フィッシングコラム

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VOL.40 「想定外」

菜の花大きな揺れと大津波。そして追い討ちをかけるように原発と『想定外』の大安売りで、なんとも重苦しいムードに国全体が包まれた中、今シーズンは始まった。震災以後しばらくはガソリンが入手困難となり、否応なしに車での外出が制限されるに至っては、釣りどころじゃないというのが偽らざる気持ちだった。それでも、桜の便りが届く頃になると、春には春の釣りをしなければ、という思いだけは少しだけれど湧き上がってはいた。ま、極々近場で、ほんのちょっとだけ・・・・・・ならと、自粛ムード漂う世間様に言い訳をしながらロッドを振るには、自宅からほど近い前日光の流れは都合のよい存在といえた。

かつては頻繁に訪れた前日光の流れであるが、ひと括りに扱うケースが多い割には、実際のところどこからどこまでがその範疇に入るのか、あらためて考えたこともなく、とりあえず僕の中では日光より南で、渡良瀬川より北を流れる川といった認識である。その一方で、規模や渓相はまちまちであるから、それぞれの流れに個性はあるのだが、気候風土は非常によく似ていて、どの川に入っても「ああ、前日光の川だなァ」と思えるところはあって、僕が入り浸っていた頃の記憶が断片的にでも蘇ってくることと無関係ではないのかもしれないと思えた。土手には菜の花が咲き乱れ、梅と桜が共存する光景は、懐かしさに浸るには十分な雰囲気を醸し出しているのだが、今年は全般にひどい渇水で、里を流れる下流部は水の動きが乏しく、見覚えのあるかつての好ポイントにヤマメの気配はなかった。

そのせいで今年は、比較的流れが絞り込まれて落差も出て厚みを持つ上流部の狭い流れを求めて移動する傾向が強かった。しかし、ただ上流を目指せば渓相が整うのかといえば、そうでもないのがこのあたりの特徴で、結構険しい峡谷状の流れを選んで降り立ったはずが、ひとつカーブを越えると平坦な流れとなって集落が現れ、それを抜けると再び山岳渓流の趣を取り戻すといった具合で、結果的に釣り遡る距離ばかりが長くなり、その結果として、小渓流というイメージしかないような川も、実際に詰めてみると意外に奥が深いということをあらためて感じるのだった。

釣行風景釣果そしてなにより驚いたのはその魚影の濃さだった。震災の影響で入渓者が極端に少ないという要因に負う部分が大きいのかもしれないが、特に成魚放流が行われていないと思われる上流域ほど、滅多に他の釣り人を見かけることがなく、その痕跡もほとんど見当たらない。
従来なら解禁から間を置かずに釣り荒れてしまい、竿抜け狙いがセオリーといっても過言ではないほどの人気河川なのだが、『ここは』という大場所からは大型が確実に顔を出す、というようにポイントの大きさとヤマメのサイズが比例するあたりからも今シーズンがむしろ特殊だということが読み取れる。
こういったことも想定外といえばそうなのかもしれない。ただ常に自然を相手にしている釣り人にとっては、想定していなことなど当たり前のように起こることを知ってはいる。
だから釣れなかった場合の言い訳に、天候が急変して一気に水温が下がって、ハッチは止まるし、居るべきポイントに魚がいなくて、パーフェクトなドリフトにも関わらずタイミング悪く、すぐ横を流れる本物を食ったところでこちらと目が合ってそれっきり・・・・といった具合に、いくらでも想定外の連鎖を語れるのである。政治家をはじめとする、メディアに頻繁に露出する訳知り顔の学者や評論家から発せられる『想定外』も事の大小は別として、不謹慎かも知れないが同じようにしか聞こえない。
さらに不謹慎ついでに言わせてもらえば『想定外』はおそらく今年の流行語なんとかの有力候補になるのだろう。それとも、復興への願いを込めるイメージとしては、やはり『♪ポポポポ~ン♪』になるのでしょうか。