2019

2019 シマノ ジャパンカップ クロダイ(チヌ)釣り選手権大会

2019 シマノ ジャパンカップ クロダイ(チヌ)釣り選手権大会 2019 ジャパンカップ クロダイ(チヌ)釣り選手権大会

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シマノ ジャパンカップ クロダイ(チヌ)釣り選手権全国大会 大会詳細

キャプション

優勝 百合野 崇 選手
準優勝 横路 幸浩 選手
第3位 内海 通人 選手
遠投・高速スルスルで大型クロダイ乱舞!
山口の名手、百合野 崇選手が初の頂点
日時 2019年3月23日(土)3月24日(日)
場所 九十九島一帯(長崎県佐世保市)
主催 株式会社 シマノ
後援 長崎県佐世保市、公益財団法人佐世保観光コンベンション協会
天候 晴れ

「日本屈指のクロダイ釣り場」。
長崎県九十九島をそう称したのは、全国を行脚するシマノクロダイアドバイザーの大知 昭氏。208もの島々が織りなす穏やかな湾は風光明媚。ゆったりとはしる遊覧船が風景に彩りを添えます。その磯に立つだけで胸がすくような、絶景の地が今大会の舞台です。
複雑に入り組んだ海岸線はクロダイの巣窟ともいえる楽園。しかし全国大会初開催となった昨年度は水潮と水温低下によるタフコンディション。釣果ゼロの苦戦を強いられた選手が続出しました。それが今大会は前釣りをする選手や地元の釣り人が「よく釣れる」、「去年よりもだいぶいい」と話す好条件。
各試合を行なう磯は地形や水深、干満や気象・水況等を多角的に分析して選びました。その結果、選手双方0対0の対戦は、全13組中、第1試合で3組。第2試合で1組。第3試合では2組という釣果を得られました。
また今大会は大潮回りで気圧の急変が引き起こす「あびき」という現象も相まって潮位差が大きく、約3mもの潮位差を考慮してルールを定め、各試合の審判が安全のため臨機応変なジャッジを下します。

大会本部は九十九島パールシーリゾートの一角。未明から27名の選手の組み合わせ抽選が始まります。抽選結果を待つ間に各選手は初日2試合分のコマセを混ぜ合わせます。現場には緊張感と高揚感が漂っています。

抽選の結果は第1試合から好カードが目白押し。中でもディフェンディングチャンピオンの矢吹 壮選手(岡山県岡山市)と内海 通人選手(広島県三原市/九州A大会3位)の通称「丸ポール」の磯での対戦は大注目です。試合前に矢吹選手は「シビアな釣果になる」と予測。その釣り方は前年度の優勝パターンをベースにしていると見え、コマセの帯をカケアガリにきちんと作り、その際を重点的にねらう作戦です。湾奥部に位置する潮の動きにくい釣り場ゆえ、ミチイトPE0.6号にハリス1号と繊細な仕掛けで攻めます。
対する内海選手は広島の実力者として知られ、全国大会に何度も勝ち上がっています。ミチイトはPE0.8号。1.7号のナイロンショックリーダーを介してハリスは1.2号。ウキは「CORE ZERO-PIT DVC TYPE-D」の000号。30mほどの距離にポイントを作る中遠投で、ベタ底のエサをズルズルゆっくりと転がすように探ります。
両者アタリは遠く、エサ取りの活性も低い状況下、貴重な本命をとらえたのは内海選手でした。415gの小型ではあるものの白星発進となり、矢吹選手は気持ちを切り替え次の試合に挑みます。

さて第1試合を終えて、検量所を沸かせたのは最年少19歳の篠原 豊選手(香川県仲多度郡/中四国A大会1位)です。4尾を釣りあげて相手選手は0尾。4,095gもの重量差の貯金を得て暫定1位となりました。続く2位は百合野 崇選手(山口県下関市/中四国E大会1位)で2尾2,870gの釣果をだし、相手選手に釣果がなかったため、釣果がそのまま重量差となります。
今大会はジャパンカップ磯(グレ)で優勝経験者の上田 泰大選手(京都府京都市/中四国C大会3位)をはじめ、生駒 浩史選手(京都府京都市/中四国D大会2位)、吉田 賢一郎選手(岡山県倉敷市/中四国B大会1位)、染谷 正昭選手(大分県佐伯市/中四国E大会2位)、国見 孝則選手(高知県高岡郡/シード選手3位)といったグレ釣り名手が多く参戦。中でも吉田選手は昨年2位の藤原 実浩選手(広島県福山市/シード選手2位)と廣渡 良満選手(沖縄県那覇市/沖縄大会2位)の3人対戦で競り勝ち、1試合目を終えて3位につけます。上田選手や国見選手も白星スタートとなり今後の展開を盛り上げてくれそうです。

