中して釣っておいた方がいいかも・・・。」
キリリと表情を引き締める萩野。その動作全てが洗練度を増していく。
小さくしっかりエサを付ける。フワっと仕掛けを沖目に送った後、慣れた動作で回し振りを決め、軽やかに沖へとエサを飛ばしていく。

1枚目から僅か5分後の7時44分、2枚目が来る。ほぼ消し込みというダイナミックなアタリだ。これが41㎝で、当日の最長寸となる。
さらにへらの気配は続く。何もなくても3分ほどでエサ切り。微かなサワリやイトズレ等があれば、5分以上徹底的に待つ。
バラケを挟んでやや間があっての9時15分からが圧巻だった。両グルに変えて連続ヒットで3、4、5枚目をものにし、全て泣き40cmの大型ラッシュとなる。いつのまにか周囲には15名以上の釣り人が並んでいたが、萩野の竿が圧倒的に立つ。
「贅沢な釣り場ですよね・・・。」
予想以上の素晴らしい釣りに、思わず溜飲を下げる。

シマノインストラクター
萩野 孝之

シマノジャパンカップへら釣り選手権大会は初出場96年6位、98年3位、99年4位、00年3位、02年3位、03年優勝、04年優勝、 05年3位(シマノへら釣り競技会、浅ダナ・チョウチン一本勝負!3位)、以降も上位入賞しながら13年まで全国大会へ進出し続けた、ミスタージャパンカップ。

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