ホワイトアイランドに接近し、自然と人との関わりを間近に観たこと。
ヒラマサ・ハプーカの棲む周辺海域を「Chermare // チェルマーレ」で探れたこと。
そして何よりブルーウォーター海域を目の当たりにしたこと。
PM 3:15・・素晴らしい時を過ごせた「港街・ファカタネ」を立つ。
目指すは海岸線を更にSEに下った「ワイハウ」。南太平洋を真正面に見る手つかずの磯がこの釣行の最終目的海域だ。道の駅としては、ファカタネ〜オポティキ〜ワイタンガ、そしてワイハウとなる。

旅は道行くだけでも愉しいものだ。様々な発見がある。車窓から見る景色、街並み、人・・ここに住む人々はどのような生活をおくっているのだろうか・・どんな生き物が生息し、何に脅え、何を大切に想うのだろうか・・道端に立つ複雑な形をした大きな樹は何という名前なのか・・どのくらいの樹齢なのだろうか・・
釣行とはいえ、海や魚のことばかりではなく、鳥や植物・山での知識も必要だ。見た目の印象だけではせっかくの大自然が勿体ない。
ファカタネから比較的近いオポティキという街。これから過ごす3日分の朝と昼の食料を調達し、この先にある小さな街で夕食をとることになった。この辺りを過ぎると街らしい街がないらしい。
オポティキからワイハウまではノンストップで走る。海岸線の見えない崖上の山道と、海岸に沿った海辺の道が交互に続く。海辺の道では水深の浅い海に点在する磯が見える。足の長い海藻らしいものに覆われた磯だが陽が落ちたせいで磯際がハッキリ見えない。辺りはますます暗くなる。徐々に街灯の数は減り、再び暗く狭い淋しげな山道が続く・・まれに対向車とすれ違う程度だ。睡魔に襲われウトウトしていた・・
1時間以上走っただろうか・・ヘッドライトの灯りだけを頼りにカーブ続きの下り坂を降りると、一気に視界が開けた。目前には白い砂浜がうっすらと見える。ようやくワイハウ・ベイに到着した。ロッジの入り口にはヨットのセールが掲げられていた。
海抜0m。南太平洋の海面と同じ目線のある綺麗に整頓された静かなロッジ。木造の階段を上がった山際の部屋にお世話になる。夜空にはオリオン座と南十字星が輝き、ロッジ前の白い浜からは小さく巻く波の音が聴こえる。
さっそく明日からの磯釣り支度に取り掛かる。磯にはロッジのオーナーでもあるバリー船長のボートで渡していただく。磯へ乗り降りするアルミ製の足場をボートの先端に取り付けての渡船システムはバリーの考案だ。磯渡しの際、バリーに手伝えることとしたら極力荷物を少なくすることである。最小限の道具で最大の効果を得る。少数精鋭と自ら厳選した道具には自信があった。
準備を終え、深々と夜の更ける寒いベランダへ出た。波音、虫の声、自然と聞こえる音の世界をiPodに入れた音楽 // ジャズで絶つ。進みも止まりもしない時間を過ごす。
数年前、日本を離れニュージーランドへ渡ったジャズシンガーの友人のことを、ニュージーランド入りして3日目の夜になってようやく思い出した。
次には「酒とタバコとジャズ」さえあれば、それでいい・・という寡黙なスチールカメラマン。
鎌倉の歩道で転んだ、ビルの最上階から大阪の街を見おろすロン毛のデザイナー。
なかなかヤマメを釣ってこない、渓流釣り好きな広告代理業者。
痛風に悩まされる根魚好きなIT関係者。
日本を離れた仲間、日本で待っている仲間・・皆、ジャズ好きであることだけが共通点。あとはてんでバラバラな仲間だが、そんな仲間たちと「フリースにくるまり・・」この寒いベランダでグダグダと過ごせたら会話もはずみ、きっと楽しいだろうな・・なんてことを想う。
釣りにも、あんなところで、こんな風に釣れたらいい・・あの釣り具をこうして使ってみたい・・あの海を狙いの魚が悠然と泳ぐ光景を見てみたい・・という希望を思い描くことがある。例えそれが一瞬の出来事だとしても、その一瞬を期待し、夢見ることこそ、情熱を持って釣り続けてきた釣り好きな釣り人の持つ、釣り心らしい一面であろう。
ニュージーランドの青空の下、緑が生い茂る山肌を向こうにみて、魚は何でもかまわない、自らの重心をドッシリ磯に置いて、この竿を思いっ切りブン曲げてみたい・・という釣り心の踊る想い。そんな想いが自然と芽生える磯竿をこのニュージーランドに持ってきた。
「Remare // レマーレ」・・赤と黒である。
翌朝、バリーのボートで磯を目指す。岬の手前はベタ凪だが、その先を回り込むと大きなウネリが各磯をヒットする。大ザラシが広がるダイナミックな海だ。遥か対岸には南米チリ。パンチある南太平洋は実に壮大だった。
この海を知るガイドのマーク、バリー船長、玄さんの判断で磯を決める。陸地の近い離れ磯。陸地に見える斜面では牛が牧草を食べるのどかな風景が広がる。