続く第2試合も強豪同士の対決に注目が集まります。篠原選手は地元エキスパートの入江幸太選手(長崎県長崎市/九州A大会2位)と1勝同士の星の潰し合いとなり、同じく1勝同士の吉田選手と深江 進太朗選手(長崎県佐世保市/九州B大会2位)の対決も見もの。また藤原選手と横路 幸浩選手(広島県三原市/中四国C大会1位)も好カード。中でも圧巻の釣果を上げたのが横路選手でした。早々にリミットメイクの5尾を達成すると、前後半で10尾もの釣果をあげて入れ替えに成功。藤原選手も4尾の釣果をあげていましたが、横路選手は6,373g、重量差3,573gを獲得。
今大会では「黄色い練りエサが当たりエサ」と言う選手が多い中、横路選手は練りエサだけでなく、独自に加工したオキアミやムキ身も織り交ぜてヒットを量産。釣り方もワンパターンではなく、ハリスに打つジンタンを付けたり外したりしてサシエの沈下速度を調整し、仕掛けの投入ポイントもコマセの潮上、潮下とズラして食い渋ったクロダイにも口を使わせたと話します。

2試合目を終えて順位は入れ替わり5,097g、重量差3,406gで白星を上げた百合野選手がトップに立ちます。圧巻釣果の横路選手は2位。篠原選手に勝った入江選手が3位となり、4位内海選手、5位深江選手が続きます。この時点で2戦2勝は5名。翌日の3試合目で全勝選手の星の潰し合いカードがないことから、この5名の中から決勝進出者が出ることが濃厚です。

第3試合。トップの百合野選手に立ちはだかるのは京都の名手、生駒選手です。舞台は「桂の北の3番」。夜明け間もない6時25分に競技を開始すると、電光石火で1尾目を掛けたのは生駒選手でした。
生駒選手は1試合目が0対0の同点。2試合目は試合終了の30秒前にドラマチックな1尾を釣りあげ、勝ち点を得ました。無駄のない動きを磨き続けるまさにトーナメンター然とした釣技が光ります。しかしクロダイ釣り競技会に本格的に参戦し始めたのは近年のこと。グレに比べ、食わせるまでの間合いをつかむのが難しいと話し、必釣アイテムのひとつがストップウォッチ。これでサシエの投入時間を正確に計ります。「前釣りの状況から1回の投入を5分と決めました」と言い、マシーンのような正確さで釣りを組み立てます。しかし、その5分後から連発劇が始まったのは百合野選手でした。1尾目は40cmクラス、2尾目、3尾目に50cmクラスの重量感たっぷりな魚を引きだします。PEのイトフケがチョンと微かに弾かれるような小さなアタリをとらえて大型を連続キャッチしたのです。
百合野選手のミチイトは磯フカセ釣りに特化したPE「LIMITED PRO PE G5+ サスペンド」0.8号。ウキ止メを付けず、PEに00号のウキを直通しにします。この磯は沖の水深がサオ2本以上。ナビ下にG3のシズを2つ打って一気にエサを落とします。ウキも沈みますが百合野選手のイメージでは、ウキはサオ一本分のタナに留まり、ウキからナビまではタテにイトが抜け、ナビから練りエサまでのハリスは真横になって沈降。ナビ下に噛ませたG3×2のシズは練りエサと同等の重さと考えており、イメージではウキからナビまではタテに直線、ナビから練りエサは真横になることから仕掛けはL字を描いて、高速で海底に届けられる格好です。この釣り方を百合野選手は「高速スルスル」と称します。
当たりエサである練りエサはかなり軟らかく練り込まれ、ハリが隠れるかどうかのサイズで小さく付けます。つまりクロダイの活性が低く、エサ取りも少ない状況と判断したのです。コマセに関しても先打ちはせず、仕掛け投入後にウキの着水点ではなく、サシエの着水点に追いコマセを被せます。サシエの周りにのみコマセを効かせることに主眼を置いた釣りの組み立てといえます。
そうして4尾目を追加した百合野選手でしたが、後半は失速します。逆に生駒選手の猛追がスタート。鬼気迫るほどの集中力でペースをつかむと、小さなライン変化のアタリもとらえ、一気に3尾を釣りあげ4対4の同尾数。しかし結果は大型2尾を揃えた百合野選手に軍配が上がり、トップ通過で決勝戦に進出します。

百合野選手のほかに3戦3勝となったのは横路選手と内海選手。ともに広島県三原市在住で自宅も近所。互いに芸予諸島をホームにし、一緒に釣行することも多いトーナメント仲間。クロダイが豊富な海域で経験値を上げ、クロダイの好む海底形状や、食うタイミングを熟知しているふたりですが、クセの強い九十九島を攻略すべく両選手とも対策を練り、シビアな試合を乗り越えて勝ち取った3勝です。順位を決める予選3試合分の合計重量差が算出されると横路選手が4,023g、内海選手が3,499gとなり、横路選手が2位で通過。いよいよ百合野選手との頂上決戦を迎えました。

