フィッシングコラム

  • イヨケン STRONG STYLE
  • 素晴らしき投釣りワールド
  • 鮎入れ掛かり!?ブログ
  • Fantastic F.F Story ON THE STREAM
  • 絶景ドリームツアー 釣行レポート
  • シマノ渓流 開発奮闘記
  • ワカサギブログ 2017

ON THE STREAM

VOL.41 「九州・鯛生川水系」

釣果記録的に早い上陸を見た台風の影響は長らく尾を引いて、水位が落ち着くまでにはもう少し時間が必要に思えた。暦の上では初夏というところだが、九州も例外ではなく、季節の進行は遅れ気味だった。そんな中、縁あって訪れたのは、かつての日韓ワールドカップでカメルーンのキャンプ地となった中津江村(現在は日田市)を流れる鯛生川水系である。管内にはC&R区間もあるヤマメの里だが、案内をお願いした漁協のスタッフからは増水によるコンディションの悪化を心配する声がしきりなのであった。こんな時は逆にこちらが恐縮してしまうものだ。当たり前のことだが、だれの責任でもない。過度な期待をもっていたとしたら、そちらに問題ありということだろう。居直るつもりはないが、目の前にある与えられた条件の中にしか釣りはないのだ・・・・。

高い位置から流れを見下ろしていると、実にいい流れで、ポイントだらけに見えることがよくある。実際に自分が釣りをしない場合に限って、ここで一匹、あそこでも一匹などと言いたいことを言っているのだが、今回もまったくその通り。いざ川岸に立ってみれば、なんとも恥ずかしい限りで、ちょっと水量が多いだけなのだが、比較的平坦な分、ドライフライ向きといえるようなポイントはほとんどが強い流れの中に埋もれている状況に絶句。それでもひと通りはトレースしてみると案の定、プールの端に固まっている成魚放流されたヤマメ以外僕の技術ではなかなか思うにまかせない。ま、それはそれで、まだ上達の余地を残しているということで、むしろ喜ばしいことと理解しておこう。

しかし、釣りたいのである。本音の全てではないが、正直ここまで来て・・・という思いも強く、時を置かずしてニンフに手が伸びるのは当然の流れといえた。ニンフィングに於いても、流すレーンの水勢は重要なファクターであるが、ドライフライのように揉まれて沈んでしまっては釣りが成立しないといったことがないので、イージーといえばイージーかもしれない。しかもヤマメは実に正直で、水中を流れるフライに対しては別次元の反応で連続ヒットも珍しくない。けれど、やはりドライで・・・・・なのだ。

翌朝は意を決して、ドライフライストリームを求め源流近くまで足を伸ばすことになった。渓は深くなり、唯一の入渓点も険しく、慎重の上にも慎重を期して降り始めた矢先、ちょっとした弾みでリールが手元から滑り落ちた。一瞬の出来事にただ見送るしかなかったのだが、どこかで止まってくれるかも、という淡い期待など簡単に吹き飛んでしまうほどの見事な落ちっぷりである。とにかく初めてみる光景だった。

釣果ちょっと古いけれど♪~Mama . Do you remember~♪の世界。『母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね、ええ、夏、碓氷から霧積へ行く道で渓谷に落としたあの麦わら帽子ですよ・・・』てな具合にフワフワと宙を舞いながら優雅に麦わら帽子が落ちて行くシーンとは趣きはかなり違うのだけれど、なぜか意味不明のままビビビッと反応したのだ。渓谷、落下と、たったふたつのキーワードが合致しただけでも短絡的に重ねてしまうところがF・Fマンの悲しいところ(僕だけか・・・)。

うまいことタイミング合うと、こんなふうになるんだという見本のようにスムーズな回転と、大きく時に小さく、斜面の角度と凹凸が創り出すバウンドのリズムがマッチして、ちょうど車のホィールが崖を転がっているようでもあり、麦わら帽子とは違う美しさがあると僕には思えた。『いいものを見せてもらった』そんな感じでもあった。だからであろう、半ば諦めつつ渓底を探し回って、なんとか急流を外れた石の隙間にリールを認めると、いとおしさがこみ上げてくるのを押さえる事ができないでいた。僕は奇跡的にも無傷のまま鎮座しているリールをゆっくりと拾い上げると、道具に対してはもちろん初めて、「ありがとう」と呟いていた。