緑豊かな山肌の見える磯。いよいよ真っ青な空に向かってRemare // レマーレの赤を出す。ガイドを合わせ穂先−2番−3番・・青空に映える495-530赤のzoom rod。竿を伸ばす時の、釣果を得る達成感とは異なる感慨深さこそ「磯竿への思い入れ」に等しい。久しく無かったこの想いにまじまじと「Remare // レマーレ」をみた。
ニュージーランドの磯から釣りをする。ファカタネ沖で見たブルーウォーターとは違うやや緑掛かった海水に、カウアイやマダイの魚影を見た。

最初に竿を曲げたのは3キロ弱のカウアイ。想像していた以上のロケーションで竿を曲げることができた。ロッドを絞り上げる角度・曲線・緑と青の背景がマッチする位置に留まっていられるのは、ほんの数秒だが・・これで十分。感無量だ。
どうやら「ヒラマサ // King Fish」を釣る目的と、大きな意味で自らが求めているものとは違うものらしい・・
思い描いていた一瞬を思いきり過ごせたことで満足した。ここから先はガイドの仲間たち共に過ごす時間を充実させること。磯で過ごす限られた時間を大切にした。
南太平洋に向いたイーストケープ周辺の磯。磯からヒラマサを狙うに絶好の釣り場が広がる。
付近を低気圧が通過すれば波長の長いウネリが発生し、磯に近づくことはできない。微妙に突き出す岬の先端によってウネリが分割され、穏やかになる側の磯を目指す。
潮通しのいい場所は当然釣りにも適しているが、ウネリのある時は手の着けられない状態が続く。しかし、潮通しのいい環境とはほど遠い少々奥まった場所でも魚は回遊してくる。チャンスの回数や時間が少ないとしても、潮の流れに動きや変化のある時はこれを見落とさぬよう観察が必要だ。
要するに、どこで何を狙っても「潮の流れ」こそが、磯釣りの明暗を握っている。更に天候の善し悪しに翻弄されながらも、安全であろうと判断された釣り場でなければ釣りのできない制約が付きまとう。
だから、「時に釣れたり・・釣れなかったり・・」を繰り返す。ガイドのマークがいった言葉「Sometimes・・」。その一言に尽きる・・
「Sometimes・・」のチャンスを活かすことが如何に大切か。

ニュージーランドの磯から「King Fish // ヒラマサ」を釣り、この旅が終わった。
ボートから磯まで魅力溢れるニュージーランドの釣りを堪能できたのは、玄さんをはじめとする現地ガイド仲間の協力があってこそ。頼もしいガイド仲間、そしてNZの海や魚に感謝している。
頼りになるロッド「Chermare // チェルマーレ & Remare // レマーレ」。ガイドにラインを通すとき、すっかり忘れていたワクワクする想いが甦った。

大きい魚を釣る魅力は、大きい魚を狙おうとするその気持ちにあるのだろう・・
そんな大きい魚の棲むニュージーランドの海。もっと北へ。もっと南へ。