それにしても今大会はPE使いの活躍が目覚ましい。百合野選手、横路選手、内海選手のベスト3がPEを愛用しているほか、ファイナリスト27名のうち約1/3の選手がPEを使用。その理由は直線強度が高く0.6号、0.8号といった細イトが使えること。それにともない、軽々と仕掛けを遠投することができ、水切り抵抗が軽減され、食い込みをさまたげにくいこと。かつ低伸度のため高感度。ゆえに小さなアタリも取りやすく、着底のサイン、着底したエサを持ち上げたときの重さや、エサの有無も把握しやすい。特に九十九島のように水深があり、上潮のみがフラフラと動くフィールドでサシエを海底にしっかりと馴染ませるには有効なアイテムといえるのです。

決勝の舞台は「鳥の巣のハナレ」。釣座は南西方向に長く張り出したハエ根を境とし東西に分け、優先権のある百合野選手は東側の釣り座から勝負に出ます。
選手、役員が見守るなか試合開始のホーンが高々と鳴り響き、インターバルなしの2時間の熱戦が幕を開けました。

佐世保の満潮時刻は10時31分、決勝開始は11時30分。下げ潮での競技になり、境界東側、沖向きの釣り座のほうが浅いと読んだ百合野選手は、潮位が高いうちに浅場を釣ることを選択。ハエ根からのカケアガリを中心に30m沖をポイントと定めます。
対する横路選手は西側の岬にバッカンをセット。足もとから延びる根の際から沖20mくらいまでをポイントと見ます。

両者とも丁寧にマキエを固め打ちしてポイントを構築しますが、サオの曲げ合いとなるような乱打戦にはならず。百合野選手が早々にチャリコを掛けたものの、こう着状態が続きます。両者焦れるような時間が刻々と経過して前半が終了。ポイント交代では両者が入れ替わる格好でほぼ同じポイント位置を探ります。

百合野選手と横路選手の違いを挙げるとすれば、コマセの投入回数と仕掛けを打ち返すインターバルの長さです。横路選手は先打ちと追い打ちでサシエをサンドイッチにし、手返しも百合野選手に比べ早く感じます。一方の百合野選手は先打ちが少なく、仕掛け投入後はじっくりとエサを置いて投入回数が少ない。
百合野選手は正面から吹く風に真っ向勝負を挑む遠投釣法です。向かい風の影響で自重のあるウキが沖に、サシエの練りエサはウキの手前に着水します。コマセはウキの頭や付近に被せず、サシエの着水点に3~4回打ち込みます。このコマセワークが意味するのは何か?後で聞いた答えは次のようなものでした。
「サシエの練りエサは着水点のほぼ直下に沈んでいきます。サシエの周りに正確にコマセを漂わせるために、追いコマセのみで釣りを組み立てました。なにせエサ取りは少なく、アタリが出るまで時間を要します。クロダイが競い合ってエサを追う、高活性な状況であればコマセを先打ちして多めに撒き、活性を上げますが、低活性だと逆効果になることも多い。なるべくクロダイがサシエを見つけやすいようなコマセワークを心掛けました」
そして後半が開始して間もなく30分という時に、百合野選手の愛竿「NEW鱗海アートレータ」0.6号が滑らかな弧を描きました。じわじわと銀鱗が浮上し、春の柔らかな日差しに照らされます。そしてタモに滑り込んだ瞬間、緊張の攻防を見守った選手・役員から暖かい拍手が沸き立ちました。

横路選手は百合野選手優勢の空気に飲まれないように海と対峙。ポイントを淡々と構築し、クロダイのシグナルに集中します。しかしアタリは遠く、変化が起きません。
一方、エサに魚が付いたのは百合野選手でした。13時7分に穂先を引き込むほどの痛快なアタリが出て、風を切るようにして合わせます。すばやく浮いてきたのは小型のキビレ。さらに試合終了5分前にもサオ引きアタリをとらえますが、満月を描いたロッドがプンと反発。これは手前の根に擦れてハリス切れとなり、天を仰ぎます。横路選手も最後まで集中していましたがクロダイは微笑んでくれません。そのまま試合終了のホーンが潮騒をかき消し、1,456gの釣果で百合野選手が初の表彰台の頂点に上り詰めました。

横路選手は自身の敗因を次のように分析します。
「手返しを少なくし、アタリを待つ時間を長く取ることは勇気がいること。百合野選手は確信を持って仕掛けを長く入れていたと感じます。それが私との決定的な違いで、釣果の差となったのではないでしょうか」

九十九島は百合野選手の第2のホームグラウンドといえる馴染みの釣り場。応援する仲間や師匠の大知昭さんにも祝福され、爽やかに喜びを噛みしめていました。

※文中敬称略

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