フィッシングコラム

  • イヨケン STRONG STYLE
  • 素晴らしき投釣りワールド
  • 鮎入れ掛かり!?ブログ
  • Fantastic F.F Story ON THE STREAM
  • 絶景ドリームツアー 釣行レポート
  • シマノ渓流 開発奮闘記
  • ワカサギブログ 2017

ON THE STREAM

VOL.47 「一番乗り」

里見栄正氏昨年の水害で閉鎖されていた道路が開通した、という情報に安心してしまったわけではないが、なんとなく春先のクセが抜けずに到着すべき時間としてはやや遅かっただけでなく、さらに日曜日という要因も加わったせいか、駐車可能なスペースにほとんど空きはなかった。『人気河川だねェ』と呟いてみたものの、30年近く通っていてこんな光景は初めてのことでちょっと焦りも。もっとも、これまでが常に平日のみの釣行だったことを考えれば、土・日の混雑ぶりを知らなかっただけなのかもしれない。それでも、毎年欠かさずに入渓するお気に入りの区間には、運良く釣り人の車は見当たらず、まずはひと安心で、のんびりと準備に取りかかる。その間にも上流へと急ぐ、釣り人とも登山客とも判別のつかない車が何台も通過していた。そんな中、明らかに釣り人と思われる二人組の乗った4駆車が僕の様子を伺い、なにやら話しながらゆっくりと横を通り過ぎたのだが、この一台がその日の僕の行動を決定付けたのだった。

入渓するために道路を横断すると、ひとつ先のカーブが見通せた。すると100メートルほど上流側にもほぼ同様の駐車スペースがあり、先ほど追い越していった4駆の主が、今まさに渓に降りようとしているところではないか。僕は車を停めるべき場所を間違えたことにすぐ気がついたのだが、もはや手遅れ。とにかく道路の感じがよく似ているのである。そういえば、以前にも間違えたことがあったことを思い出してはいたが、それにしてもである。ルール無視というか、あまりに理不尽な行動を目の当たりにすると言葉も出ない。こんな連中に関わっても「同じ入漁料を払っているんだから、どこで釣りをしようが勝手だろう」と居直られるのがオチだ。

仕方なく僕は再び上流に向かって車を走らせた。核心部からはどんどん遠ざかって行く印象は拭えなかったが、開け放たれた窓から入り込んでくる初夏の風は心地良く、落ち込んだ気持ちを幾分か和らげてくれているのが有難かった。そして、気がつけば、自分では想像すらしていなかった未踏の流域まで足を伸ばしていた。林道のほぼ終点に近く、ここまで来れば、先行者や後から来るかもしれない釣り人に煩わされる可能性だけは極端に低いと思われた。そこは未だ補修工事の真っ最中なのか、数台の重機が置かれている。途中、車窓から見えた落差のある男性的な渓相は途絶え、平坦ながらブナの森に抱かれたこれぞイワナという流れが続いていて、僕の目には理想的な流れに映った。ただ、上流部ほど釣り人の姿が少ない理由がそのまま釣り場の価値、つまりはイワナの数とも直結しているのではという猜疑心もちょっぴり残る心理状態で、ガレ場を慎重に降り、流れに立つ。

岸の砂地には鹿をはじめとする野生動物の足跡が点々と残っていた。まずは熊よけの爆竹を鳴らし準備完了である。しかし不思議なことに、下流部の賑わいが嘘のような静けさの中、流れとその周辺にも釣り人の姿どころか、痕跡すら全く認められなかった。やはりイワナは期待薄なのだろうか。とりあえずラインを引き出し、一旦軽くキャストしておき、さらにジージーと必要な長さのラインを引き出していると、すでにフライは水面になく、なにげなくロッドをあおってみれば確かな手応えが・・・・。『釣れちゃったぁ』なのである。水深にして10cmほどの小石のはいった瀬尻の緩い流れからは25cmはある太ったイワナだ。いるとわかれば、次は慎重なアプローチで本気のプレゼント。すぐに水面が揺れ、ファーストヒットの周辺、ほとんど波立ちのない静かな水面だけで同サイズのイワナが5尾。流れ込みからヒラキにかけては尺混じりでグッドサイズを4本追加。その先、さらに次のポイントと、ほぼポイントの規模と魚のサイズが比例した形でのヒットが続き、滝つぼからはプラウデスを極限近くまで曲げる大物が顔を出す。ちょっぴり釣りがうまくなったような錯覚に陥りそうになるところだが、冷静に考えれば、容易に僕が今年最初の入渓者という結論に辿り着く。

釣果雪代落ちを待っての一番乗りは、狙っていてもなかなか果たせるものじゃあないけれど、偶然のイタズラとはいえ、こんなこともある。移動中は先を越されて憤っていたはずが、終わってみればマナーの悪い釣り人に感謝していたりする。 現金なものだ。まぁ、災い転じて・・・・というのも話のネタとしては悪くないか。