フィッシングコラム

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VOL.39 「帳尻 【ニュージーランド・南島】 」

里見栄正氏ひょんなことから急遽ニュージー行きが決まった。もっともずっと前から予定だけはあったのだが、この不景気の折、同行予定者は結局ひとりもいなくなって、当初の計画は一旦立ち消えとなっていた。若い頃なら、たとえひとりになっても全く意に介することもなく計画は遂行され、ただがむしゃらに突き進んでいたはずだが、なんとなく釣り旅に求めるものが以前とは変質しているような今日この頃なのである。
しかし、不景気故にまた一方では拾う神があるということが、面白いところで、直前になってリストラの憂き目に遭った友人が思いがけずも手を挙げることとなった。ま、海外へ出ようとすれば、ある程度のお金と時間が必要にはなる。そして現実にはその両方をうまくマッチングさせることが難しくて、皆苦労するわけだが、そのあたりの事情は人それぞれということがよくわかる。もともと非常に忙しいビジネスの世界に身を置くその友人は、リストラによってのみ時間を得ることができたように。
彼には家族もいた。当然経済的なことも含めて、これから先の心配はあるはずなのだが、これを逃したら後はないと考えたようだ。「これでニュージーランドへ行けるー」が第一声というのだから、ポジティブというかお気楽(失礼)というか、いずれにしても、それほど気を遣う必要のない性格 も楽しい旅を約束されたようなもので、拒む理由はなかった。

ニュージーでの日々は、これまでにないくらい天候には恵まれた。付いたガイドも2度目ということで気心が知れている分、僕の我儘に口を挟んでくるようなことはなく、いたって自由に振舞うことができたのだが、僕の分まで、ということではないにせよ、友人に対してはこと細かく指示が飛んだ。地味なカラーのライン使用はもちろん、それはシャツからキャップにまで及んだ。僕だってシャツは赤のチェックだし、キャップの色にしても大差があるとは思えないところがなんともおかしかった。

釣行風景釣果ところが肝心の釣りの方は予想に反して渋い状況が続いた。いくつかのスプリングクリークを移動するうち、これはただ事ではないという印象を強く持つに至った。相当数のマスを見つけながらも、なかなかヒットに結びつけることができずに、場合によっては一尾に1時間以上の時間を費やす、なんていうことが当たり前の展開となっていたのだ。「シケイダーが一本あれば・・・・・」のはずであった。そして新しい一歩を踏み出す彼の後押しにもなるかとも思った。それが現実には疲れきった彼の様子を見守ることしかできない、なんとも心苦しく辛い時間が続いた。比較的イージーとされるニュージーのF・Fではあるが、やはりクリスマスから年末年始の長期休暇明けの流れは、そう甘くはなかったということか。

時は容赦なく流れ、泣いても笑っても残すところ一日となっていた。リクエストするのは恥じも外聞もなく、ただただ『釣れるところ』。もはや頼れるのはしっかりとしたガイドシステム以外になかった。しかし案内されたのは、形状だけ見ればそれまでと大差のない、どう見ても易しいとは思えない流れだった。その上ガイドからは『ブッシュ』という言葉を何度も聞いた。そういった意味でも、おそらくアクセスの点で、入り込む釣り人の数が圧倒的に少ないということなのだろう。
薮コギに苦悶する友人の姿を想像するも、残された道はなくガイドの後に従う。ところが、かの国の『ブッシュ』は、どちらかといえば映画に出てくるような、神秘的で心地良い森の中のトレイルであった。さらにその先の流れには本来の姿であろう開放的な性格のブラウンが。サイズも時に70cmを越え、プラウデス8'1''が描く極限のカーブの向こう側で巨大なブラウンが浮上と潜行を繰り返した。交互に、という約束もいい意味で反故となり、流れを挟んでのダブルヒットに笑顔がこぼれる。最後の最後、「これで帰れる・・・」そう思えた瞬間、張りつめていたものがウソのように消え、僕はガイドと安堵の握手を交わした。