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シマノ渓流 開発奮闘記

開発者のつぶやき VOL.4 スーパーゲーム スペシャル HH90-95 ZM

製品名: スーパーゲーム スペシャル HH90-95 ZM

スーパーゲーム スペシャル HH90-95 ZM

 スーパーゲーム スペシャル ZJのHHでは90が一番長いアイテムでしたが、この一つの理由として、ただでさえ重いHHを長くしていけば、必然的に持ち重りのみならず、振り重りも増大します。
 サクラマスはこの竿のメインターゲットの一つですが、一日のうちにそう多くのアタリを得られるわけではありませんから、竿を振っているだけで疲れてしまうようでは集中力が落ちて、折角のチャンスを逃す結果を招くかもしれません。

 しかし、一日振っていても疲れが少なければ9.5mでも10mでも構わない。
少しでも長ければ、もう一つ向こうの流れに届く、流す距離も稼げるなど、メリットが大きくなります。

 この竿の開発にあたってはHHとしてのパワー、信頼感を損なうことなく、一日振っていても疲れの少ない95を目指すことになりました。
 また、本流域でのニジマス釣りが可能な河川も増えてきたことから、本流大型魚と出会える確率も上がり、それならよりパワー勝負を楽しんでいただけるよう、既存のHHよりも幾分かパワーを上げる、それでいて重量は現行同等以下、これを目標として設定しました。

 既存の本流竿では90-95の場合、10本継となります。
 まずは10本継であるH90-95をベースにトルク感を増す方向で設計に着手しました。

 基本的に竿の調子は本流調子と呼んでいる、これまでのスーパーゲームシリーズの流れに従った胴に入る調子です。
 製品重量としては塗装仕様にもよりますが、360g前後と予想される。
 HH95としては決して重い竿ではないものの、新製品としてのインパクトに欠けることは否めない。

 一旦、出来たサンプルの一本を細山さんに渡し、テストをお願いすると同時に、開発陣でも使い込んでみることにしました。

 この竿のそもそもの発案者である企画担当がサツキマス釣行の折にサンプルを使ってみますと言うので、早速使ってもらう事にしたが、返ってきた言葉は「重くて2時間も振っていられません」というもの。
 すぐさま、細山さんと連絡を取り、使用感を確認してみると、そんなことはないし、軽くはないけれども使い易い竿ですとの返事。
 自分で使って確認しないわけにもいきませんから、すぐさま釣り場へ出かけて、一日使い込んでみました。
 2時間も振っていられない、という事はない。
 どうも竿の振り方に原因があるのだろう。
奴の振り込み方、決して上手くはないし…との答えには辿り着いたのですが、風が吹き出すと一転、なんと使いにくい竿なのか…
 HHという事で、太いシルエット、胴に入りやすい調子、これらが相まって、風を切って振り込むのには相応の腕力を要求される。
 その中でキャストの正確性も求められる。
 仕掛けを投入したらしたで、横風を受けると竿が弓なりに曲がってしまい、仕掛けを安定して流し辛い、アタリも取り辛い。
何より風圧で竿を持っているのが辛い。

 本流釣りにおける風は税金みたいなもの、これを避けて通る道はありません。
果たしてスーパーゲームのトップモデルであるスペシャルがこのままでいいのだろうか?
考えるまでもなく、否。
 これまでの調子とは流れを変えることになるが、風切抵抗を減らし、もっと振りやすく、横風があっても風圧を感じにくく、それでいてHHとしてのパワーや信頼感は維持する方向で一から設計をやり直すことに方針を決定しました。
 とはいえ、竿の調子のベースは芯金です。
 既存の芯金の設計の流れでは大きく変えることは困難ですから、芯金からの見直しとなります。
 継数も再検討です。
 継数が多ければ手元にくるほど竿は太くならざるを得ません。
 空気抵抗を減らすべく竿を細身に仕上げるには継数を減らす選択肢がありますが、一節一節が長くなります。
 仕舞寸法も長くなります。
 一つの目安は鮎竿と仮定し、上限を143cmまでとしました。

 継数は9継。
 ここからは、ひたすらCAEソフトとの睨めっこが始まります。
 芯金から設計するわけですから、胴調子にもできるし、先調子にもできる。
 先調子にすれば竿の操作性は上がるが、大物が掛かった時に伸されやすい。
 胴調子にすれば、先述の問題がある...
 このバランスをどこに取るか?

 そうして出来上がったサンプルは完成品で320g前後。10本継よりも40gほどの軽量化です。
 でありながら、強度は10本継の時よりも高い。
 振り感もシャープでありながら、しっかりと胴を曲げこむことが出来る。

 最終テストは長野県の犀川、ターゲットは50cm超えのニジマスです。
 従来よりも先調子に振ったのでキャスト精度が上がっています。
 穂先にはエキサイトトップを搭載したので、錘が底をコツコツと叩く音も伝わりやすく、今回の竿の調子と相まって、根掛かり回避が容易です。
 勿論、魚のアタリもわかりやすく、アワセのタイミングも取りやすい。
 魚が掛かってからは…
 しっかりと胴まで荷重が乗って魚の走りを止めてくれます.
 今までは魚が走れば走ったなりに竿が曲がり込み過ぎて、魚に付いていかざるを得ないケースもありましたが、ちょうど良い感じに曲がり込みが止まると同時に魚も止まり、魚が疲れるのが早いのか、浮いてくるもの早い印象です。
 陽が上って、明るくなるにつれて風が吹き始めますが、どうということはありません。
 風が気にはなりますが、キャストコントロールが極端に落ちることもなく、横風でも竿が弓なりに曲がってアタリが取れない、底が取れずに錘が石の間に咬み込むという事も激減です。
 新しい竿が出来た瞬間です。
 設計を一から見直したことは正解でした。

 文章で書くと、あっさりと出来てしまったように聞こえますが、完成までには試作を繰り返し、納得のいく調子にまとめる作業が隠れていることを付け加えておきます。